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4 新天地、いきなりのピンチ
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いっぺんに数百人の人間がやって来たら町はどうなるか?
答えはパニックだ。
迂闊にも程がある。実際に町に着いてみて、初めてそこに思い至った。
自分を殴りたい。
しかし、そこで思わぬ話を聞いた。
俺たちの根拠地だった街、バラハスがスタンピードによって滅んだというのだ。そのために俺たちは難民扱いとして街に受け入れてもらうことができた。不謹慎だとは思うが、何が幸いするかわからない。
一般の人たちは街の人にお任せして、俺たち冒険者は地元の冒険者ギルドを訪れた。とりあえず稼ごうというわけだ。
訪れた冒険者ギルドは、何やら騒然としていた。冒険者たちが慌ただしく行き交い、怒号に近いものも飛び交っている。
「何かただ事じゃなさそうだな。ちょっと様子見てくるから、みんなは外で待っててくれ」
まっすぐ受付嬢のところへいく。
「こんちわ」
「あれ、見ない顔ですね」
「うん。ちょうど仲間たちと流れてきたとこ。えらい騒がしいけど、もしかして緊急事態?」
「冒険者の方ですか!?」
「そうですが」
「手伝ってください!」
「何をどうすればいいんですか?」
具体的な話がないので、状況がまったく掴めない。
「クラーケンが街に迫っているんです」
「そりゃ一大事」
クラーケンと言えば、海の魔物の中でも最強種のひとつだ。俺も戦ったことはあるが、かなり苦戦した。
「俺たちは内陸から来たから海での討伐をしたことのないヤツが多い。経験者だけ前線に突っ込んで、残りは街の防衛にあたらせるけど、それでいい?」
「大丈夫です。よろしくお願いします!」
俺はすぐに外へ出ると、仲間たちに指示を出す。海戦の経験があるのは十人程度だったので、他の仲間に役割を割り振った後、経験者と簡単に打ち合わせをする。
「基本的には地元の冒険者のリーダーの指示に従うように」
それだけは徹底しておかないと、俺たちが足を引っ張ることになりかねない。それは絶対にやってはいけないことだ。
皆で港へ向かう。てんやわんやになっている。その中でリーダーとおぼしき男性に当たりをつけ、話しかける。
「忙しいところ申し訳ない。俺たちも討伐隊に加わりたいんだが」
「何だと!?」
リーダーの男はなぜかキレ気味に叫んだ。
「大歓迎だ!」
それならもうちょいそれらしい態度をとって欲しい。よそ者が邪魔するな、とか言われると思ったわ。
リーダーのざっくりとした状況説明と指示を聞いて、俺たちもクラーケンの迎撃に向かった。
答えはパニックだ。
迂闊にも程がある。実際に町に着いてみて、初めてそこに思い至った。
自分を殴りたい。
しかし、そこで思わぬ話を聞いた。
俺たちの根拠地だった街、バラハスがスタンピードによって滅んだというのだ。そのために俺たちは難民扱いとして街に受け入れてもらうことができた。不謹慎だとは思うが、何が幸いするかわからない。
一般の人たちは街の人にお任せして、俺たち冒険者は地元の冒険者ギルドを訪れた。とりあえず稼ごうというわけだ。
訪れた冒険者ギルドは、何やら騒然としていた。冒険者たちが慌ただしく行き交い、怒号に近いものも飛び交っている。
「何かただ事じゃなさそうだな。ちょっと様子見てくるから、みんなは外で待っててくれ」
まっすぐ受付嬢のところへいく。
「こんちわ」
「あれ、見ない顔ですね」
「うん。ちょうど仲間たちと流れてきたとこ。えらい騒がしいけど、もしかして緊急事態?」
「冒険者の方ですか!?」
「そうですが」
「手伝ってください!」
「何をどうすればいいんですか?」
具体的な話がないので、状況がまったく掴めない。
「クラーケンが街に迫っているんです」
「そりゃ一大事」
クラーケンと言えば、海の魔物の中でも最強種のひとつだ。俺も戦ったことはあるが、かなり苦戦した。
「俺たちは内陸から来たから海での討伐をしたことのないヤツが多い。経験者だけ前線に突っ込んで、残りは街の防衛にあたらせるけど、それでいい?」
「大丈夫です。よろしくお願いします!」
俺はすぐに外へ出ると、仲間たちに指示を出す。海戦の経験があるのは十人程度だったので、他の仲間に役割を割り振った後、経験者と簡単に打ち合わせをする。
「基本的には地元の冒険者のリーダーの指示に従うように」
それだけは徹底しておかないと、俺たちが足を引っ張ることになりかねない。それは絶対にやってはいけないことだ。
皆で港へ向かう。てんやわんやになっている。その中でリーダーとおぼしき男性に当たりをつけ、話しかける。
「忙しいところ申し訳ない。俺たちも討伐隊に加わりたいんだが」
「何だと!?」
リーダーの男はなぜかキレ気味に叫んだ。
「大歓迎だ!」
それならもうちょいそれらしい態度をとって欲しい。よそ者が邪魔するな、とか言われると思ったわ。
リーダーのざっくりとした状況説明と指示を聞いて、俺たちもクラーケンの迎撃に向かった。
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