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89 デート2
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気に入った服を何着か買って、次にアクセサリーを取り扱っている店に入った。
そこでも良さげなものが手に入った。ミネルヴァは遠慮と恐縮の塊になっていたが、いい買い物ができて、俺的には大満足だ。
ちょうどお昼の頃合いになったので、食堂に入る。ミネルヴァは肉より魚派とのことだったので、それに合わせてチョイスした。かなり混んでいたが、何とか二人分の席を確保できた。
「すごく混んでるんですね」
「いい店なんだろうな。混んでるのもそうだけど、さっきから食欲をそそるいい匂いがしてる」
期待とテンションが高まれば、自然と会話も弾む。俺たちは、お互いの色々な話をした。
好きなもの、嫌いなもの。
得意なこと、不得意なこと。
育ってきた環境。
これからやりたいこと。
聞いてみたかったが、なかなか聞けなかったこと。
中でもミネルヴァは異世界ーー俺が元いた世界について興味津々で、俺の学生生活やグルメ話を、目を輝かせて聞いていた。
運ばれてきた料理もめちゃくちゃ美味くて、実に楽しい時間を過ごせていたのだが、不粋な輩というのはどこにでもいるものでーー
「おいおい、何だ、あそこにいるの」
「おお、本当だ。見世物レベルのブサイクじゃねえか」
「あれでよく表に出てこれたもんだ」
「わかってねえんだよ、自分がどんだけブサイクか」
「いやいや、蔑まれて悦ぶ性癖持ちなんだよ」
「最悪じゃねえか、それ」
げひゃひゃと下品な笑い声が響く。
…何だ、こいつら……
一生の不覚。思わず呆気にとられてここまで言わせてしまった。
傍若無人とはこのことか。周りの人たちも眉をひそめている。が、男たちのいかにも荒くれ者という雰囲気のせいか、表立って咎めたりする人はいない。
「ごめん、ミネルヴァ。ちょっと待ってて」
「コータロー様、危ないですよ。わたしなら平気ですから」
「大丈夫。すぐ終わるから、心配しないで。これはもう俺の問題だから」
同行している女の子にこんな思いをさせてしまった時点で男として落第だが、せめてケジメはつける。
「おう、優男、俺たちに文句でもあるのか?」
立ち上がった俺に男どもが馬鹿にするような声をかけてきた。
「文句はねえよ」
感情を抑えた声で言うと、その場の全員が怪訝な視線を向けてきた。
「どうせ人間の言葉は通じねえんだろうからな。てめえらの身体に刻み込んでやるーー表に出ろ」
「ああ!?」
「てめえ!」
男たちも立ち上がった。
「調子乗りやがって」
「泣いて謝っても許さねえぞ」
「そりゃこっちの台詞だ。こちとら腸だけじゃなくて全身が煮えくり返ってんだ。タダじゃ済まさねえぞ」
言ってる今も内圧は高まる一方だ。怒りがエネルギー化して全身を駆け巡っているような、新鮮な感覚。
あれ? これってもしかして……
ふと思いついた。
今なら、あれ、できるんじゃないか?
そこでも良さげなものが手に入った。ミネルヴァは遠慮と恐縮の塊になっていたが、いい買い物ができて、俺的には大満足だ。
ちょうどお昼の頃合いになったので、食堂に入る。ミネルヴァは肉より魚派とのことだったので、それに合わせてチョイスした。かなり混んでいたが、何とか二人分の席を確保できた。
「すごく混んでるんですね」
「いい店なんだろうな。混んでるのもそうだけど、さっきから食欲をそそるいい匂いがしてる」
期待とテンションが高まれば、自然と会話も弾む。俺たちは、お互いの色々な話をした。
好きなもの、嫌いなもの。
得意なこと、不得意なこと。
育ってきた環境。
これからやりたいこと。
聞いてみたかったが、なかなか聞けなかったこと。
中でもミネルヴァは異世界ーー俺が元いた世界について興味津々で、俺の学生生活やグルメ話を、目を輝かせて聞いていた。
運ばれてきた料理もめちゃくちゃ美味くて、実に楽しい時間を過ごせていたのだが、不粋な輩というのはどこにでもいるものでーー
「おいおい、何だ、あそこにいるの」
「おお、本当だ。見世物レベルのブサイクじゃねえか」
「あれでよく表に出てこれたもんだ」
「わかってねえんだよ、自分がどんだけブサイクか」
「いやいや、蔑まれて悦ぶ性癖持ちなんだよ」
「最悪じゃねえか、それ」
げひゃひゃと下品な笑い声が響く。
…何だ、こいつら……
一生の不覚。思わず呆気にとられてここまで言わせてしまった。
傍若無人とはこのことか。周りの人たちも眉をひそめている。が、男たちのいかにも荒くれ者という雰囲気のせいか、表立って咎めたりする人はいない。
「ごめん、ミネルヴァ。ちょっと待ってて」
「コータロー様、危ないですよ。わたしなら平気ですから」
「大丈夫。すぐ終わるから、心配しないで。これはもう俺の問題だから」
同行している女の子にこんな思いをさせてしまった時点で男として落第だが、せめてケジメはつける。
「おう、優男、俺たちに文句でもあるのか?」
立ち上がった俺に男どもが馬鹿にするような声をかけてきた。
「文句はねえよ」
感情を抑えた声で言うと、その場の全員が怪訝な視線を向けてきた。
「どうせ人間の言葉は通じねえんだろうからな。てめえらの身体に刻み込んでやるーー表に出ろ」
「ああ!?」
「てめえ!」
男たちも立ち上がった。
「調子乗りやがって」
「泣いて謝っても許さねえぞ」
「そりゃこっちの台詞だ。こちとら腸だけじゃなくて全身が煮えくり返ってんだ。タダじゃ済まさねえぞ」
言ってる今も内圧は高まる一方だ。怒りがエネルギー化して全身を駆け巡っているような、新鮮な感覚。
あれ? これってもしかして……
ふと思いついた。
今なら、あれ、できるんじゃないか?
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