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53 シルヴィア、頑張ります!

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「シルヴィア、レベルはいくつになった?」

 約束していた集合場所に来るなりユキノさんが訊いた。

「12になりました」

 シルヴィアは素直に答える。

 おいおい、オープンすぎないか?   レベルの上がり具合って、俺たちの夜を告白してるのと一緒だってことわかってないだろ。

「おお、頑張ってるねぇ」

 言ってから、ユキノさんは俺の方を見て、にんまり笑った。

「頑張ってるねぇ」

「うるせえ」

「どう?   上達は実感できてるかな」

「それは…まあ……」

 渋々ながら、それは認めざるを得なかった。回復の質、量、速度とも段違いのレベルになっている。

「やっぱり実践に勝る経験はないってことだね」

「…まあ、な……」

 素直に認めるのが何となく悔しい。

「うんうん。これを続けていけばシルヴィアちゃんも立派な床上手になるねっ」

 そっちかよ!?

 次の瞬間、ユキノさんの脳天に拳骨が落ちた。

「!?」

 頭を押さえたユキノさんが蹲って苦呻をあげる。

 今のは痛いな……

「ったく、おまえというヤツは……」

「ぼ、暴力反対……」

 涙目で訴えるユキノさんに、リョウさんは厳しかった。

「品がないって何度言われたらわかるんだ?   もう一発いっとくか?」

「いやいや、この二人は一発どころか二発、三発ーー」

 ゴン、ゴン、ゴン

「…痛いよ、リョウくん」

 …ある意味いい根性してるよな。見習おうとは思わんし、尊敬もしないけど。

「朝っぱらから君たちは何をしているのかな」

 呆れたように言うカズサさん。俺まで一緒に括らないで欲しいんですが。

「そろそろ行こうか。時間がもったいない」

 ごもっとも。

 今日の目的はシルヴィアに実戦経験を積ませることである。実際に魔物を倒すというよりは、いかにして身を守るかということと、治癒魔法を実戦の中で使えるかどうかの確認が主眼になる。

 無理をするつもりはさらさらないので、緊張感もあまりない。

 ここまで真面目に修行をした成果だろう。シルヴィアはゴブリン程度であれば瞬殺できるレベルの剣技を身につけていた。

 すげえな、シルヴィア。

 得物がレイピアなので、オークみたいなガタイのいい相手だと分が悪いが、それでもシルヴィアに求められているレベルには十分達しているだろう。

「よく頑張ったね。こんなに早く上達するとは思わなかった」

 カズサさんも感心しきりだ。

「じゃあ、いよいよ本番いってみる?」

「はい」

 緊張の面持ちで頷いた。
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