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139 お互い様

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「うう…恥ずかしい……」

「穴があったら入りたい……」

 ミネルヴァとシルヴィアが揃ってのたうちまわっている。

 街での醜態がよほど恥ずかしかったらしい。正気に戻ってからずっとこんな感じだ。

「かえって親しみをもってくれたみたいだったけどな」

「気休めは言わないで。絶対酒乱だと思われてるよ」

「そうだよ。絶対笑われてる」

「そんなことないって。考えすぎだって」

 このくだり、何回繰り返せばいいんだろう…いい加減疲れた。

「外に出てみりゃわかるだろ」

「やだー、出たくないー」

「笑われるー」

「ええい、つべこべぬかすな。行くぞ」

 手足をじたばたさせる嫁たちを両肩に抱えあげて、街に出る。これじゃ誘拐犯みたいだな。

「やめてー」

「騒ぐと余計に恥ずかしいぞ」

「ううー」

 唸ってはいるが、おとなしくなった。

「ね、ねえ、どこ行くの?」

 シルヴィアが不安そうに訊いてきた。

「すぐ着くよ」

 実際、目的地はすぐそこだ。王都でも流行りの料理店を借りきったと言っていた。

「ここだな」

 外からでも人がいっぱいになっているのがわかった。皆神妙な顔をしているのがおかしい。

「え?   何ここ?」

 椅子に座らされた二人は周りを見て、怪訝そうな顔になった。

 老若男女を問わず集まっている人たちが、自分に向かって怖いくらいに真剣な顔をしていたら、そりゃあ気圧されもするだろう。

「な、何なの?」

 集まった一同の中から一人がシルヴィアとミネルヴァの前に進み出た。

「ミネルヴァ様、シルヴィア様、この度は誠に申し訳ございませんでした」

 深々と頭を下げられ、二人は揃って困惑した。

「え?   何で謝られてるの?」

「こっちが醜態晒してごめんなさいするならわかるけど」

「せっかくの結婚式に酒などを飲ませてしまい、本当に申し訳ございませんでした」

「あ、でもそれって、最終的な責任は自分たちだから気にしないでください」

「そうですよ。謝られちゃったらこっちが申し訳なくなっちゃいます」

「ほら、言っただろ。お互いに気にしすぎだって」

 そう言うと、嫁たちと集まった人たち、両方から白い目を向けられた。

「…結果的にそうかも知れないけど、こいつに偉そうに言われるのは違う気がする」

「コータローがあおりまくったのが原因のひとつよね」

 あれ?   いつの間にか俺が悪者?

「まあまあ、せっかく昨日のやり直しってことで準備してくれてたんだろ。始めようぜ」

「え?   そうなの?」

「すいません、わざわざ」

 自分たちの悪ノリでせっかくの結婚式を台無しにしてしまったと思った街の人たちがお詫びのパーティを準備してくれたのだ。そんなに気にすることはないと言ったのだが、それでは気がすまないとのことで、お言葉に甘えることにしたのだ。

 その後は皆で楽しい時間を過ごした。二人も心配を払拭できたみたいで、まあよかったということでまとめておこう。
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