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春
ひどい目に遭いました。
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「レイリア、大丈夫か?」
大量盛りのレストランで食事を終えると、アマンド様が馬車まで送り届けてくれた。
私は満腹すぎてノロノロとしか進めず、彼が休憩時間を過ぎてしまったんじゃないかと気が気ではない。
「私は大丈夫ですから・・アマンド様はお仕事に・・」
「俺の方は何とでもなる。ほら、上がれるか?俺が抱えてやろうか?」
「大丈夫です・・これくらい」
「お、お嬢様!これは一体・・!」
狼狽える護衛のケルヒーに向かって、アマンド様が「ミスチョイスで食べ過ぎた」的な説明をしているのを横目に、私は馬車に乗り込んだ。
そのアマンド様の左腕に抱えられた紙袋の中には、先ほど食べきれなかったポテトのガーリックオイル揚げが大量に入っている。
後から分かったことだが、紙袋に入る料理なら、食べきれない分を持ち帰れるのだ。
最初から分かっていたら、ポテトは最後まで取っておいたのに・・!!
気持ち的には横になりたいが、お腹が苦しくて寝られない。
席に座って、目を閉じた。
「レイリア」
馬車の窓からアマンド様が顔を出している。
「今日はすまなかった、家でゆっくり休んでくれ」
「ええ…アマンド様も、無理しないでくださいね」
私も頑張ったが、アマンド様は意地で、残ったパスタとオムレツを食べ切ったのだ。
「ポテトを、お願いします…」
最後まで食べきれなかった、心残りのポテトを託す。
ポテトはアマンド様が職場に差し入れることになっている。
「大丈夫だ。職場に持っていけば、ものの5秒で無くなるはずだ」
「さすが騎士様ですわね…」
弱々しく笑うと、アマンド様も笑う。
「今日は失敗もあったが、楽しかった。今週末は、お茶会じゃなくて出かけることにしよう」
ん?
「そうだな、11時に迎えに行く。こないだの埋め合わせもまだだしな。それじゃレイリア、また週末に。」
そう言ってアマンド様は馬車から離れる。
「え、あの」「いいぞ!出してくれ!」
馭者に声をかけるアマンド様に、私の声は届くことはなかった。
「キーラ、今日はお夕飯は要らないわ…」
帰宅後、ヨロヨロと歩く私にキーラが目を丸くする。
「お嬢様、何があったんですか?もしや…とうとうアマンド様と一線を越えました!?」
「越えてないわよ…」
満腹の一線を大いに越えた、と言う意味では間違ってないけど。
お腹に力が入れられなくて、どうしても声が弱々しくなってしまう。
「とりあえず部屋に戻って横になりたいわ」
そしてヨロヨロと部屋に向かおうとした時だった。
「レイリア!おかえり!」
お母様がこちらに歩いてくるのが見える。
今日のお母様はミルクティー色の髪をきっちり結い上げている。
そうだ、今日は夜会があるって言ってたっけ。
私の瞳の色はお母様譲りだ。
同じ薄いブルーの瞳を輝かせて、母は私に抱きついてきた。
「あなた、よくやったわ!さすが私の娘!」
感激したような様子の母に目を白黒させていると、手紙を1通、渡された。
金縁のついた上質な封筒は私宛だ。
「お母様、これ、封が開いているじゃないですか…」
「ごめんなさい。だってマルグリット侯爵家の封蝋がしてあったんだもの。何かあったのかと思っちゃったじゃない。」
悪びれもせずにそう言う母に、私は半目になる。
「いつの間にかマルグリット侯爵家のお嬢様とお近づきになっていたなんて、驚いたじゃない!侯爵夫人からのお礼状を頂ける日が来るなんて!ふふ、今日の夜会で、少し話しかけてみてもいいかしら…あら?レイリア?レイリアちゃーん?」
夢見心地の母を置いて、色々限界を迎えた私は、ヨロヨロと自室へ戻っていった。
大量盛りのレストランで食事を終えると、アマンド様が馬車まで送り届けてくれた。
私は満腹すぎてノロノロとしか進めず、彼が休憩時間を過ぎてしまったんじゃないかと気が気ではない。
「私は大丈夫ですから・・アマンド様はお仕事に・・」
「俺の方は何とでもなる。ほら、上がれるか?俺が抱えてやろうか?」
「大丈夫です・・これくらい」
「お、お嬢様!これは一体・・!」
狼狽える護衛のケルヒーに向かって、アマンド様が「ミスチョイスで食べ過ぎた」的な説明をしているのを横目に、私は馬車に乗り込んだ。
そのアマンド様の左腕に抱えられた紙袋の中には、先ほど食べきれなかったポテトのガーリックオイル揚げが大量に入っている。
後から分かったことだが、紙袋に入る料理なら、食べきれない分を持ち帰れるのだ。
最初から分かっていたら、ポテトは最後まで取っておいたのに・・!!
気持ち的には横になりたいが、お腹が苦しくて寝られない。
席に座って、目を閉じた。
「レイリア」
馬車の窓からアマンド様が顔を出している。
「今日はすまなかった、家でゆっくり休んでくれ」
「ええ…アマンド様も、無理しないでくださいね」
私も頑張ったが、アマンド様は意地で、残ったパスタとオムレツを食べ切ったのだ。
「ポテトを、お願いします…」
最後まで食べきれなかった、心残りのポテトを託す。
ポテトはアマンド様が職場に差し入れることになっている。
「大丈夫だ。職場に持っていけば、ものの5秒で無くなるはずだ」
「さすが騎士様ですわね…」
弱々しく笑うと、アマンド様も笑う。
「今日は失敗もあったが、楽しかった。今週末は、お茶会じゃなくて出かけることにしよう」
ん?
「そうだな、11時に迎えに行く。こないだの埋め合わせもまだだしな。それじゃレイリア、また週末に。」
そう言ってアマンド様は馬車から離れる。
「え、あの」「いいぞ!出してくれ!」
馭者に声をかけるアマンド様に、私の声は届くことはなかった。
「キーラ、今日はお夕飯は要らないわ…」
帰宅後、ヨロヨロと歩く私にキーラが目を丸くする。
「お嬢様、何があったんですか?もしや…とうとうアマンド様と一線を越えました!?」
「越えてないわよ…」
満腹の一線を大いに越えた、と言う意味では間違ってないけど。
お腹に力が入れられなくて、どうしても声が弱々しくなってしまう。
「とりあえず部屋に戻って横になりたいわ」
そしてヨロヨロと部屋に向かおうとした時だった。
「レイリア!おかえり!」
お母様がこちらに歩いてくるのが見える。
今日のお母様はミルクティー色の髪をきっちり結い上げている。
そうだ、今日は夜会があるって言ってたっけ。
私の瞳の色はお母様譲りだ。
同じ薄いブルーの瞳を輝かせて、母は私に抱きついてきた。
「あなた、よくやったわ!さすが私の娘!」
感激したような様子の母に目を白黒させていると、手紙を1通、渡された。
金縁のついた上質な封筒は私宛だ。
「お母様、これ、封が開いているじゃないですか…」
「ごめんなさい。だってマルグリット侯爵家の封蝋がしてあったんだもの。何かあったのかと思っちゃったじゃない。」
悪びれもせずにそう言う母に、私は半目になる。
「いつの間にかマルグリット侯爵家のお嬢様とお近づきになっていたなんて、驚いたじゃない!侯爵夫人からのお礼状を頂ける日が来るなんて!ふふ、今日の夜会で、少し話しかけてみてもいいかしら…あら?レイリア?レイリアちゃーん?」
夢見心地の母を置いて、色々限界を迎えた私は、ヨロヨロと自室へ戻っていった。
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