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59 斜め上に突っ走ります
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「いくぞ、おらあああぁっ!」
ビビる気持ちに鞭打って、虚勢の咆哮を張り上げる。
『待ちなさい。異世界のヒトの子よ』
突然頭の中に厳かな声が響いた。
「え……?」
何だ、今の声……
『わたしにはあなたと争うつもりはありません』
「え、え?」
幻聴? 俺、狂った?
『信じられないかもしれませんが、わたしがあなたに話しかけています』
「わたしって…あなた……?」
ほっぺたをつねりながら、蛇に向かって訊く。
すると、蛇はもたげた鎌首をこくんと頷かせた。
…マジか……
この世界に来て、一番ファンタジーを感じた瞬間だったかもしれない。
「もしかして…魔物じゃ、ない?」
『違いますよ。人からは、神獣と呼ばれています』
「神獣!?」
それって、かなりの大物ってことだよな……って言うか、大物過ぎて実際どのレベルなのかよくわからん……
「その神獣さんがどうしてこんなところに?」
『この奥がわたしのねぐらなので』
蛇ーー神獣は笑いを含んだ調子で言った。
『ここのところずっとざわついた不穏な空気を感じていたんです。どうしたものかと思っていたところに面白そうな気配がやって来たので、二百年ぶりに人前に出てみました』
「そ、そうっすか……」
『あなたは本当に面白い存在ですね』
「面白い、ですか……?」
それは褒められているのか、それともけなされているのだろうか?
『もちろん褒めていますよ』
「あれ? もしかして、心、読めます?」
『いいえ。ただあなたがわかりやすいだけです』
「…さようでございますか……」
ふふっ、と笑いの波動が伝わってきた。
『名前を教えてくれますか?』
「あ、はい。高杉孝太郎です」
『コータローですね。覚えました』
「…えっと、俺は何て呼べばいいですか?」
『つけてください』
「へ?」
『名前、つけてください』
「な、何で……?」
そんな畏れ多い……
『あまりに昔過ぎて、名前、忘れちゃいました。だから、新しく名前つけてください』
「いやいやいや、忘れるってことはないでしょう」
『ダメ、ですか……?』
ちょっと待って、何その上目づかい。蛇なのに可愛いんですけど!?
って言うか、仕草がめちゃくちゃ人間臭くなってるよ!?
『お願いします』
そんな目で見られたら断れないよ……
「言っとくけど、俺、センスないよ?」
『コータローがつけてくれたなら、それで満足です』
むむ……
そう言われると、かえってプレッシャーだな……
「…そうだな…そのつぶらな瞳にやられたわけだからーーツブラ、でどうかな?」
『ツブラ、ですね。ありがとうございます。とても気に入りました』
本気で嬉しそうだったので、胸を撫で下ろした。
『神獣に名前をつけたので、コータローはわたしをいつでも召喚できるようになりました』
「へ?」
今さらっととんでもねえこと言わなかったか?
「召喚?」
『はい。喚んでくれれば、いつでもお側に参ります』
いや、参ります、って言われても……
『わたし、こう見えても強いですよ』
強そうにしか見えないっす。
『きっと役に立ちますよ』
ってか、召喚した時点でオーバーキル確定ですよね?
『…必要、ありませんか……?』
「よろしくお願いします」
そう言うしかないじゃんか!
…何だかすごいことになっちゃったな……
ビビる気持ちに鞭打って、虚勢の咆哮を張り上げる。
『待ちなさい。異世界のヒトの子よ』
突然頭の中に厳かな声が響いた。
「え……?」
何だ、今の声……
『わたしにはあなたと争うつもりはありません』
「え、え?」
幻聴? 俺、狂った?
『信じられないかもしれませんが、わたしがあなたに話しかけています』
「わたしって…あなた……?」
ほっぺたをつねりながら、蛇に向かって訊く。
すると、蛇はもたげた鎌首をこくんと頷かせた。
…マジか……
この世界に来て、一番ファンタジーを感じた瞬間だったかもしれない。
「もしかして…魔物じゃ、ない?」
『違いますよ。人からは、神獣と呼ばれています』
「神獣!?」
それって、かなりの大物ってことだよな……って言うか、大物過ぎて実際どのレベルなのかよくわからん……
「その神獣さんがどうしてこんなところに?」
『この奥がわたしのねぐらなので』
蛇ーー神獣は笑いを含んだ調子で言った。
『ここのところずっとざわついた不穏な空気を感じていたんです。どうしたものかと思っていたところに面白そうな気配がやって来たので、二百年ぶりに人前に出てみました』
「そ、そうっすか……」
『あなたは本当に面白い存在ですね』
「面白い、ですか……?」
それは褒められているのか、それともけなされているのだろうか?
『もちろん褒めていますよ』
「あれ? もしかして、心、読めます?」
『いいえ。ただあなたがわかりやすいだけです』
「…さようでございますか……」
ふふっ、と笑いの波動が伝わってきた。
『名前を教えてくれますか?』
「あ、はい。高杉孝太郎です」
『コータローですね。覚えました』
「…えっと、俺は何て呼べばいいですか?」
『つけてください』
「へ?」
『名前、つけてください』
「な、何で……?」
そんな畏れ多い……
『あまりに昔過ぎて、名前、忘れちゃいました。だから、新しく名前つけてください』
「いやいやいや、忘れるってことはないでしょう」
『ダメ、ですか……?』
ちょっと待って、何その上目づかい。蛇なのに可愛いんですけど!?
って言うか、仕草がめちゃくちゃ人間臭くなってるよ!?
『お願いします』
そんな目で見られたら断れないよ……
「言っとくけど、俺、センスないよ?」
『コータローがつけてくれたなら、それで満足です』
むむ……
そう言われると、かえってプレッシャーだな……
「…そうだな…そのつぶらな瞳にやられたわけだからーーツブラ、でどうかな?」
『ツブラ、ですね。ありがとうございます。とても気に入りました』
本気で嬉しそうだったので、胸を撫で下ろした。
『神獣に名前をつけたので、コータローはわたしをいつでも召喚できるようになりました』
「へ?」
今さらっととんでもねえこと言わなかったか?
「召喚?」
『はい。喚んでくれれば、いつでもお側に参ります』
いや、参ります、って言われても……
『わたし、こう見えても強いですよ』
強そうにしか見えないっす。
『きっと役に立ちますよ』
ってか、召喚した時点でオーバーキル確定ですよね?
『…必要、ありませんか……?』
「よろしくお願いします」
そう言うしかないじゃんか!
…何だかすごいことになっちゃったな……
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