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更なる試練

夜の宿舎

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 「全く!幾ら祝賀会だからと言っても遅過ぎるわよ!何でこんな夜遅くまで呑んで居たのよ、もう少し早く帰れなかったの?今後は門限を設けて、帰りが遅い時は野宿してもらうからね!だいたい彼方達は……」

 彼等の帰宅を待っていたレネラが腕を組み、お冠状態で立っていて、帰宅して来たアルファリオ達に向かって激しく説教していた。

 既に何度も同じ説教を繰り返し聞かされ続けていた。ある意味、光花の中で最強の人だと彼等は感じていた。

 彼女の怒鳴り声は宿舎に良く響き渡り、3階の寝室で寝ようとしていた、メンバー達が目を覚まして、何事かと驚いて覗き込む程、宿舎内に彼女の声は良く響き渡っていた。

 説教で、少し大声を出し続けたレネラは、少し喉が痛くなり、喋るのを一旦休める。それを見た、へべれけ状態だったエムランが、少し酔いが冷めたのか彼女の側へと寄る。

 「悪かったね、俺達も少し調子に乗り過ぎた。反省してるよ」

 「エムラン……」

 光花随一の問題児である彼が意外な発言をした事に皆は(コイツ裏切ったな)と、感じて見ていた。

 レネラは、意外な人物が自分に寄り添う事に、少し勝ち誇った様な笑みを浮かべた。

 「今後は、レネラも一緒に飲み会に行って、楽しくパーティーを大いに振舞おうぜ!」

 期待とは裏腹な発言に、レネラは思わず「貴様はー!」と、甲高い声で彼女は叫んだ。

 ドスン!

 彼女の渾身の一撃がエムランの、みぞおちへと炸裂。

 「ぐへ……」と、呻き声を洩らしながら彼はそのまま床に崩れ落ちてしまい気を失った。

 「全く、もう……油断も隙もないんだから」

 レネラは両手で埃を叩き落とすような感じで手を叩きながら彼を眺める。そんな一連の動作を見ていた他の者達は、下手に彼女に逆らわない方が身の為だと感じた。

 「ま……まあ、今後は気を付けますね。ハハハ」

 「ウム、素直で宜しい」

 レネラも納得した様に、満面の笑みを浮かべながら頷く。

 「で……では、私達は寝室に戻りますね」

 シャリナや他のメンバー達は、ようやく鉄壁の城塞の様な難所から解放された見たいな安堵感で、寝室のある階段へと向かって行く。

 そんな傍らアルファリオだけが、その場に残ってレネラに声を掛ける。

 「そう言えば、ルーミちゃんは何処にいるのかな?」

 「彼女なら、盟主様と一緒に居ると思うけど、盟主室にまだ居る見たいね」

 レネラは気絶したエムランの両足を持って、重そうに彼を引きずる。

 それを聞いたアルファリオは、一握りの不安を感じて、急いで階段を駆け上がって、最上階の盟主部屋へと駆け込んだ。

 「盟主!」

 息を切らしながら、勢い良く扉を開けた彼はルーミが立って居て、その先にリーミアが座っている光景を目の当たりにして、慌てた様子で彼は「ルーミ!貴様は……」と、思わず叫んでしまう。

 驚いたルーミと、リーミアは一緒に扉の方へと振り返る。

 「ん……どうしたの?」

 キョトンとした様な表情でリーミアはアルファリオの方へと振り返る。

 「え、あれ?」

 彼は、目の前の光景を良く見て呆気に取られる、彼女はリーミアの長い髪を櫛で梳かしていた。

 「終わりましたよ、盟主様」

 ルーミはそう言いながら、リーミアの側を離れる。

 「ありがとうね」

 髪を梳かしてもらったリーミアは、駆け込んできたアルファリオの方を見た。

 「慌てて入って来たみたいだけど、何かあったのかしら?」

 「え、あの……その件ですが」

 彼等の邪魔になってはいけないと感じたルーミが盟主部屋から退出しようとする。その際にアルファリオの側に来た時だった。

 「すまないけど、君の短剣預からせてもらえるかな?」

 「え、これは親の形見です。簡単に手放す事は出来ません、ましてや理由も分からず人に手渡す事など……」

 「理由はいずれ話します。取り敢えず僕に預からせて欲しい」

 「出来ません、でしたら……この場でおっしゃてください」

 「そ……それは、今は、ちょっと言えないですが……」

 「でしたら、私はこれで失礼します」

 「ちょ……ちょっと待ちたまえ!」

 そう言ってアルファリオが立ち去ろうとしたルーミの肩に手を掛けた時だった。

 「アルファリオ!何をしているのですか!」

 普段は穏やかで、決して他人(ティオロを除く)以外に対して怒鳴る様な仕草を見せた事の無いリーミアが立ち上がり、険しい表情を見せていた。

 「他人が嫌がる行為をするなんて貴方らしくありません、何か理由があるならこの場で申し上げてはどうですか?」

 「そ……それは、その……」

 「この場には私達3人しかいません。誰か他に聞かれる心配もありません、どうぞ……思っていることを正直に申し上げて下さい」

 (一番聞かれたくは無い者が、この場所にいるんだよ)

 複雑な心境でアルファリオは無言のまま立っていた。

 「わ……私は、お邪魔見たいなので失礼します」

 そう言ってルーミは部屋を立ち去った。

 広い盟主室の中、リーミアとアルファリオだけになると、彼はセフィーから聞かされた内容の一部始終をリーミアに伝える。

 「……と、言う事です。彼女の疑惑が晴れるまで、短剣を我々が預かり、今後の外出の際は神官剣士の他に光花でルーミを除く誰か1名の付き添いを希望します」

 彼の話が終わると同時にリーミアは軽く頷き、彼の顔を見ながら「却下します」と、一声呟いた。

 「な……何故ですか?」

 「確実に彼女が黒と決まった訳ではありません。それに似た様な話はレンティさんからも聞かされています。もし……彼女が、私の命を狙うのであれば、今の様に何時でも私の命は狙えたでしょう」

 言われて見れば、ルーミがリーミアを狙おうと思えば、幾らでも、その機会は沢山あった。アルファリオは、自分が少し焦っていた事に気付かされる。

 「それに、彼女を光花に招いたのは貴方達ではありませんか?何故、貴方は自分で選んだ人達に対して決闘を申し込んだり、疑ったりするのですか?」

 「あ……いや、これは、その……」

 少し痛い所を小突かれた様な心境でアルファリオは戸惑いの表情をする。彼の表情を見て、リーミアはそれ以上は追及しなかった。

「明日、ルーミちゃんを招いて、改めて皆で話をしましょう。今夜は遅いので、ゆっくり休んで下さい」

 「分かりました、では失礼します。また明日」

 アルファリオは軽く一礼しながら盟主部屋を後にする。

 翌日……

 広い会議室に彼等は集まっていた。

 少し遅れた様子でルーミが会議に向かうと、会議室にはリーミア、アルファリオ、マイリア……の姿があった。

 リーミアはルーミを見るなり「どうぞ、好きな席に座って」と、軽く手を伸ばす。

 たった4名が集まると、リーミアは皆に向かって話を始める。

 「急ではありますが、皆さんにお話しをしたい事がありあます」
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