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4 インフェルノ

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「なら、教えてやるよ」

 サムズアップをして見せた。

「あたしが、本当に魔法を使えるようになるんですか?」

「ああ。それも、超一流の魔法使いになれるぞ」

「で、でもあたし先生がどんなに丁寧に教えてくれても全然駄目だったんですけど……」

「あれは教え方が悪いーーって言うか、何にもわかってないぞ、あの先生」

「……」

「おまえさん、自分は魔力が少ない、っていうか、ないと思ってるだろ」

「は、はい」

「そこがそもそもの間違いだーーおまえさんの魔力量は、歴史上でも稀に見るレベルだぞ」

「え?」

 少女がポカンとした顔になる。

「その膨大な魔力を初級魔法の術式に突っ込んでみろ。術式の方が壊れるに決まってるじゃねえか」

 そう。少女の魔法が発動しなかった理由は単純明快。術式と魔力量のバランスが取れていなかっただけだ。初級魔法を発動させたいのなら、この娘の場足、呼吸に例えれば吐息程度で十分だったのだ。それを肺活量の限界に挑戦するような真似をすれば、結果がこうなるのは当たり前だ。

「あの先生がおまえさんの魔力量を把握できてれば何の問題もなかったんだがな」

「そ、それ、ホントなんですか?」

「ウソだと思うならこの詠唱してみろ」

 そう言って俺が適当と判断した火魔法の詠唱を教える。

「いいか、空に向かって撃てよ。間違っても水平には撃つなよ。街が滅びるぞ」

「は、はい」

 半信半疑の様子であったが、少女は素直に詠唱を開始した。

 慣れれば短縮もできるのだが、初めてなのでフル詠唱が必要になる。その詠唱が完成に近づくにつれ、空気を震わせるような凄まじい魔力が漏れ出てきた。

 その頃になると、異変に気づいた学校関係者が校舎の方からこちらを伺い始めた。

「よし、詠唱の仕上がりだ。派手にブッ放せ!」

「ーーここに顕現せよ、地獄の業火ーーインフェルノ!!」

 少女の小柄な身体から放たれたとはとても思えないような、超巨大な火柱が立ち上った。

「「「「なっ!?」」」」

 ギャラリーが一様に絶句する。この場の誰もが初めて見るレベルの魔法だったのだ。

「…何だ、今のは……」

「イ、インフェルノって、上級や超級どころじゃねえ……神級の魔法じゃねえか」

 戦慄が場を支配する。

「デモンストレーションとしては上出来だったかなーーお?」

 遥か上空から何かが落ちてきた。最初は黒い点にしか見えなかったものが、ぐんぐん大きくなってくる。

「おっと、やべえ」

 少女の身体を抱いてその場から飛び退く。

 次の瞬間、落下した巨大物体は、校庭に大きなクレーターを穿った。

 轟音と立ち込める砂ぼこりに、全員の耳と目が一時的に使い物にならなくなる。

 そんな中でも俺だけは何が起きたか、正確に把握していた。

「くくくっ」

 思わず笑いが漏れる。

「マジでとんでもねえな、こいつ」

 腕の中の少女は、まだ自分の身に起きたことが理解できないようで、きょとんとしている。

「面白くなってきたぜ」

 腹の底から笑いが湧いてくるのを、俺は止めることができなかった。

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