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魔族の村

亜人種

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 ルミティが不敵な笑みを浮かべるも、リーミアの瞳には静かな決意が宿っていた。

 「思っていたよりもずっと早いわね、リーミア……目覚めるのが」
 
 「あら……どうも、私を知っているとは歓迎ね。何処の誰かさん」

 彼女は、軽く笑みを浮かべる、しかし……目覚めたとは言え、万全では無い状況は明確だった。出来れば早めに、今の状況を回避して、体調の回復に勤めたかった。周囲を見るとレウラスが横たわり、更に……彼女の激しい攻撃派による、病院内の人達、患者等が。病室の前に集まって居る状況だった。

 何者かの攻撃により、意識を失われ、自分が病室のベッドに横たわっているまで、記憶が戻るのに少し時間を要してしまったが、直ぐに何者かに寄る暗殺未遂だと気付くのに、それほど時間は 掛からなかった。

 リーミアはベッドの上で上半身を起こした姿で剣を構える。その姿には弱さは微塵も感じられない。空気がピリリと緊張感を増し、二人の間に見えない火花が散る。

 「どうしても……やるのね?」

 ルミティは聖魔剣を鞘から抜かずに振り下ろす、リーミアも同じ様に、聖魔剣を鞘から抜かずに応戦する。暗い室内で2つの聖魔剣が激しく衝突し合った瞬間!

 輝きが部屋全体を包み込んだ。

 「負けない……」リーミアが低く呟くと、二人の聖魔剣がぶつかり合い、部屋全体に轟音が響き渡った。

 バア―ン!

 2つの聖魔剣同士、しかも互いに剣を抜いて居ない状況でありながら、その衝撃波は、病院内の建物を揺らす程の衝撃を与える。

 僅かであるが、院内がグラグラ……揺れて、夜間の勤務に来ていた看護師や、入院患者が驚き慌てふためいた。

 「クッ……」

 リーミアは万全の状況では無かった為、相手の凄まじい衝撃に耐えうる事は難しかった。

 相手のルミティも、初めて手応えある相手と感じたせいか、少し後退りしてしまう。

 (恐ろしいわ……一時的とは言え、毒矢を放って能力を封じられて居るのに、アタシの攻撃を交わせるなんて……これが万全な状況だったら、勝てる可能性は無いに等しいわ……)

 そう思って居ると、リーミアがベッドから降りようとした、しかし……ベッドから降りた彼女は、そのまま床に転げ落ちてしまう。それを見たルミティは、先程の一撃に絶えるのが精一杯だったと感じ取った。

 (今なら勝てる!)

 そう思った時だった。病室内に1人の男性が入って来た。

 「コラッ!君達、何をしてるんだ、ここは病院内だぞ、むやみな決闘は禁止されているんだぞ!」

 「チッ、うるさいわね」

 「何だと貴様、王立病院の院長に逆らうと、王宮からギルド連盟を通して、お前を永久追放させる事だって出来るんだぞ!」

 「ああ、もうウルサイなー!」

 そう言って彼女は波動で相手を病室の入口まで弾き飛ばした。

 幸い、彼が弾かれた先には数人の医者が集まっていて、運良く彼は医者達の中へと放り込まれる様な感じで倒れた。

 「邪魔するから、そうなるよ!命があるだけでも感謝しなさい!」

 そう叫ぶルミティを見て、起き上がろうとするリーミアは一瞬、彼女が何かに獲り付かれているかの様な錯覚を感じる。

 「貴女……」

 それに気付いた彼女は、振り返るなり、リーミアの首を片手で掴んで持ち上げる。

 「死にぞこないの者は黙ってなさい!」

 そのまま、ルミティは彼女をベッドに叩き付け落とす。

 バアンッ!

 「ギャッ……」

 激しい音共にベッドが破壊され、その凄まじい衝撃に耐えきれず、小さな呻き声を発した少女は意識を失った。

 完全に気を失ったリーミアを見るなり、ルミティは震えながら薄気味悪い笑みを浮かべながら笑う。

 「フ……ウフフ……勝った……アタシは、転生少女の王女に勝った……アハハ……」



 その頃……

 王都近郊、一時期魔族の出現で、城壁内を結界に覆われていたマネニーゼ市場は、その後……、魔の森が浄化された事により、結界も解かれいた。

 結界が解かれた事により、悪戯好きな小型の魔物達が市場で、鼠の様な感じで、市場に出現していた。

 そして……小型の魔物とは異なる、魔物とも違う亜人種と呼ばれる物が、夜の市場を散歩していた。

 その者は、市場にある建物の屋根から屋根を飛び回っていた。夜間、降り続いていた雨が止むのを待って、空に雨雲が消え、星々が煌めき、月夜が顔を出してから、その者は夜の散歩に駆り出た。

 「一時期、マネニーゼは、結界を張って入れなかったけど、最近は結界が無くなって自由に散歩出来るな……」

 そう呟きながら、その者は楽しそうに屋根を飛び回る。

 小柄な体系で、見た目は小さな少年の様な感じだった。黒髪で少し褐色のある肌。更に頭部には2本の角を生やし、全身を毛皮の様な物で覆い、手と足には動物の様な爪を生やし、尻尾が生えていた。

 彼は屋根を飛び越えて居ると、ふと……何かを感じた様に立ち止まって、周囲を眺める。

 「妙だな……今日は、随分と瘴気が濃いな……なんだろう?」

 そう思いながら彼は辺りを見渡して居ると、前方から禍々しい気が放たれている事に気付く。

 「な……何だあれは!?」

 その者は急いで、その気が放たれて居る方へと向かう。



 ルミティは気絶し、身動きしなくなったリーミアに近付きゆっくりと、聖魔剣を鞘から抜き出す。

 「さよなら……元リムア姫の生まれ変わりの少女、貴女には何の恨みも無いけわ……ただ、不幸な星の元にうまれてしまっただけ……アタシが苦しまない様に葬って上げる」

 そう呟きながらルミティが彼女に近付こうとした時だった。

 「お待ちください」

 部屋の影から年老いた男性が現れる。

 「なによ?」

 「彼女の命を奪うのでは無く、祭壇に連れて行くようにとの指示です」

 「うるさいわね、どうせなら、ここで息の根を止めてしまえば良いでしょ?」

 「仮にも、この国を救った王女です。我々も彼女の行動には賞賛しております。せめてもの慈悲をと……一同の意見であります」

 「ああ……もう、分かったわよ」

 不機嫌そうにルミティは剣を鞘に入れた。

 「へえ……アンタ、それって。聖魔剣じゃないの?」

 突然、聞きなれない声に気付きルミティは窓の方を見た。月明りの下に、見慣れない風姿の物を見付ける。

 「何者!」

 「まあ、オイラは、ちょっと夜の散歩で、この付近を飛び回ってた者だよ。でもさ……アンタ、聖魔剣て、人間たちが暗黒皇を封じ込める時に使われた『12神光』て言うのがあるから、扱えるのは光側の人間だけだと思ってたけど……。今のアンタの力……それは完全に闇の力だよね?それじゃあ、もし暗黒皇が復活しても、11神光になっちゃうんじゃない?」

 「ええい、うるさい!」

 ルミティは、聖魔剣を鞘から抜いて、剣先から強烈な禍々しい波動を解き放つ。

 炎の様な波動は、窓から上空へと炎の帯が貫き、夜空へと消えた。

 「はあ、はあ……どう、思い知ったかしら?」

 そう呟いた時だった。

 「ふえ……凄いな、おっかねえ……正気の沙汰じゃないな」

 小柄の者はか彼女の隣で、一緒に夜空を眺めていた。

 「貴様!」

 そう言って、彼女は剣を振りかざす。小柄の者はそれを難なく交わした。

 「ルミティ殿、奴は亜人種です。甘く見てはなりません!」

 「何よ……それは?」

 「へえ……そこに隠れて居る爺さん、オイラの事知って居るんだ」

 自分の存在に気付かれた老人は、マズイと思ったのか、影の中に隠れてしまう。

 「亜人種だか何だか知らないけど、アタシに立てつく事は許さないわ!覚悟しなさい!」

 ルミティは、剣先を相手に向ける。

 「ふうん、まあ……勝負するなら、受けて立つとも」

 彼は、そう言うと腰の袋に入れてあった石を1つ取り出す。その石を胸に押し当てると彼の全身が輝き始める。

 「一言伝えておくけど、オイラ相手にするなら全力で来ることだね」

 「言われなくても!」

 バアンー!

 凄まじい衝撃が放たれ、彼の立っていた壁に大きな穴が空き、その向こうに夜の景色が移りこんだ……

 フッと微笑んだルミティは、直ぐに唖然とした光景を目の当たりにする。間違いなく亜人種の者は衝撃波を直撃したのに、相手の者は立っていた。更に目の前に居る者の姿は、最初にみた少年の容姿とは異なり、全身が大きくなり初め、全身が毛で覆われ始める……更に身体には光の幕の様な煌めきが放たれていた。

 「オイラを本気で倒したいなら、神光で勝負するんだね……謎の姉さん!」
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