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第10章~モンスターパレード~

第68話 仕込み――作業って大事だよね。

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 ここはエクノルエ領の西側の領外に存在する未開地。この地には狂暴なモンスターや獣が跋扈し、人間による開拓を長年の間拒み続けていた。また、この地は数十年に一回、モンスターの大繁盛が起こり、人間の居住地域までモンスターが侵入し、大きな被害をもたらす、通称モンスターパレードが起きたりと。この地に隣接する国の悩みの種ともなっていた。
 そんな未開地に今、大きな変化が訪れていた。

―――未開地某所

 そこには黒いフード付きのマントを纏った者たちが10名ほど集まっていた。

「モンスター避けの結界は?」

 その中の者の一人が言う。

「大丈夫だ、機能している。」

「ったく、ここの獣やモンスターどもは火を恐れねぇからな、やりにくくって仕方がねぇや」

 別の者が愚痴をこぼす。

「まったくだ。俺らが仕込みのために未開地ここに入って10年。ここのモンスターどもにやられた同胞も数知れず、いい加減本国に戻りてぇよ」

 黒衣の者たちが一様にそう愚痴をこぼしていると、一人のリーダー格らしき者が口を開いた。

「この作戦ももう最終段階に入っているさね。後は山喰らいを上手くエクノルエへ誘導できれば、他のモンスターたちもエクノルエへ追い立てられる。それが出来れば作戦終了。私たちは晴れて本国へ戻ることが出来て右手団扇の生活が待っているさね」

「しかし、あの山喰らいだぜ、そう上手く誘導出来るもんかね?」

「それは本国のインテリどもが作ったこの魔法の香の力を信じるしかないさね」

「一応ここのモンスターどもには効いたんだよな」

「ああ、実験でも山喰らいがこの香に反応したことは確認しているよ」

「それじゃあ後は本番で上手くいくのを願うばかりだな」

「それもそうだな。因みにだが姐さん、あの道化の野郎が任務失敗したってのは本当ですかい?」

 黒衣の部下の話にリーダー格の者は、嘲るように鼻を鳴らす。

「本当だよ、あの野郎御使いと言ってもたかだか14の小娘、しかも丸腰の相手に殺られやがった」

「そりゃあまた……道化の野郎腹でも壊してやがったんですかね?」

「それだけで殺られるほど、柔な男じゃないはずなんだけどねぇ」

 リーダー格の者が顎に手を当てながら言う。すると別の部下が

「それならその娘ってのが道化の野郎よりも強かったってことですかね?」

「信じたくはないけどね。だが、妙な噂の件もある」

「妙な噂?」

「ああ、最近エクノルエ領を騒がしている噂だよ」

「へぇ、それってどんな?」

 言われてリーダー格の者は言いにくそうに口を開いた。

「主が降臨なされたっていう噂さ」

 リーダー格の者がそう言った瞬間、周りの者が皆吹き出す。

「あ、主って姐さん、一体何の冗談だよ」

「私に訊くんじゃないよ。私はただそんな噂を耳にしたってだけさね」

「だからって、主って、神話じゃあるめぇし」

 堪えきれなかったのか部下たちの間で大きな笑いがまき起こる。リーダー格の者は言うのではなかったと後悔する。

「兎に角だ。作戦も大詰め、あんたたち、まかり間違っても失敗なんかするんじゃないよ!!」

 言ってその集団は蜘蛛の子を散らすようにいなくなりそこには何も残らなかった。
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