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92 修行はつらいよ
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久しぶりに狩りに出た。最近はミネルヴァに掛かりきりだったので、数えてみたら実に一ヶ月ぶりの本業だった。
俺が解呪に携わっていた間、他のメンバーは地道な討伐に精を出していたそうだ。シルヴィアから様子を聞いてはいたのだが、久しぶりにパーティを組んでみて、その長足の進歩に驚いた。
元々個の戦闘力では俺の上を行く人たちだったが、そこに磨きがかかっており、各々がA級を飛び越えてS級と言ってもいいくらいにレベルアップしていた。
「すげえな。どうやったらこの短期間でここまでレベルアップできるんだ?」
素直に驚くと、なぜかリョウさんが遠い目をした。
「人間、死ぬ気になれば大概のことはできるんだな……」
極限まで様々なものを削られた果てにしか浮かんでこなさそうな虚ろな笑みがリョウさんの顔に貼りついている。
…一体何があったんだ……?
「先生が厳しかったのよねー。特にリョウに」
「先生?」
「はーい、わたし」
元気よく手を挙げたのはツブラだった。
「ツブラが皆を鍛えたのか?」
「ツブラに言われたの」
カズサさんが小さな苦笑いを浮かべた。
「コータローは稀に見る巻き込まれ体質の持ち主だから、これからも大事に関わっていくことになる。今の実力じゃ皆近い内に命を落とすことになる、って」
巻き込まれ体質か……
何となく自覚みたいなものはあったが、やっぱりそうなのか……
地味にショックだったが、話の本筋を外してしまうので、そこはスルーする。
「で、これからもコータローたちとパーティ組んでいくんであればもっと強くなれって言われて特訓をすることになった、というわけだ」
ユキノさんも補足する。
「ツブラがコーチになってくれたのはいいんだけど、これがまあ厳しいのなんのって。どこのスポ根漫画なのよって感じだったわ」
「…それはまあ、すまん……」
「謝られることじゃないわよ」
「そうそう。おかげで間違いなく強くなったし」
その成果は討伐で遺憾なく発揮された。今までなら苦戦していたオーガをタイマンで瞬殺し、王と称されるボスに率いられた狼の魔物ーービッグファングの群れも三人で殲滅して見せたのだ。討伐には百人以上の兵士が必要とされる規模の群れを三人でだ。
「…すげえ……」
それ以外に言葉が出てこない。
「…これは……」
自ら組織した親衛隊を率いて同行していたブライト王子も、度肝を抜かれていた。
「やっと感覚が追いついてきた感じかな」
「そうね。効率的になってきたかしら」
「前ほど疲れなくなってきたものね」
俺たちが待機していた場所へ意気揚々と戻ってきた三人に告げられたのは、ツブラの非情な宣告だった。
「お疲れ様でした。これなら修行も次の段階に進めそうですね」
「「「え!?」」」
顔と声がひきつる。
「何を驚いているんですか。修行に終わりなどあるわけないでしょう」
「ハイ。ゴモットモデゴザイマス」
完全に感情が抜け落ちた声。よっぽどキツいんだな……
「コータローも他人事みたいな顔してちゃダメだよ」
「え? 俺もやるの?」
「あたりまえです。わたしのご主人様として、もっと強くなってもらわないと」
「マジか……」
「よかったなー、コータロー。強くなれるぞ」
道連れができたリョウさんはめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「待ってくれ!」
ブライト王子が声をあげた。
「その修行、俺もーー親衛隊の連中も参加させてもらえないか!?」
「王子、何を!?」
おったまげた声が上がる。
「魔王復活を前に、戦力はどれだけあっても足りないんだ。是非とも俺たちも参加させて欲しい」
「どうなっても知りませんよ」
「わかっている」
ブライト王子は力強く頷いたが、親衛隊の面々は死んだ魚のような目をしている。
気持ちはわかるぞ、うん。
「わかりました。明日から来なさい」
「ありがとうございます!」
こうして修行に参加することになったブライト王子の親衛隊が世界にその名を轟かすようになるのは、もう少し先の話だった。
俺が解呪に携わっていた間、他のメンバーは地道な討伐に精を出していたそうだ。シルヴィアから様子を聞いてはいたのだが、久しぶりにパーティを組んでみて、その長足の進歩に驚いた。
元々個の戦闘力では俺の上を行く人たちだったが、そこに磨きがかかっており、各々がA級を飛び越えてS級と言ってもいいくらいにレベルアップしていた。
「すげえな。どうやったらこの短期間でここまでレベルアップできるんだ?」
素直に驚くと、なぜかリョウさんが遠い目をした。
「人間、死ぬ気になれば大概のことはできるんだな……」
極限まで様々なものを削られた果てにしか浮かんでこなさそうな虚ろな笑みがリョウさんの顔に貼りついている。
…一体何があったんだ……?
「先生が厳しかったのよねー。特にリョウに」
「先生?」
「はーい、わたし」
元気よく手を挙げたのはツブラだった。
「ツブラが皆を鍛えたのか?」
「ツブラに言われたの」
カズサさんが小さな苦笑いを浮かべた。
「コータローは稀に見る巻き込まれ体質の持ち主だから、これからも大事に関わっていくことになる。今の実力じゃ皆近い内に命を落とすことになる、って」
巻き込まれ体質か……
何となく自覚みたいなものはあったが、やっぱりそうなのか……
地味にショックだったが、話の本筋を外してしまうので、そこはスルーする。
「で、これからもコータローたちとパーティ組んでいくんであればもっと強くなれって言われて特訓をすることになった、というわけだ」
ユキノさんも補足する。
「ツブラがコーチになってくれたのはいいんだけど、これがまあ厳しいのなんのって。どこのスポ根漫画なのよって感じだったわ」
「…それはまあ、すまん……」
「謝られることじゃないわよ」
「そうそう。おかげで間違いなく強くなったし」
その成果は討伐で遺憾なく発揮された。今までなら苦戦していたオーガをタイマンで瞬殺し、王と称されるボスに率いられた狼の魔物ーービッグファングの群れも三人で殲滅して見せたのだ。討伐には百人以上の兵士が必要とされる規模の群れを三人でだ。
「…すげえ……」
それ以外に言葉が出てこない。
「…これは……」
自ら組織した親衛隊を率いて同行していたブライト王子も、度肝を抜かれていた。
「やっと感覚が追いついてきた感じかな」
「そうね。効率的になってきたかしら」
「前ほど疲れなくなってきたものね」
俺たちが待機していた場所へ意気揚々と戻ってきた三人に告げられたのは、ツブラの非情な宣告だった。
「お疲れ様でした。これなら修行も次の段階に進めそうですね」
「「「え!?」」」
顔と声がひきつる。
「何を驚いているんですか。修行に終わりなどあるわけないでしょう」
「ハイ。ゴモットモデゴザイマス」
完全に感情が抜け落ちた声。よっぽどキツいんだな……
「コータローも他人事みたいな顔してちゃダメだよ」
「え? 俺もやるの?」
「あたりまえです。わたしのご主人様として、もっと強くなってもらわないと」
「マジか……」
「よかったなー、コータロー。強くなれるぞ」
道連れができたリョウさんはめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「待ってくれ!」
ブライト王子が声をあげた。
「その修行、俺もーー親衛隊の連中も参加させてもらえないか!?」
「王子、何を!?」
おったまげた声が上がる。
「魔王復活を前に、戦力はどれだけあっても足りないんだ。是非とも俺たちも参加させて欲しい」
「どうなっても知りませんよ」
「わかっている」
ブライト王子は力強く頷いたが、親衛隊の面々は死んだ魚のような目をしている。
気持ちはわかるぞ、うん。
「わかりました。明日から来なさい」
「ありがとうございます!」
こうして修行に参加することになったブライト王子の親衛隊が世界にその名を轟かすようになるのは、もう少し先の話だった。
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