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春
キーラとのお出かけ②
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その後、私とキーラはお店のワンピースコーナーに陣取って、次から次に見ていった。
倉庫の古着は平民が着るようなエプロン、シャツ、スカート、ワンピース、外套はもちろん、夜会に着ていくようなクラシカルなドレスや、果ては乗馬服まで揃っている。
何でも、貴族が買い替えのためにまとめて処分したりすることもあるらしい。
スカーフや手袋、かつらなどの小物もある。
選ぶ合間に、古風な羽根飾りのついた帽子をかぶって笑いあったり、それだけで楽しい時間が過ぎていく。
「これ、どうかしら?」
キーラは「うーん」と唸って、私の掲げたベージュのワンピースを眺めた。
袖のところの包みボタンと、ベルト代わりのリボンが黒くてアクセントになっている。
「ちょっと鏡の前で合わせてみてください」
壁にある大きな姿見に近づいて、自分の体に当ててみる。
「お嬢様、これはやめておきましょう」
「なんで?」
「このベージュはお嬢様のお顔の色を悪くみせます。同じベージュでも・・・ほら、こっちのような色味の方が・・」
私が選んだよりも、もっと黄色みの強い、明るめのベージュのシャツをキーラが私の体に当てた。
「ほら、こっちの方がお肌が綺麗に見えません?」
「・・・本当だ」
比べてみて、確かにと思った。
私が選んだワンピースだと肌の色がくすんで見える。
「ね?お肌を綺麗に見せてくれるお色を選ぶと、いいと思いますよ」
「同じベージュでも全然違うのね」
「どの色でもそうですよ。同じ色の中でも、濃さや種類によって全然違います。それに色自体も、似合うものと似合わないものがあります。お嬢様のお肌とその茜色の御髪なら、今日着ていらっしゃるような淡い色味よりも、ハッキリした色味の方がお似合いかと思います」
「そうかしら?」
髪が目立つので、せめて服の色は目立たないようなものを今まで選んできた。
「そうですね・・例えば緑とか?」
「それ、キーラの色じゃない」
「いいじゃないですか!ちょっとこれを試着してきてください」
絶対に自分では選ばなそうな、柄物のワンピースを渡される。
「・・・これ?」
「ほらほら、騙されたと思って早く」
白地に緑のペイズリー柄のシフォン素材で、半袖の部分にはレースが重ねてあった。
とても素敵だけど、こういうワンピースは私みたいなちんちくりんじゃなくて、もっとスッとした美人が着るものじゃないんだろうか・・
期待するようなキーラに息を吐いて、試着室に入る。
「中の鏡は見ないで、先に私に見せてくださいね!」
試着室の外から声をかけてくるキーラに生返事を返して、ワンピースに袖を通した。
サイズはピッタリのようだ。
「どうですか?着れました?着れたらすぐ出てきてくださいね?見せないでまた着替えちゃうのは無しですよ?」
キーラは、いつ息継ぎをしているのだろうか、と言うくらいずっと私に語りかけている。
「今、行くからちょっと待って」
前の通路にキーラ以外の人がいないことを確認してから、カーテンを全て開く。
「どう・・かしら?」
「まぁ!」と笑顔のキーラに手を引かれ、姿見の前に立つ。
ワンピースは、誂えたようにピッタリだった。
スクエアに開いた襟ぐり、上半身はピッタリとしているのに反して、ふんわり広がるスカート。
なんだか、いつもよりスタイルも良く見える。
「ほら!絶対似合うと思ったんです」
嬉しそうなキーラの声に、気恥ずかしくなって下を向いた。
思ってたよりも・・まぁまぁ、いや、だいぶ、似合っている、かも。
「どうですか、お嬢様!」
「・・なんだか、ちょっと大人っぽく見えるかしら。」
髪もまとめているせいか、顔も小さく見える気がする。
「でしょう?形も似合っています」
「この袖が、なんか素敵ね・・」
今まではパフスリーブのワンピースがほとんどだったが、こうしてみるとパフスリーブはあまり私に似合っていないのかもしれない。
「最近流行の、襟が詰まっているドレスよりも、お嬢様にはデコルテを綺麗に見せる襟ぐりがお似合いだと思います。」
「私が着ていても、おかしくないかしら?」
「とっても素敵ですよ」と笑うキーラに、嬉しくて思わず口元が緩んでしまう。
結局、その後も2人で試着を繰り返し、午後2時を過ぎてようやく昼ごはんにありついたのだった。
倉庫の古着は平民が着るようなエプロン、シャツ、スカート、ワンピース、外套はもちろん、夜会に着ていくようなクラシカルなドレスや、果ては乗馬服まで揃っている。
何でも、貴族が買い替えのためにまとめて処分したりすることもあるらしい。
スカーフや手袋、かつらなどの小物もある。
選ぶ合間に、古風な羽根飾りのついた帽子をかぶって笑いあったり、それだけで楽しい時間が過ぎていく。
「これ、どうかしら?」
キーラは「うーん」と唸って、私の掲げたベージュのワンピースを眺めた。
袖のところの包みボタンと、ベルト代わりのリボンが黒くてアクセントになっている。
「ちょっと鏡の前で合わせてみてください」
壁にある大きな姿見に近づいて、自分の体に当ててみる。
「お嬢様、これはやめておきましょう」
「なんで?」
「このベージュはお嬢様のお顔の色を悪くみせます。同じベージュでも・・・ほら、こっちのような色味の方が・・」
私が選んだよりも、もっと黄色みの強い、明るめのベージュのシャツをキーラが私の体に当てた。
「ほら、こっちの方がお肌が綺麗に見えません?」
「・・・本当だ」
比べてみて、確かにと思った。
私が選んだワンピースだと肌の色がくすんで見える。
「ね?お肌を綺麗に見せてくれるお色を選ぶと、いいと思いますよ」
「同じベージュでも全然違うのね」
「どの色でもそうですよ。同じ色の中でも、濃さや種類によって全然違います。それに色自体も、似合うものと似合わないものがあります。お嬢様のお肌とその茜色の御髪なら、今日着ていらっしゃるような淡い色味よりも、ハッキリした色味の方がお似合いかと思います」
「そうかしら?」
髪が目立つので、せめて服の色は目立たないようなものを今まで選んできた。
「そうですね・・例えば緑とか?」
「それ、キーラの色じゃない」
「いいじゃないですか!ちょっとこれを試着してきてください」
絶対に自分では選ばなそうな、柄物のワンピースを渡される。
「・・・これ?」
「ほらほら、騙されたと思って早く」
白地に緑のペイズリー柄のシフォン素材で、半袖の部分にはレースが重ねてあった。
とても素敵だけど、こういうワンピースは私みたいなちんちくりんじゃなくて、もっとスッとした美人が着るものじゃないんだろうか・・
期待するようなキーラに息を吐いて、試着室に入る。
「中の鏡は見ないで、先に私に見せてくださいね!」
試着室の外から声をかけてくるキーラに生返事を返して、ワンピースに袖を通した。
サイズはピッタリのようだ。
「どうですか?着れました?着れたらすぐ出てきてくださいね?見せないでまた着替えちゃうのは無しですよ?」
キーラは、いつ息継ぎをしているのだろうか、と言うくらいずっと私に語りかけている。
「今、行くからちょっと待って」
前の通路にキーラ以外の人がいないことを確認してから、カーテンを全て開く。
「どう・・かしら?」
「まぁ!」と笑顔のキーラに手を引かれ、姿見の前に立つ。
ワンピースは、誂えたようにピッタリだった。
スクエアに開いた襟ぐり、上半身はピッタリとしているのに反して、ふんわり広がるスカート。
なんだか、いつもよりスタイルも良く見える。
「ほら!絶対似合うと思ったんです」
嬉しそうなキーラの声に、気恥ずかしくなって下を向いた。
思ってたよりも・・まぁまぁ、いや、だいぶ、似合っている、かも。
「どうですか、お嬢様!」
「・・なんだか、ちょっと大人っぽく見えるかしら。」
髪もまとめているせいか、顔も小さく見える気がする。
「でしょう?形も似合っています」
「この袖が、なんか素敵ね・・」
今まではパフスリーブのワンピースがほとんどだったが、こうしてみるとパフスリーブはあまり私に似合っていないのかもしれない。
「最近流行の、襟が詰まっているドレスよりも、お嬢様にはデコルテを綺麗に見せる襟ぐりがお似合いだと思います。」
「私が着ていても、おかしくないかしら?」
「とっても素敵ですよ」と笑うキーラに、嬉しくて思わず口元が緩んでしまう。
結局、その後も2人で試着を繰り返し、午後2時を過ぎてようやく昼ごはんにありついたのだった。
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