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「それでは、ドーラン法に基づき、ここに判事、申請役所の役人、ドーラン法の専門家、民間人代表として商工会議所幹部、そして議長の私を入れた5名の構成員を召集した。構成員は規定通り男女で構成し、男性3名、女性2名となっている。これに書記を加え、審議を始める。尚、この審議及び議事録は非公開とし、申請者保護のため、構成員の氏名は議事録に記載しないものとする。」

広い会議室にいるのは、私を含めてたった7名。

その中央にいる"議長"は、ずいぶん若い。

20代後半ではないだろうか。

構成員の中でも1番若いが、その所作は人を統べることに慣れていた。

最初に対応してくれた女性の役人さんもいる。

私は静かに感動していた。

いくら私が伯爵令嬢とは言え・・私1人のために、こんなにも多くの人が集まってくれたのだ。

「申請者ロゼッタ バウムハイム、婚約者の氏名と、ドーラン法の救済を申請した理由を述べよ。」

「はい。婚約者はロシュフォード伯爵家の次男、ジェイド ロシュフォードです。申請理由は・・」

握る手にキュッと力を入れる。大丈夫。ちゃんと、証拠があるから。

「理由は、彼の不貞と、魔法による不正な精神干渉が判明したためです」




それから私は自らの境遇について長い話をした。

感情的にならないように、ただ淡々と、自分の身に起こっていることを事務的に話すように努めた。

話すうちに、構成員の人達の視線に憐れみが含まれていくのを感じたが、気づかないふりをして、家族のことも婚約者のことも何もかも、最後まで話し終えた。

「ーー以上が、私が救済を申請する理由です。」

窓の外はすでに日が落ち暗い。

差し出された水を私が飲み干したのを見届けてから、議長が口を開いた。

「それでは、まず不貞の証拠をこちらへ。」

「はい。これに記録しました」

私が机に並べたのは一定時間の吸音と放音が可能な、通称「こだま石」だ。

今朝のジェイド様とのやりとりは10分くらいだっただろうが、この大きさのこだま石だと1つ当たりの吸音は5分が限度。

3つのこだま石はワインレッドに変色しており、それは吸音した状態であることを示していた。

「こだま石?ああ・・そうか、君は魔力が無いんだったな。」

魔力があれば、それこそ簡単な魔法で魔石に映像を記録することができるから、貴族からしたら、こだま石なんて子どものおもちゃ程度にしか思わないだろう。

誰かにお願いして魔石を準備してもらう方法もあったが、他人の魔力を込めた魔石だと、ジェイド様に気取られそうな気がしたから、敢えてこの石を選んだ。

こだま石に衝撃を与えて順に放音させる。

今朝のジェイド様のやり取りと、ついでにあの浮気相手とのやりとりまでバッチリ全て吸音されていた。

証拠の提出の後、満場一致で、私とジェイド様の婚約無効が決議された。
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