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影025
新メンバー
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モリー嬢とのお茶会の後、馬車に乗った殿下をお見送りしようと、影012と並んで控えていると、殿下から声がかかった。
「シークの影につけているのは、お前たち2人だけだったか?」
「はい。」
「では、影をもう1人増やす。シークの警備に加えて、モリーの挙動を見守るように。明日までに今後の警護内容を見直して、人選も済ませよう。025、良いな」
声だけでも、殿下がひどく機嫌が良いのがわかる。
おれは影012と共に馬車を見送ると、一先ず今日が何事もなく終わったことに安堵した。
翌日、殿下から書簡が届いた。
そこには、レジーナ学園に配置する影を1名増員し、計3名でシーク王子とモリー嬢を見守るように書いてあった。
それだけならまだしも…
「モリー嬢は24時間体制!?」
3名で!?
俺のワークライフバランスが音を立てて崩れていく。
日中は学園で過ごし、夜は寝袋を抱えてモリー嬢の部屋の屋根裏で過ごす。
そんな『熱血!隠密24時!』をリアルに体感することになるのか?
俺は暗澹たる気持ちで書簡を読み進めた。
あとは、月1で王太子が学園に来るのでそのサポートをするように書かれていた。
マジか、月1って。
殿下の休日って月1位だろ?
そこをモリー嬢に充てるってこと?
殿下、もしかしてモリー嬢にご執心なのか?
「ねえ、もう1人は誰が来るか書いてあるの?」
影012が、書簡を読みながら考え込んでしまった俺に声をかける。
あぁ、そうだそうだ。
書簡に目を走らせると、最後の方に書いてあった。
『尚、増員分のメンバーは、この書簡を届けた女性隠密とする』
え?
目の前のおっとりしたおばちゃんを見つめると、おばちゃんは品よく微笑み、こう言った。
「お二人とも、よろしくね。影071よ」
「「071!?」」
俺たち影の呼び名の数字は、単なる加入番号などではない。
3桁の数字で所属や位などわかるようになっている。
例えば俺の025。
0は"隠密"を。
2は隠密の中でも特に"情報収集"を専門にしていることを示す。
5は情報収集専門の中でも"5番目の実力"を示す。
つまり、おれは隠密で情報収集を専門にしている中で5番目の実力の持ち主、という意味になる。
影012は隠密の中でも"変装"を得意にしている2番目の実力の持ち主だ。
位としては012の方が上だが、元々俺は影022まで上りつめていたことや、012よりも経験豊富だったことから、今回のチームでは俺がリーダーをしている。
さて、新メンバーとなった影071の話に戻そう。
0は"隠密"、7は"使用人"、1は1番。
そう、影071は執事や召使い、侍女などの使用人スキルのNo.1の実力の持ち主だという事だ。
影012が俺にヒソヒソと話しかけてくる。
「影071って言ったら、他国で侍女長まで務められるほどのスキルの持ち主じゃ無いの?なんで?」
なんでかなんて、俺の方が聞きたい。
最上位の監督クラスはただの7と呼ばれるが、7、070、071は、対国の案件、つまり、国外で活躍する人材であって、国内で従事する072とは実力も仕事の内容も全く違う。
071は、こんな事に駆り出されるような人材ではないのだ。
呆気にとられる俺たちに、影071はまたおっとりと微笑んだ。
「私はモリー様のお屋敷に召使いとして潜入して、夜間から朝にかけての見守りをしましょう。そうすればあなた方は、今までの隠密行動に加えて、登下校時を見守ればいいだけになるわ。私は、土日のどちらかでお休みを頂ければそれでいいから。週末の私がお休みのときはお任せできるかしら」
「「っありがとうございますっ!!」」
ベテランさん、まじで頼りになるっ!ありがたい!
そもそも俺が影022までのぼりつめていたのに降格したのは、その前にやってた隠密行動の拘束時間が長すぎて、それでちょっとメンタルやられちゃって、1ヶ月ほど休んでたからなのだ。
職場復帰のタイミングでシーク王子の影を命じられたのだが、バランスの取れた生活ができるからって、きっと上が配慮してくれて、ここに来れたんだと思う。
3人で毎日ローテ回さないといけないのかと思ったよー。
かくして、新メンバーを迎え、俺たちは2人の警護対象者の見守りを開始したのだった。
「シークの影につけているのは、お前たち2人だけだったか?」
「はい。」
「では、影をもう1人増やす。シークの警備に加えて、モリーの挙動を見守るように。明日までに今後の警護内容を見直して、人選も済ませよう。025、良いな」
声だけでも、殿下がひどく機嫌が良いのがわかる。
おれは影012と共に馬車を見送ると、一先ず今日が何事もなく終わったことに安堵した。
翌日、殿下から書簡が届いた。
そこには、レジーナ学園に配置する影を1名増員し、計3名でシーク王子とモリー嬢を見守るように書いてあった。
それだけならまだしも…
「モリー嬢は24時間体制!?」
3名で!?
俺のワークライフバランスが音を立てて崩れていく。
日中は学園で過ごし、夜は寝袋を抱えてモリー嬢の部屋の屋根裏で過ごす。
そんな『熱血!隠密24時!』をリアルに体感することになるのか?
俺は暗澹たる気持ちで書簡を読み進めた。
あとは、月1で王太子が学園に来るのでそのサポートをするように書かれていた。
マジか、月1って。
殿下の休日って月1位だろ?
そこをモリー嬢に充てるってこと?
殿下、もしかしてモリー嬢にご執心なのか?
「ねえ、もう1人は誰が来るか書いてあるの?」
影012が、書簡を読みながら考え込んでしまった俺に声をかける。
あぁ、そうだそうだ。
書簡に目を走らせると、最後の方に書いてあった。
『尚、増員分のメンバーは、この書簡を届けた女性隠密とする』
え?
目の前のおっとりしたおばちゃんを見つめると、おばちゃんは品よく微笑み、こう言った。
「お二人とも、よろしくね。影071よ」
「「071!?」」
俺たち影の呼び名の数字は、単なる加入番号などではない。
3桁の数字で所属や位などわかるようになっている。
例えば俺の025。
0は"隠密"を。
2は隠密の中でも特に"情報収集"を専門にしていることを示す。
5は情報収集専門の中でも"5番目の実力"を示す。
つまり、おれは隠密で情報収集を専門にしている中で5番目の実力の持ち主、という意味になる。
影012は隠密の中でも"変装"を得意にしている2番目の実力の持ち主だ。
位としては012の方が上だが、元々俺は影022まで上りつめていたことや、012よりも経験豊富だったことから、今回のチームでは俺がリーダーをしている。
さて、新メンバーとなった影071の話に戻そう。
0は"隠密"、7は"使用人"、1は1番。
そう、影071は執事や召使い、侍女などの使用人スキルのNo.1の実力の持ち主だという事だ。
影012が俺にヒソヒソと話しかけてくる。
「影071って言ったら、他国で侍女長まで務められるほどのスキルの持ち主じゃ無いの?なんで?」
なんでかなんて、俺の方が聞きたい。
最上位の監督クラスはただの7と呼ばれるが、7、070、071は、対国の案件、つまり、国外で活躍する人材であって、国内で従事する072とは実力も仕事の内容も全く違う。
071は、こんな事に駆り出されるような人材ではないのだ。
呆気にとられる俺たちに、影071はまたおっとりと微笑んだ。
「私はモリー様のお屋敷に召使いとして潜入して、夜間から朝にかけての見守りをしましょう。そうすればあなた方は、今までの隠密行動に加えて、登下校時を見守ればいいだけになるわ。私は、土日のどちらかでお休みを頂ければそれでいいから。週末の私がお休みのときはお任せできるかしら」
「「っありがとうございますっ!!」」
ベテランさん、まじで頼りになるっ!ありがたい!
そもそも俺が影022までのぼりつめていたのに降格したのは、その前にやってた隠密行動の拘束時間が長すぎて、それでちょっとメンタルやられちゃって、1ヶ月ほど休んでたからなのだ。
職場復帰のタイミングでシーク王子の影を命じられたのだが、バランスの取れた生活ができるからって、きっと上が配慮してくれて、ここに来れたんだと思う。
3人で毎日ローテ回さないといけないのかと思ったよー。
かくして、新メンバーを迎え、俺たちは2人の警護対象者の見守りを開始したのだった。
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