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第9章~眷属教育~

第59話 勇気――リンリンのリンって何?

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 四大使による教育が始まってから早7年、アリアは14歳になっていた。

―――管理者部屋
「レイ君、アリアちゃんはもう14歳になったよ~」
 リンネが続ける。
「知ってるレイ君?アリアちゃん7歳のあの事件以降、毎晩レイ君にお礼をして、早く会いたいってお願いをしているんだよ。それこそ恋する乙女のように、一途にさ、それだけまだ見ぬ主様――レイ君のことを想っているんだよ。それなのにレイ君ときたら、まだその時じゃないの一点張り、引き延ばしに延ばしまくって早七年。七年もあれば小学生一年生が中学一年生になるよ。いいかげんアリアちゃんに会ってあげたらどうかとリンネさんは思うわけさ。ねえ、レイ君。聞いてる?」

 くどくどくどくどとリンネがレイに説教をするように言うが、レイは耳を塞いで「あ~」と言って聞くことを拒否。リンネはそんな煮え切らない態度をとり続けるレイに訊く。

「レイ君、なんでアリアちゃんに会ってあげないんだい?」

 優しく諭すような声でリンネが訊く。
 するとレイは、それまでの硬化した態度を解いて小さく呟いた。

「怖い、のかもしれません」

「アリアちゃんに会うことがかい?」

「はい」

 レイは元気なく、小さく頷きそして続ける。

「僕はアリアに対して負い目があります」

「毒の件なら結果オーライ。アリアちゃんは生きてるし、何よりも本人がレイ君に感謝してるじゃないか」
「それでもです。僕はアリアの今の髪と瞳の色を僕の判断の遅さによる罪の証のように感じているのです。だから僕がもし、アリアに会ってその姿を見た時にどの様な表情をするのかが分からない。もしかしたら残念な、悲しみに満ちた目をアリアに向けてしまうかも知れない。それが僕は恐ろしくてたまらないのです。だから僕はこのまま――」

「ストーップ」

 リンネがレイの懺悔めいた言葉を止める。

「レイ君、私、君がなんでアリアちゃんにのか理由が解ったよ」

「だから言ってるじゃ――」

「それもそうだけど、そうじゃない。もっと簡単でもっと難しい理由かな」

 そう言うリンネはいつもとは違う自然な微笑みを浮かべている。

「それは一体どの様な理由なのですか?」

 レイが訊く

「これを聞いたら君はショックを受けるかもしれない。それでも良いかい?」

 少しの逡巡。そしてレイは頷く。

「はい」

 レイはリンネの目を見つめている。リンネは自然な微笑みを浮かべたまま、レイに優しく言う。

「その理由というのはね、レイ君に勇気がないからなんだよ」

「勇気、ですか?」

「そう、勇気がないからあれこれ理由をつけてアリアちゃんと会うことから逃げている」

「僕がアリアから逃げる?」

 信じられない。レイはそんな顔をリンネに向ける。

「実際そうだろう?君は何かと理由をつけて、アリアちゃんと会うことを避けている。それも七年もだ。そろそろ勇気を出してもいい頃合いじゃないかな?」

「勇気……」

 レイは管理者部屋の窓に映るアリアの姿を見る。そして反省する。アリアの健気な姿を見ているにも関わらず、アリアから逃げ続けた自分自身を。

「リンネ」

 レイがリンネのことを呼ぶ。リンネは目を伏せ「何だいレイ君」と優しく返す。

「決めました。アリアに会おうと思います」
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