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148 マジでイカレてやがる

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「わたし!?」

 完全な不意討ちに、ミネルヴァは目を白黒させている。

「そう、おまえだ。こちらへ来い。俺の女にしてやる」

「は!?」

 ミネルヴァだけでなく、こっちの目まで点になった。

 何を言い出すんだ、このボケ。

「早くしろ」

 ブロディが手を伸ばしてきたことでミネルヴァが我に返った。

 伸びてきた手をかわして、ミネルヴァが俺の背中に逃げ込んでくる。

「どけ」

「誰がどくか。人の嫁に手ぇ出そうとするんじゃねえ」

「何だと?」

「ミネルヴァも俺の嫁だ」

 そう言うと、ブロディの巨体がよろめいた。

「…バカな……」

 どうも本気でショックを受けてるっぽい。

 ちょっとだけスッとした気分になっていると、ブロディの表情がイヤな感じに歪んだ。

「くっくっくっ」

 いきなり笑い出した。壊れたか?

「なるほどな。それなら話は早い。おまえ一人を葬れば、二人とも手に入るというわけだ」

「はぁ!?」

 何でそうなる!?   まるっきり意味がわかんねえ。

 どこまで本気なのかと思っていたら、ブロディの野郎、剣を抜きやがった。

「マジか!?」

 降り下ろされた剣を間一髪でかわす。

 あっぶねえ、この野郎、殺る気満々じゃねえか。

「将軍、おやめください!」

 さすがに周りの兵士たちが止めに入る。

「ええい、邪魔するな!」

「落ち着いてください。民間人を殺したりしたら、大問題になります」

「それくらい揉み消せばいい。目撃者も全部消せば問題ない」

「問題おおありです!」

 そうだ、頑張れ、副官の人。

 って言うか、今のうちに逃げるぞ。

 律儀に結論を待ってる必要はない。シルヴィアとミネルヴァを促して、その場から逃げ出した。置いていかないでと目で訴えられたので、マリエールも一緒に連れていった。



「何なのよ、あれ……」

 精も根も尽き果てた様子のミネルヴァが、大きなため息と共に言葉を吐き出した。

「マジでイカレてやがる」

 俺も疲れた。精神的に削られた感じだ。

「あんなのが軍のトップで大丈夫なのか?」

 余計なお世話だろうが、ついつい心配になってしまう。

「実際に強いし、気前のいいところがあるから、兵たちには人気があるんですよ」

「厄介だな」

 思わず渋い顔になってしまう。

 ブロディの権力が大きくなるのはご勘弁願いたい。今回の同盟話だってヤバいものになりかねない。

 慌てないで少し様子を見た方がいいかもしれないな。

 かといって、滞在が長引いてまたブロディと鉢合わせというのもごめん被りたいところだ。

 さて、どうしたもんかね……

 思わぬ形で発生した問題は、意外と頭の痛いものだった。

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