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更なる試練

暴かれる真実②

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 「別の副盟主って、それって……ルーミちゃんよね、でも……何で、どうして彼女なの?」

 シャリナは震えながら言う。最近入った彼女とは親しく接していて、回復魔法を扱える為、メンバー達の治療も、ナレフの義妹レメミィと3人で仲良くやっていた。

 「嘘でしょ……信じられない……」

 ルファが震えながら言う。魔の森から帰還したルファは、シャリナ程では無かったが、それでも、副盟主である彼女には、色々と世話してもらった。陽気な雰囲気でありながらも知識が豊富な彼女をルファは信頼を寄せていた。

 「なあ……お前はどう思う?」

 ナレフは自分の隣で酔い潰れているエムランに話しかける。

 「はあ……何の事だァ……?」

 「副盟主ルーミの事だよ」

 「知るかよ!浮く銘酒のことなんか!」

 (ダメだ、話が通じてない……)

 ナレフは呆れた様子で彼を見ていた。

 「自分も驚いたさ、まさか彼女だなんて。だがな……彼女を調べて驚いたんだ俺もな……。最初は自分の目を疑ってしまったよ」

 「何か証拠でもあるのか?」

 流石のアルファリオも平然を保って居るが、内心は複雑な気分だった。

 「彼女の資料を調べたんだが……入隊1ヶ月で彼女は金の称号を得ている。光花の盟主、リーミアちゃんでさえ、1ヶ月で金の称号まで辿り着けなかったのに、どうやって彼女は金の称号を得たんだ?魔物だって数千匹倒す必要があるのに、それだけの武器を彼女はどうやって貯蔵していたんだ?」

 その言葉に周囲は沈黙が流れたが、直ぐにシャリナが口を開いた。

 「で……でも、それで彼女が私達を裏切るとは思えないわ」

 「そうかもしれない…だがな、ある聖魔剣の所有者が、古代都市に埋蔵されている聖魔剣を見つけに行ったら、何者かによって盗掘されて居たのを発見したんだ。それは知性の聖魔剣と呼ばれ、あらゆる武器等に擬態出来る武器なんだ……しかも、彼は我々が魔の森で、城の広場に集まった時に、彼の聖魔剣が、何者かが聖魔剣を所有している反応を感じとったが、相手は姿を見せ無かったと言っていた。ちなみに……我等の盟主も、神殿から広場へと来たのだが……その時は聖魔剣を神殿に置いてたとのことだ」

 それを聞いたシャリナは、何も言い返せ無くなる。

 一連の話を聞いたアルファリオも黙ったまま、俯いて考え込んでしまう。

 ルーミが聖魔剣を所有している可能性は濃厚だったが、話を聞いただけで彼女が知性の聖魔剣の所有者と決めつけるのは軽率だと誰もが感じていた。

 「でも.……もし本当に彼女だったなら、味方になってもらえばい良いのではない?」

 シャリナの言葉にセフィーは、彼女の方へと視線を向ける。

 「アンタの言葉も、もっともだが……だが、なら何故彼女は、自分が聖魔剣を持っている事を皆に明かさないのだ?」

 彼の言葉にシャリナが口を閉ざした。周囲からは何とも言えない雰囲気が漂い始めてしまう。そんな雰囲気を打ち消したのはアルファリオだった。

 しばらく考え込んでいた彼は、皆が沈黙したのを見て、自身の意見をセフィーへと向けた。

 「もしかしたら……彼女自身ではないのでは?と……言うか、彼女も関連した何者かが居てルーミちゃんを裏で操っている……と言う見方もあるのではないかな?」

 アルファリオの発言に対して、セフィーは一瞬面食らった様な表情をするが、直ぐに何時もの陽気な雰囲気で笑い出す。

 「実は……俺も同じ事を考えていたんだ!」

 意外な発言に一同は戸惑いの表情を隠しきれずに居た。

 「先ほどの言葉は、君達がどう判断するのか試して見たんだ。まあ……仲間になれば心強いが、現状……そう悠長に構ってられないのが事実だがね」

 「何か、知っている口ぶりに思えるが……セフィー殿」

 アルムが言う。

 「ああ……情報収集して色んな事が分かったさ。今まで俺が話したのは、全て王宮が一枚絡んでいる上での表面上での事だ」

 王宮に関してはセフィーが来る前にアルファリオが皆に話して居たので、おおよその検討は付いていた。しかし……彼の言葉でその考えは革新へと変わった。

 「正直言うと、我々が予想している以上に、王宮の暗躍は相当根が深い。それこそ、誰がどんな牙を隠し持っているのか分からないほどにな……。王宮にとっては、盟主殿の存在は目障りな存在であるのは間違いない。その為、光花を王宮直属部隊に申請させて、光花の自由な行動に規制を掛ける。更に聖魔剣を持つ盟主を狙って、彼女を排除する狙い……だと言う意図までは俺の調べでは分かった」

 「その目的と意図が分かれば良いのだがね……」

 「これは、あくまで俺の憶測の域だが、王宮にとって一番の財源が動くのは、王位継承権競技大会だ。彼等にとって金こそが、一番大事とも言える。その資金の流通こそが王宮を支えて来たのだが……現代に王女が転生してしまった事で、それまで王宮に仕えていた高官達は、王位継承権は無くなり、それまで城を牛耳っていた職務を失ってしまう事になる。それなら……まだ正当な王位を名乗っていない彼女を、早めに潰してしまおうと企むのが、彼等の筋書と……俺は推測している」

 「ま……まあ、あくまで推測の範囲だろ……」

 レトラが愛想笑いしながら言う。

 「ああ、あくまで推測だ。ただ……今から言う事は王宮に仕える者からの情報だが、我が国には2本しか存在しない聖魔剣以外で、王宮に関係した者が何らかの属性の聖魔剣を所有している。ただし……その者の名は、どのギルド集会所にも名が記載されて無かったとの情報だ。そして……それに関わる人物にラーネと呼ばれる女性が深く関与している事までは、分かったんだが……そのラーネが何者なのかまでは不明なんだ」

 「つまり……聖魔剣の所有者に対して、別の聖魔剣で戦わせる事か……いかにも、あの王宮の高官達なら思い付きそうな策だな。それにしても水面下まで、そこまで練られていたとは驚きだな」

 アルファリオが皮肉交じりに言う。

 「ねえ、今の話が本当だとして、一体……聖魔剣て、どれだけ存在するの?」

 「伝承によれば、ラムエリア大陸には全部で12本しか存在しない。その剣にしか含まれてない希少金属で作られいて、それを上手く操る事の出来るのは、王家の人間達で、彼等をエールドラ人と呼ぶ者達がいる。一般の者でも、紋様や鍛錬次第で扱える事が可能だと言われているが、エールドラ人の血統で、血筋の濃い純潔であれば、全ての属性の聖魔剣を扱えると言われている」

 セフィーの話が終えると、少し気分が収まらない様な気持ちではあるが、夜も遅くなりかけ、店も閉めるといわれて彼らは酒場での議論を終えて、お開きにとなり、一同は雨が降る中を駆け足で宿舎へと向かって帰って行く。
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