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第4話

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「え、天舞音のやつ今配信中だろ・・・」

『今配信中だけど良いのか?』
俺はそう返した。

意外にも返信はすぐに届いた。
『良いよ、今回は視聴者参加型だから。あと、名前はちゃんと影人闇にしといてね!!』

どうやら天舞音はVtuberとしての俺を参加させたいらしい。
まったく、何を考えてるんだか。

そう思いながらも俺は配信用のアカウントでマリカのオンライン対戦を始めた。
そして、偶然にも俺は天舞音とルームに入ることができた。


これから俺と天舞音とそのリスナーたちレースが始まるのだが全く勝てる気がしない。
なぜならルームに入っている人のレートが半端ないからだ。
基本的にみんな10000前後の猛者ばかり、一番低い人でも7000代だった。

キャラを選ぶ時も、マシンを選ぶ時も、常に自分が最も得意とするものを選んだがどうしても緊張する。

特に心を落ち着かせる間もなく第1レースが始まった。

みんなスタートダッシュに成功したのに対し、俺は緊張のせいかタイミングがずれてしまい大きく出遅れてしまった。
その後も俺は最初よりはマシだが決して速くない走りを天舞音と彼女の視聴者である約15万人に見せつけてしまう。結果はギリギリ11位だった。
もちろん天舞音は1位だった。

最下位をなんとか避けることができて俺は安堵したが、彼女の配信を見るために開いてたタブレット
の画面からあるものを発見した。

それはあるコメントだった。
『今11位だったやつって底辺Vtuberの影人闇じゃね?!』
『あ、知ってるわ。立ち絵とかもヤバいよな!全然動かないしw』
『大して上手くない癖に琴音たんとマリカかよ・・・場違いにも程があるだろ。』

次々に投げ込まれるアンチコメ。
しかも全部俺に対するものだ。
天舞音は悪くない・・・・

俺の目から涙がこぼれる。
ルームから出よう。
そう思って退出のボタンを押しかけた時だった。

天舞音からのメッセージ。
『あんなアンチに負けちゃだめだよ!!だってお兄ちゃんは”最高のVtuber”だから!!!」

最高のVtuber・・・・・・・

思い出した・・・

最初俺がVtuberになった時の目標もこんな感じだった。
そう決意した。

だが現実は甘くなかった。

個人では設備面でも限界があった。
立ち絵なんかも全部自作だった。

でも楽しかったんだ、自分自身の力でやるのが。
たった一人しか配信を見てくれない時もあった。
そんな時でも、俺は笑って、楽しそうにゲームをしたり、雑談したり、歌を歌った。

もう一度、あの頃みたいになれないだろうか・・・・

第2レースが始まろうとしている。
そうだここからだ、俺が『最高のVtuber』になるのは・・・

3・2・1・スタート

今度はうまくスタートダッシュに成功する。
天舞音の視聴者たちとも並んでいる。

アイテムもしっかり使いどころを考える。
狙いも的確に。
ドリフトも、ジャンプアクションもだ・・・

基本中の基本だが、それを極めれば基本的にレート10000ぐらい相手でも戦える。

俺はとにかく攻めの姿勢を崩さなかった。

そしてゴール。

今度は俺は2位だった。
当然の結果だが今回も1位は天舞音だった。

そこからは天舞音が1位なのは変わらず、俺は2位から4位をウロウロしていた。

結局6レースぐらいやったところで配信は終了した。

配信終了後、俺は直接天舞音にお礼を言うために彼女の部屋に向かった。

ノックをすると、ヘッドホンをつけた天舞音がドアを開けた。

「さっきはありがとな・・・あと、急にアンチコメ出させてごめん、俺が下手だったから・・・」

「お兄ちゃんは悪くないでしょ、悪いのは全部お兄ちゃんのことをちゃんと知らないアンチだから!あと、お兄ちゃんは下手じゃなかったじゃん!最高順位2位だったでしょ!!」

「そ、そうか、あ、ありがとう・・・」
なんだ、この俺のことを全肯定してくれる妹は・・・と思いつつ俺は一つ気になっていたことを切り出す。

「なあ天舞音、前から気になってたんだが・・・どうして天舞音は俺のことを『最高のVtuber』って言うんだ?」

「え、いや、その・・・あのね、ちょ、ちょっと待って!!」
赤面した彼女はそう言って突然ドアを閉めてしまった。

すると、俺のスマホに一件の通知が来る。
天舞音からのメッセージだ。

『1時間後、私の部屋に来て!全て話すから・・・』
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