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1 運命の来客
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今日も今日とて閑古鳥。
哀しくなってくるが、現実は厳しい。
ここ一週間での来客はわずか二組。普通ならとっくにツブれているレベルだ。
とある事情により食う物には困らないので、何とかやっていけてるが、かなりマズい状況なのは確かだ。
「美味いと思うんだけどなあ……」
売り物である麺をズルズルとすする。この辺では馴染みのないものだが、味は悪くない。と言うか、美味い。
ただ、それも食べてもらえなければ始まらない。
「どうしたもんかね……」
もちろん手をこまねいていたわけではない。客引きもしたし、チラシもまいた。それでも客は来なかった。
「…潮時なんかなぁ……」
どうしても気持ちが後ろ向きになってしまう。
「はぁ……」
今までで一番深いため息をついた時だった。
バァン!
叩きつけるような勢いで店の扉が開かれた。
「うぉっ!?」
ビックリした。心臓が口から飛び出そうという感覚を初めて味わった。
入口を見ると、革の軽鎧姿のとんでもない美少女が、扉にもたれるようにして荒い息をついている。
「い、いらっしゃい」
客かどうか怪しいところだったが、とりあえず出迎えの挨拶をする。
「ね、ねえ、この匂いってーー」
息切れしそうになりながら、少女は何やら必死の様子を見せる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あたしは大丈夫。それより、ここはラーメン屋なの!?」
少女の言葉に、俺は目を見張った。
思わず言葉をなくして、少女を見つめてしまう。
「どうなの! ラーメン食べれるの!?」
焦れた少女が叫ぶ。見た目に似合わぬド迫力に一歩退いてしまう。
「ラーメン!」
「あ、はい、食べれます」
「~~~~~!!」
少女は天を仰いでガッツポーズを見せた。この状態で銅像を作ったら、タイトルは「歓喜」一択だな。
「食べさせて!」
「ありがとうございますーー普通のでいいですか?」
「大盛り!」
間髪入れずに元気な答えが返ってきた。
「ちょっと待っててくださいね」
早速調理に取りかかる。顔のニヤケが止められない。
この娘が何者かは知らないが、この娘はラーメンを知ってる。俺にとっては本物のお客だ。気合いが入らない訳がない。
「はいよ、おまちどう、醤油ラーメンだ」
目の前に出された丼を見て、少女は歓喜にうち震えた。プルプルと身を震わせる姿は、見てるだけでこっちが嬉しくなってくる。
「ああ」
艶かしくも見える吐息をついて、少女はレンゲを手に取った。
恐る恐ると言うか、うやうやしいほどの手つきでスープをすくい、口に運ぶ。
ここまで期待されていると、少女がどんな反応を示すのか、こっちが緊張してしまう。
「~~~~~っ!」
少女の叫びは声にならなかった。それでも極上の歓喜が伝わってくる。
ガバッと擬音が聞こえて来そうな勢いで、少女は麺をすすった。
「~~~~~っ!」
スープの時とまったく同じ反応をして、少女は餓鬼のようにがっつき始めた。
その様子を見て、ホッと胸を撫で下ろす。どうやら満足してもらえたらしい。
それにしても、この勢いはーーあれだな、うん。
作業に取りかかる。
ほどなく、少女はスープの一滴も残すことなくラーメンを完食した。
「おかわり!」
「はいよ!」
これを予期して作っていたラーメンを少女の前に出す。
少し驚いたような少女だったが、すぐにサムズアップを見せ、二杯目に取りかかる。
その後、こっちがビックリするような健啖家ぶりを見せつけた少女は、ラーメン五杯を平らげ、満足そうな表情を見せた。
哀しくなってくるが、現実は厳しい。
ここ一週間での来客はわずか二組。普通ならとっくにツブれているレベルだ。
とある事情により食う物には困らないので、何とかやっていけてるが、かなりマズい状況なのは確かだ。
「美味いと思うんだけどなあ……」
売り物である麺をズルズルとすする。この辺では馴染みのないものだが、味は悪くない。と言うか、美味い。
ただ、それも食べてもらえなければ始まらない。
「どうしたもんかね……」
もちろん手をこまねいていたわけではない。客引きもしたし、チラシもまいた。それでも客は来なかった。
「…潮時なんかなぁ……」
どうしても気持ちが後ろ向きになってしまう。
「はぁ……」
今までで一番深いため息をついた時だった。
バァン!
叩きつけるような勢いで店の扉が開かれた。
「うぉっ!?」
ビックリした。心臓が口から飛び出そうという感覚を初めて味わった。
入口を見ると、革の軽鎧姿のとんでもない美少女が、扉にもたれるようにして荒い息をついている。
「い、いらっしゃい」
客かどうか怪しいところだったが、とりあえず出迎えの挨拶をする。
「ね、ねえ、この匂いってーー」
息切れしそうになりながら、少女は何やら必死の様子を見せる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あたしは大丈夫。それより、ここはラーメン屋なの!?」
少女の言葉に、俺は目を見張った。
思わず言葉をなくして、少女を見つめてしまう。
「どうなの! ラーメン食べれるの!?」
焦れた少女が叫ぶ。見た目に似合わぬド迫力に一歩退いてしまう。
「ラーメン!」
「あ、はい、食べれます」
「~~~~~!!」
少女は天を仰いでガッツポーズを見せた。この状態で銅像を作ったら、タイトルは「歓喜」一択だな。
「食べさせて!」
「ありがとうございますーー普通のでいいですか?」
「大盛り!」
間髪入れずに元気な答えが返ってきた。
「ちょっと待っててくださいね」
早速調理に取りかかる。顔のニヤケが止められない。
この娘が何者かは知らないが、この娘はラーメンを知ってる。俺にとっては本物のお客だ。気合いが入らない訳がない。
「はいよ、おまちどう、醤油ラーメンだ」
目の前に出された丼を見て、少女は歓喜にうち震えた。プルプルと身を震わせる姿は、見てるだけでこっちが嬉しくなってくる。
「ああ」
艶かしくも見える吐息をついて、少女はレンゲを手に取った。
恐る恐ると言うか、うやうやしいほどの手つきでスープをすくい、口に運ぶ。
ここまで期待されていると、少女がどんな反応を示すのか、こっちが緊張してしまう。
「~~~~~っ!」
少女の叫びは声にならなかった。それでも極上の歓喜が伝わってくる。
ガバッと擬音が聞こえて来そうな勢いで、少女は麺をすすった。
「~~~~~っ!」
スープの時とまったく同じ反応をして、少女は餓鬼のようにがっつき始めた。
その様子を見て、ホッと胸を撫で下ろす。どうやら満足してもらえたらしい。
それにしても、この勢いはーーあれだな、うん。
作業に取りかかる。
ほどなく、少女はスープの一滴も残すことなくラーメンを完食した。
「おかわり!」
「はいよ!」
これを予期して作っていたラーメンを少女の前に出す。
少し驚いたような少女だったが、すぐにサムズアップを見せ、二杯目に取りかかる。
その後、こっちがビックリするような健啖家ぶりを見せつけた少女は、ラーメン五杯を平らげ、満足そうな表情を見せた。
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