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私、ご主人様と仲良くなれる気がしないんですけど

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ご主人様が食事を始める。
さて、その間私は外でいた方が良いだろうか……。

「……そこに立っていろ」

「……承知いたしました」

まるで見透かしたかのようなご主人様からの指示。
視線はテーブルに置かれた食事へと落とした。

「おい」
「……はい」
「これ……食べるか?」
「……はい?」

え?あまりに突飛すぎる質問に私は目を丸くした。

「えっ……いや……」

食べる……?これはご主人様に対しては失礼だろう。食べない……?そうするとご主人様のご厚意を無下にする失礼な行為……?
……ごくり。
普段の私なら欲求に負けていたのかもしれない。
しかし今は……食欲がない。ぺこりと頭を下げる。

「ご主人様のご厚意に感謝いたします。しかし、おそれ多いので、お断りさせていただきます」

……これで合っているのだろうか。
顔を上げるのが怖い。

「……わかった。顔を上げろ」
「はい」

ご主人様を見ると、思っていたよりも優しい目をしたご主人様がいた。
何を考えているのだろう。
私がご主人様の意向に添った対応をしたから怒っている……ようには見えないけど。

「申し訳、ございません」
「いや、いい」

ご主人様は食事へと戻った。

なんだかご主人様、最初の様子と変わった……?
そんなわけないか。

今まで私は皆に嫌われてきたもの。
ここでの私の立ち位置や待遇だって、いつ元に戻るか分からない。
私って、こんなに……こんなにも曖昧な存在……ーーーーーーご主人様に使用人にされて、美味しいご飯を初めて食べて、綺麗なお湯に触れて、あたたかい布団に眠る。あれ……私、なにしてるんだっけ。私、何を考えてたんだっけ。
今朝の肩の痛みがズキズキと脈をうちはじめた。
あれ。なにか、なにかがおかしい。
頭が割れそう。
視界に入っているはずのご主人様とお食事の映像がぐにゃりと曲がる。そして白昼夢のようにぼやけ、白んできた。

「申し訳、ございません」

何を言っているんだ。私は。
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