12 / 179
12 デキる女
しおりを挟む
「オランドさん、この人、大丈夫。馬より早い!」
テンションの上がったルミさんがとんでもないことを言い出した。
「いや、さすがにそれは……」
「いいから! 頼むの、頼まないの!?」
「た、頼みます!」
テンションに圧倒されたオランドさんは反射的に答えていた。
「よろしい。ただ、この依頼、難易度が高いのでCランク相当になります。そうすると、Eランクのコータローさんでは受注できないので、ギルドからの指名依頼という形を取ります。いいですね!?」
いいも悪いも、この勢いに逆らえるわけがない。俺もオランドさんもただただ頷くだけだった。
「では、すぐにギルマスの許可を取ってきます。オランドさんは荷をコータローさんに。コータローさんはすぐに発てるように準備してください!」
「「はいっ!!」」
ルミさんが奥へ消えて、俺たちは大きく息をついた。ルミさんの消えた方から怒鳴り声が聞こえてきたような気がしたが、二人ともに全力で聞こえないふりをする。
「…相変わらす仕事モードのルミちゃんはすごい迫力だなあ」
「仕事できそうですよね」
「できるなんてもんじゃないさ。秘書に欲しいくらいだーー引き抜いたりしたらギルドから酷い目に遭わされそうだからやらないけどね」
オランドさんは苦笑いした。
「ところで君は? ルミちゃん、君のこと、えらくかってたようだけど」
「召喚勇者ってやつです。食い扶持稼ぐために冒険者になりました」
「シルヴィア姫のお名前が出ていたようだけど」
「そこは勘弁してください。いろいろあるので」
「わかった。いずれ機会があれば、ということにしておこう」
ニヤリ、という笑いが様になるイケメン。ちょっと悔しい。
「それにしても、王家に縁を持つ召喚勇者か。君はおもしろい存在になりそうだな」
「買い被りですよ。召喚勇者としての能力は低いですからね、俺」
「それが謙遜かどうかはすぐにわかるだろう。こちらとしては、この出逢いが良縁であることを願うばかりだ」
そう言って、オランドさんは俺に右手を差し出した。
「改めて。オランド商会代表のジャック・オランドです。今回の依頼、どうかよろしくお願いいたします」
オランドさんの手を握る。
「高杉孝太郎です。全力を尽くします。よろしくお願いします」
そこへルミさんが戻って来た。
「許可が取れました。今回の依頼はギルドからの指名依頼となります。ですから、コータローさんはこの依頼を達成すれば、Dランクへ昇格することになります。頑張ってくださいね」
「了解です」
「行動食など、最低限必要と思われる物を用意しました。お使いください」
中身の詰まった背嚢を渡された。
「おお、ありがとうございます」
ルミさん、マジデキる。
「道中のご無事を祈ります」
「ありがとうーーじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「頼んだぞ」
見送りの声を背に、軽い屈伸運動の後、初めての仕事へと走り出した。
テンションの上がったルミさんがとんでもないことを言い出した。
「いや、さすがにそれは……」
「いいから! 頼むの、頼まないの!?」
「た、頼みます!」
テンションに圧倒されたオランドさんは反射的に答えていた。
「よろしい。ただ、この依頼、難易度が高いのでCランク相当になります。そうすると、Eランクのコータローさんでは受注できないので、ギルドからの指名依頼という形を取ります。いいですね!?」
いいも悪いも、この勢いに逆らえるわけがない。俺もオランドさんもただただ頷くだけだった。
「では、すぐにギルマスの許可を取ってきます。オランドさんは荷をコータローさんに。コータローさんはすぐに発てるように準備してください!」
「「はいっ!!」」
ルミさんが奥へ消えて、俺たちは大きく息をついた。ルミさんの消えた方から怒鳴り声が聞こえてきたような気がしたが、二人ともに全力で聞こえないふりをする。
「…相変わらす仕事モードのルミちゃんはすごい迫力だなあ」
「仕事できそうですよね」
「できるなんてもんじゃないさ。秘書に欲しいくらいだーー引き抜いたりしたらギルドから酷い目に遭わされそうだからやらないけどね」
オランドさんは苦笑いした。
「ところで君は? ルミちゃん、君のこと、えらくかってたようだけど」
「召喚勇者ってやつです。食い扶持稼ぐために冒険者になりました」
「シルヴィア姫のお名前が出ていたようだけど」
「そこは勘弁してください。いろいろあるので」
「わかった。いずれ機会があれば、ということにしておこう」
ニヤリ、という笑いが様になるイケメン。ちょっと悔しい。
「それにしても、王家に縁を持つ召喚勇者か。君はおもしろい存在になりそうだな」
「買い被りですよ。召喚勇者としての能力は低いですからね、俺」
「それが謙遜かどうかはすぐにわかるだろう。こちらとしては、この出逢いが良縁であることを願うばかりだ」
そう言って、オランドさんは俺に右手を差し出した。
「改めて。オランド商会代表のジャック・オランドです。今回の依頼、どうかよろしくお願いいたします」
オランドさんの手を握る。
「高杉孝太郎です。全力を尽くします。よろしくお願いします」
そこへルミさんが戻って来た。
「許可が取れました。今回の依頼はギルドからの指名依頼となります。ですから、コータローさんはこの依頼を達成すれば、Dランクへ昇格することになります。頑張ってくださいね」
「了解です」
「行動食など、最低限必要と思われる物を用意しました。お使いください」
中身の詰まった背嚢を渡された。
「おお、ありがとうございます」
ルミさん、マジデキる。
「道中のご無事を祈ります」
「ありがとうーーじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「頼んだぞ」
見送りの声を背に、軽い屈伸運動の後、初めての仕事へと走り出した。
1
お気に入りに追加
2,515
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる