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6 布教活動
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最近勇者が絶好調。
そんな話があちこちから聞こえてくる。
「勇者って、カホのことだよな」
普段店のカウンターでニコニコとラーメンをすすっている姿からは想像しにくいが、カホは実はこの国の最高戦力なのだ。
「そう言えばこないだはベヒーモスを討伐したって言ってたっけ」
それを聞いた時は、正直、マジか、と思った。
俺も元冒険者だからわかるが、ベヒーモスなんて大物中の大物だ。俺レベルでは瞬殺されて終了だ。普通なら討伐には複数の高レベルパーティーで当たるべきバケモンを単独討伐って、勇者ってのはどんだけ人間離れしてんだって話だよ。
「人は見かけによらんとは言うけど……」
この店で食事を楽しむカホはどこにでもいるような普通の少女にしか見えない。勇者として剣を振る姿など想像もできない。
「こんばんはー」
この日のカホは一人ではなかった。同じ年頃の女性二人と共に店を訪れていた。
「本当にラーメン食べられるの?」
「ばっちりよ」
「確かにいい匂いがしてる」
「いらっしゃい」
「今日は仲間連れてきたよ。同郷のナナとマユミ。二人ともあたしと同じく勇者認定受けてるわ」
「ナナでーす。醤油ラーメン、よろしくでーす」
ショートカットの、いかにも元気有り余ってます的なお姉ちゃんの注文はシンプルだった。
「マユミです。よろしくね。背脂たっぷりのコッテリ系が希望なんだけど、大丈夫?」
見た目スッキリした美人さんの注文は、俺にはよくわからなかった。
「ちょっと待ってくれ」
ボックス内のレシピ集を見てみると、それらしきものが見つかった。
「えーっと、この太麺の野菜、脂マシマシってヤツでいいのかな?」
「ジロー!!」
突然絶叫されてビックリした。クールビューティーな雰囲気をかなぐり捨てたマユミさんが恍惚とした表情をみせている。
「それよ、それ。それを大盛りでちょうだい!」
「わ、わかりました」
先に餃子を焼いて、つまみにしてもらいつつ、手早く醤油ラーメンを作る。これはもう何度も作っているので手早くできる。
「おまちどお。醤油ラーメンだ」
「うわあ」
ナナの顔が輝く。
「いただきます!」
スープを一口味わい、麺をすする。
「ああ、さいっこぉ」
一旦箸を置き、カホに握手を求める。
カホは微苦笑しながら握手に応じる。
「よくぞこの店見つけてくれたわ。あんたの嗅覚に最大限の感謝を」
「なんか大袈裟ね」
「ちっとも大袈裟なんかじゃないさ。ねえマスター、カホが初めてこの店のラーメン食べた時のリアクションって、こんなもんじゃなかったでしょ?」
「人間、歓喜の表現は多彩なんだなあと勉強させてもらいました」
真面目くさって言うと、カホは赤くなった。
「でしょ。これ食べてカホが大人しくしてるわけないじゃない。きっと芸人並みのリアクション取ったはずよ」
ゲイニンというのはよくわからなかったが、カホが全身でリアクションをしてくれたのは覚えている。
「ねえ、あたしのまだぁ?」
マユミから催促が入った。麺が太い分ゆで時間がかかるが、そろそろ頃合いだ。
レシピ集の絵を参考に盛り付けをすると、自分でも驚く絵面になった。
「…山だな……」
麺が見えないほどの肉(ブタというらしい)と野菜の山に、これでもかと言うくらい背脂とにんにくが乗っかっている。自分で作っておいてなんだが、見ているだけで胸焼けしそうだ。
「おまちどお」
「ジロオォォーーーーッ!!」
いろんな物をかなぐり捨てた絶叫が炸裂した。
だから、ジローって何なんだよ?
そんな話があちこちから聞こえてくる。
「勇者って、カホのことだよな」
普段店のカウンターでニコニコとラーメンをすすっている姿からは想像しにくいが、カホは実はこの国の最高戦力なのだ。
「そう言えばこないだはベヒーモスを討伐したって言ってたっけ」
それを聞いた時は、正直、マジか、と思った。
俺も元冒険者だからわかるが、ベヒーモスなんて大物中の大物だ。俺レベルでは瞬殺されて終了だ。普通なら討伐には複数の高レベルパーティーで当たるべきバケモンを単独討伐って、勇者ってのはどんだけ人間離れしてんだって話だよ。
「人は見かけによらんとは言うけど……」
この店で食事を楽しむカホはどこにでもいるような普通の少女にしか見えない。勇者として剣を振る姿など想像もできない。
「こんばんはー」
この日のカホは一人ではなかった。同じ年頃の女性二人と共に店を訪れていた。
「本当にラーメン食べられるの?」
「ばっちりよ」
「確かにいい匂いがしてる」
「いらっしゃい」
「今日は仲間連れてきたよ。同郷のナナとマユミ。二人ともあたしと同じく勇者認定受けてるわ」
「ナナでーす。醤油ラーメン、よろしくでーす」
ショートカットの、いかにも元気有り余ってます的なお姉ちゃんの注文はシンプルだった。
「マユミです。よろしくね。背脂たっぷりのコッテリ系が希望なんだけど、大丈夫?」
見た目スッキリした美人さんの注文は、俺にはよくわからなかった。
「ちょっと待ってくれ」
ボックス内のレシピ集を見てみると、それらしきものが見つかった。
「えーっと、この太麺の野菜、脂マシマシってヤツでいいのかな?」
「ジロー!!」
突然絶叫されてビックリした。クールビューティーな雰囲気をかなぐり捨てたマユミさんが恍惚とした表情をみせている。
「それよ、それ。それを大盛りでちょうだい!」
「わ、わかりました」
先に餃子を焼いて、つまみにしてもらいつつ、手早く醤油ラーメンを作る。これはもう何度も作っているので手早くできる。
「おまちどお。醤油ラーメンだ」
「うわあ」
ナナの顔が輝く。
「いただきます!」
スープを一口味わい、麺をすする。
「ああ、さいっこぉ」
一旦箸を置き、カホに握手を求める。
カホは微苦笑しながら握手に応じる。
「よくぞこの店見つけてくれたわ。あんたの嗅覚に最大限の感謝を」
「なんか大袈裟ね」
「ちっとも大袈裟なんかじゃないさ。ねえマスター、カホが初めてこの店のラーメン食べた時のリアクションって、こんなもんじゃなかったでしょ?」
「人間、歓喜の表現は多彩なんだなあと勉強させてもらいました」
真面目くさって言うと、カホは赤くなった。
「でしょ。これ食べてカホが大人しくしてるわけないじゃない。きっと芸人並みのリアクション取ったはずよ」
ゲイニンというのはよくわからなかったが、カホが全身でリアクションをしてくれたのは覚えている。
「ねえ、あたしのまだぁ?」
マユミから催促が入った。麺が太い分ゆで時間がかかるが、そろそろ頃合いだ。
レシピ集の絵を参考に盛り付けをすると、自分でも驚く絵面になった。
「…山だな……」
麺が見えないほどの肉(ブタというらしい)と野菜の山に、これでもかと言うくらい背脂とにんにくが乗っかっている。自分で作っておいてなんだが、見ているだけで胸焼けしそうだ。
「おまちどお」
「ジロオォォーーーーッ!!」
いろんな物をかなぐり捨てた絶叫が炸裂した。
だから、ジローって何なんだよ?
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