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4 不憫なお姫様

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「王様の娘さんって、お姫様ってことですよね!?」

 声が大きくなってしまうのは仕方ないだろう。突拍子も無さすぎる。

「何で俺?   そもそもお姫様なら婿のなり手なんていくらでもいるでしょう?」

 そう言うと、二人の顔が苦渋に歪んだ。

「すべて断られてしまったのです……」

「…不憫な娘なんだ……」

 王様は抱えた頭をかきむしった。そこには本気の苦悩が読み取れて、何も言えなくなってしまった。

「なぜあの娘だけが……二人の妹は普通なのに……」

「…身体を悪くしてるんですか?」

「ここ数年風邪ひとつひいておらん」

 ありがちかと思ったが、違うらしい。となるとーー

「…失礼ですが、おつむの方が?」

「我が国の最高学府を首席で卒業しておる」

 これも違った。病弱なわけでもなく、イカれてるわけでもない……ああ、そうか。地位があって、頭がキレてるということはーー

「…とんでもなくワガママ?」

「およそ人に何かを要求をするということがないな」

 じゃあ一体何なんだ?

 身体でも頭でも性格でもない。後ひとつ要素があると言えばあるが、さすがにそれを理由に断ったりはしないだろう。あまりにも失礼過ぎる。

「…えーっと、まさか…容姿……?」

「……不憫な……」

 マジかよ……

 容姿を理由に結婚を断られるお姫様って…どんだけなんだよ……

 お姫様と結婚するってことは、王族になるということで、そこには有形無形の様々なメリットが付随してくるわけで、本来なら望んでも叶うことのない縁談のはずなのに……

「勇者殿、どうであろうか。姫様を助けていただけませぬか?」

 って言われても、ここまでの話を聞いた上で、はいわかりましたと快諾できるだけの覚悟はない。

 覚悟はないが……

「…ちなみに、断ったらどうなるんです?   処刑とかされちゃうんですか?」

「そのようなことはせぬ」

 王様は強い視線で俺を射た。

「こちらの都合で呼びつけて、断られたら処刑などと恥知らずな真似はせぬ。今すぐというわけにはいかんが、送還の方法は探すし、それまでの生活には便宜を図る」

 そこまで言って、王様はがっくりと肩を落とした。

「だが…やはり駄目か……」

「勇者殿、会うだけ会ってみてはいただけませぬか。今回勇者殿を召喚する際に設定した条件が姫様の容姿を受け入れてくれる方だったのです。勇者殿に断られてしまったら、姫様は本当に……」

 おいおい、まさか「勇者」ってそっちの意味だったのか?

 苦笑するしかない。

 まあ、細かいことはどうでもいいや。

「どうなるかはわかりませんが、会いますよ」

「本当か!?」

 王様がガバッと顔を上げた。

「結果は約束しませんよ」

 とは言うものの、会ってから断ったら、相当に失礼だよな。

 この時点で俺は結末を予感していた。

「運命」 という言葉と共に。
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