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36 アスカさんの受難
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米があまりに嬉しくて、アレックスさんたちに出す朝食を和風のメニューにしてしまった。
作ってから思ったんだが、口に合うかな?
何か別のメニューも作った方がいいかな、などと考えていると、二階からアスカさんが降りてきた。お米のお礼に二階に泊まってもらったのだ。
「おはようございます」
「おはようございます。すごくいい匂いがしてますね。お味噌汁ですか?」
「です。ご飯があるとなると、やっぱり味噌汁は欠かせないかと」
「ですよね。わかります!」
アスカさんは満面の笑みだ。この反応については想像通りで、一ミリの狂いもなかった。
「ちなみに具は何ですか?」
「朝からはちょっと重いかもしれないけどーーオーク汁」
「それって要は豚汁ですよね!?」
勢いよく食いついてくる。
「大好物です! 嬉しいです!!」
「あとは出汁巻玉子とキュウリの酢の物。本当は焼き鮭とかがあればよかったんだけど、そこは今後の改善点にさせてもらうわ」
「十分です。もう一度このメニューを食べれるなんて思ってなかったから」
アスカさんは本当に嬉しそうだ。後は口に合うことを願おう。
そこへアレックスさんとレイアさんも降りてきた。
「おはようございます」
「おはようございます。朝食の支度整っておりますので、こちらへどうぞ」
二人を席に案内する。アスカさんの隣のテーブルだ。
「ええっ!? せ、先帝陛下!?」
突然アスカさんが素っ頓狂な声をあげた。
その声の中に聞き捨てならない単語が混ざっていることに気がついた。
「先帝陛下…って、前の皇帝陛下?」
「今は単なる隠居の爺さんだよ」
アレックスさんは苦笑している。どうやら本当のことらしい。身分の高い人だろうとは思ってたけど、そこまでの人だとは思わなかった。ちょっと、いやかなりビックリだ。
「あ、あの…もしかして昨日からずっとこちらにいらっしゃったのでしょうか?」
パニックに陥ったアスカさんは目を泳がせている。
「ええ。おかげで大変美味しいお料理をいただくことができましたよーーありがとう」
アレックスさんに頭を下げられたアスカさんはパニックを加速させた。
「ももももも勿体ないお言葉! そそそそれよりも近くにいながら気づけずに申し訳ございませんでしたっ!!」
「いやいやに顔を上げてください。見たところ、あなたもこちらのご主人のお料理のファンですよね。そういう意味では私たちは仲間ですから」
「ひえええっ」
アレックスさんの言葉にアスカさんは恐縮しきってしまう。
アスカさん、真面目そうだからな。こういうシチュエーションってテンパっちまうんだろうな。
気の毒だと思うのだが、俺にはどうにもできん。
それでも出せる助け舟は出そうと、三人に声をかける。
「どうぞお席にお着きください。温かい内にお召し上がりいただきたいので」
「おう、そうだよな。ではお嬢さん、ご一緒にいかがかな?」
その言葉でフリーズしたアスカさんだったが、今度はレイアさんから助け舟が出た。
「あなた、あんまり無理を言っては駄目ですよ。お嬢さんも困っていらっしゃるわ」
「あ、いえ、あたしは、そんなーー」
ストレートに困っているとは言えないし、かと言って困っているのは本当なので、アスカさんの返答はしどろもどろになってしまう。
「多分これからも顔を合わせる機会はあると思うから、慌てずに仲良くなっていきましょうーーごめんなさいね。ゆっくりお食事楽しんでね」
「は、はい」
席に着いたアスカさんは、ゆっくり、大きく息を吐き出した。
「き、緊張したあ……」
「ちょっとこれでも飲んでて。先にアレックスさんたちの給仕してきちゃうから」
リラックス効果のあるハーブティーを出しながら言うと、アスカさんはホッとしたように頷いた。
順番的にはアスカさんの方が先なのだが、そうしてしまったらアスカさんはアレックスさんたちの配膳が終わるまで料理に手をつけようとはしないだろう。
泊まってもらったのはよかれと思ってしたことだったんだが、かえってアスカさんに悪いことしちまったかな。
作ってから思ったんだが、口に合うかな?
何か別のメニューも作った方がいいかな、などと考えていると、二階からアスカさんが降りてきた。お米のお礼に二階に泊まってもらったのだ。
「おはようございます」
「おはようございます。すごくいい匂いがしてますね。お味噌汁ですか?」
「です。ご飯があるとなると、やっぱり味噌汁は欠かせないかと」
「ですよね。わかります!」
アスカさんは満面の笑みだ。この反応については想像通りで、一ミリの狂いもなかった。
「ちなみに具は何ですか?」
「朝からはちょっと重いかもしれないけどーーオーク汁」
「それって要は豚汁ですよね!?」
勢いよく食いついてくる。
「大好物です! 嬉しいです!!」
「あとは出汁巻玉子とキュウリの酢の物。本当は焼き鮭とかがあればよかったんだけど、そこは今後の改善点にさせてもらうわ」
「十分です。もう一度このメニューを食べれるなんて思ってなかったから」
アスカさんは本当に嬉しそうだ。後は口に合うことを願おう。
そこへアレックスさんとレイアさんも降りてきた。
「おはようございます」
「おはようございます。朝食の支度整っておりますので、こちらへどうぞ」
二人を席に案内する。アスカさんの隣のテーブルだ。
「ええっ!? せ、先帝陛下!?」
突然アスカさんが素っ頓狂な声をあげた。
その声の中に聞き捨てならない単語が混ざっていることに気がついた。
「先帝陛下…って、前の皇帝陛下?」
「今は単なる隠居の爺さんだよ」
アレックスさんは苦笑している。どうやら本当のことらしい。身分の高い人だろうとは思ってたけど、そこまでの人だとは思わなかった。ちょっと、いやかなりビックリだ。
「あ、あの…もしかして昨日からずっとこちらにいらっしゃったのでしょうか?」
パニックに陥ったアスカさんは目を泳がせている。
「ええ。おかげで大変美味しいお料理をいただくことができましたよーーありがとう」
アレックスさんに頭を下げられたアスカさんはパニックを加速させた。
「ももももも勿体ないお言葉! そそそそれよりも近くにいながら気づけずに申し訳ございませんでしたっ!!」
「いやいやに顔を上げてください。見たところ、あなたもこちらのご主人のお料理のファンですよね。そういう意味では私たちは仲間ですから」
「ひえええっ」
アレックスさんの言葉にアスカさんは恐縮しきってしまう。
アスカさん、真面目そうだからな。こういうシチュエーションってテンパっちまうんだろうな。
気の毒だと思うのだが、俺にはどうにもできん。
それでも出せる助け舟は出そうと、三人に声をかける。
「どうぞお席にお着きください。温かい内にお召し上がりいただきたいので」
「おう、そうだよな。ではお嬢さん、ご一緒にいかがかな?」
その言葉でフリーズしたアスカさんだったが、今度はレイアさんから助け舟が出た。
「あなた、あんまり無理を言っては駄目ですよ。お嬢さんも困っていらっしゃるわ」
「あ、いえ、あたしは、そんなーー」
ストレートに困っているとは言えないし、かと言って困っているのは本当なので、アスカさんの返答はしどろもどろになってしまう。
「多分これからも顔を合わせる機会はあると思うから、慌てずに仲良くなっていきましょうーーごめんなさいね。ゆっくりお食事楽しんでね」
「は、はい」
席に着いたアスカさんは、ゆっくり、大きく息を吐き出した。
「き、緊張したあ……」
「ちょっとこれでも飲んでて。先にアレックスさんたちの給仕してきちゃうから」
リラックス効果のあるハーブティーを出しながら言うと、アスカさんはホッとしたように頷いた。
順番的にはアスカさんの方が先なのだが、そうしてしまったらアスカさんはアレックスさんたちの配膳が終わるまで料理に手をつけようとはしないだろう。
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