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私、早速重要任務を任されてしまいました(全19話)

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レイランさんが廊下を確認する。

「いつもご主人様のお食事のお運びを担当してるメイドちゃん……カーリーちゃんが来ないわねぇ……」

レイランさんが引っ込んだら、遠くからトタトタ足音がして、廊下の奥から誰かが走ってきた。
朱色の髪に、とがった耳。アナベルだ。

「り、リーシュ?!」
「どうしたんですか?」

かなりのスピードで走っていたと思うのだが、アナベルは一切息切れしていない。

「あなた生きてるの?!そ、その首……」
「はい……それが」

死人でも見たのかというアナベルの表情。
すみません、私まだ死んでないです。
アナベルが勘違いした経緯を一通り話す。

「そうだったのね……私はご主人様に急に呼びつけられてコーヒーをいれるよう言われたの。ご主人様の機嫌が悪かったし、そばで倒れてるあなたを見て……殺されなかったのが不思議だわ」

え、そんな高確率で死ぬ感じだったの?

「とにかく無事で良かったわ。これ、片付けるところだったわ、どうぞ」

アナベルはメイド服のポケットから何やら黒いチェーンが付いたものを取り出した。

「ありがとうございます」

それを両手で受けとる。
黒いボディに白い文字盤、黒で数字が書かれた懐中時計。
三本の針がチクチクと規則正しい音をたてている。
よし。これで時間がわかる。

現在時計は2時34分を示していた。

ポケットの中に時計をしまう。

「……ご主人様のアフタヌーンティーは……誰が運びますか?準備を進めておきますが」

ネロさんが尋ね、厨房の奥に消えた。
お菓子を焼いているのだろうか、奥からは甘い香りがする。

「そうねぇ……カーリーちゃんも来ないし、どうしちゃったのかしら」
「わ、私はもう嫌よ……」

───タンッ、タンッ、タッ!
ひとつひとつの音が妙に離れた足音。
それがだんだん近づいてくる。

「ごめんなさいだよぉ!」

桃色の髪のカーリーが焦った様子でやってきた。

「あら、カーリーちゃんどうしたの?それにしてもすごい速さだったわね」
「鬼族のさは脚力が自慢なんだよぉ♪お仕事がいっぱいあって大変だったんだよぉ……あ、リーシュちゃん!」

レイランさんと話していたカーリーが私に気付きにっと微笑む。

「カーリーは今日は他のお仕事で手一杯なんだよぉ……ご主人様のアフタヌーンティーのお運び、頼まれてくれないかなぁ?」
「あの……」
「なぁに?」

足、踏まないでください。
私の靴にはヒールは無いのだが、カーリーのにはヒールがあるようだ。
ヒールを器用に使って、私の足をぐりぐり。

「……わかりました」
「ありがとぉ♪夕食もお願いするんだよぉ♪」

アフタヌーンティーだけじゃなくて、夕食も頼まれてしまった。
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