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更なる試練

褒賞式①

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 7日後早朝……

 エルテンシア城

 その日の早朝、城の中央大広間から少し離れた場所、小さな室内で王国騎士団の幹部達が集まって、毎朝行っている点呼をしてた。

 「城内見回り、異常ありません!」

 「ウム」

 「城周辺、及び近郊異常ありません!」

 「ウム」

 ルセディ将軍が腕を組みながら返事をする。

 「武器庫、厩舎共々異常無しです!」

 「ご苦労!」

 そう返事をすると、幹部の1人が手を上げてルセディに声を掛ける。

 「将軍殿、先日……市場で奇妙な噂を耳にしました」

 「奇妙な噂……?どんな噂だ、それは?」

 「最近、魔族の村と呼ばれる狩場付近を出入りする人達の姿の目撃情報があるそうです」

 それを聞いたルセディは目を閉じて「フムゥ……」と、頷いた。

 「現時点では、詳細が見通せ無いから下手に動くのは禁物だ。各ギルドにも魔族の村近郊への近付きは控える様に忠告を呼び掛けて置く様に」

 「かしこまりました」

 彼は将軍に向かって一礼する。

 その日の点呼が終わると、ルセディは席を立ち上がった。まだ30代を過ぎたばかりの彼は……体が大きく、銀色に輝く甲冑に身を包んでいた。

 自慢の黒塗りの太い槍を武器にしていた。一般の兵よりも掌が大きく、重い槍である為、力の無い者には持ち上げる事さえ困難な武器だった。

 まだアスレイウが代理王に即位する前、隣国とのちょっとした諍いが勃発した時、彼が先陣して、自慢の槍で相手の兵を数十人薙ぎ払う程の剛腕を披露し、周辺諸国にその名を轟かせた。

 点呼が終わると、彼は最年長と思われる老兵と一緒に大広間へと向かう。長い廊下を歩いている時、老兵は彼に話しかけて来た。

 「それにしても閣下は何故、この様な時期に授賞式など開く事にしたのでしょう……しかも市場の小さなギルドグループに対して……この様な歓迎式など、私が兵として城に仕えて数十年……この様な事は初めてですぞ!」

 (まあ……普通のギルドグループでは、こんな大それた事はしないだろう……)

 ルセディは内心そう思いながら、老兵の話しを聞いていた。

 「ジャルサ候、代理王は一体何をお考えなのか……?」

 「例の少女が気掛かりなのだろう?」

 「ム……」

 老兵は、市場の外れでリーミアを見て、その神秘的とも言える能力を目の当たりにした1人だったから、それ以上何も言え無かった。

 老兵の小言が聞こえ無くなると、ルセディと老兵は大広間へと足を運んだ。

 既に数十名以上もの高官、士官、大臣達が広間に列席して居た。王国騎士団の幹部達も列に並び、最前列にルセディと老兵が立ち並ぶ。

 彼等が列に参列して間も無く、ジャルサ候と代理王アスレイウが姿を表し、代理王は階段の途中に設けられた玉座に座り、ジャルサはその下の壇上に立つ。

 城内の中央大広間、城に居る兵達が約1万人収容出来る程の面積があり、常に国の重要課題の時は、高官や大事達を招き、大広間で重大な会議が執り行われていた。その日……高官や大臣達が列席して式を行って居た。

 大広間で行事を行うのは、取り分け城で何か特別な事を意味して居た。

 高官や大臣達は正装された衣装身を包んで居た。大広間に列席して居る階級の高い王国騎士団達も高価な武装した甲冑を着込んで列席して居た。

 彼等が姿を表して間も無く、周囲に響めきが走った。

 大広間の中央部分、玉座へと繋がる真紅の絨毯、広間に列席する時、皆はその中央を隔てて参列し、真紅の絨毯は、来客者が通ったりする為に用意されていた。

 その中央の絨毯の上を大神官アルメトロスが杖を付きながら歩いて来た。滅多に純白城に現れる事の無い彼が姿を表して周囲は驚いていた。

 彼の後ろには、以前大広間で緊急会議のとき、周囲を騒つかせた女神官長であるリーラ、それと男性神官長、更に後方にはサリサを含む数名の神官剣士達の姿があった。

 アルメトロスはジャルサと対面すると、軽く一礼をした。アルメトロスと挨拶を交わしたジャルサは、彼を大臣達の並ぶ例にでは無く、自分と同じ壇上へと手を差し伸べる。

 その動作を受け入た彼は壇上へと進み、他の神官剣士達は、広間の方へと並んだ。

 アルメトロスが大広間の入口に目を向けた。

 高官や大臣達は正装された衣装身を包んで居た。大広間に列席して居る階級の高い王国騎士団達も高価な武装した甲冑を着込んで列席して居た。

 そんな彼等が少し騒ついた様子で、大広間の入口付近に目を向けた。

 彼等の視線先には光花のメンバー達が、明らかに場違いとも思える、民衆の衣装の姿のまま、現れたのだった。

 「ちょ……ちょっと君達、ここは一般人は立ち入り禁止だよ!」

 大広間の護衛役をして居た守備兵が彼等を立ち退かせようとする。

 「その方達は、今日の式にとって大事な客人達であり、我が城にとって大切な者だ。下手な事をすれば……お前さんが職務を失うぞ」

 王国騎士団将軍のルセディが彼に声を掛ける。ルセディの言葉に驚いた守備兵は慌てた様子で「し……失礼しました!」と、言いながら何処かへと立ち去った。

 慌てて護衛役の者は後退りする。彼が引き下がるとルセディがリーミアの前まで来て片膝を付く。

 「ようこそ、お帰りなさいませ。お待ちしてました。どうぞ壇上へとお進み下さい」

 「あ……いえ、私達は空いている所に行きます」

 そう言うと、光花と、偶然城内で会ったフォルサチームの面々は、空いている場所へと参列した。フォルサは少し正装な格好をしていたが、光花や他のメンバー達は、普段の衣装と変わらない格好だった。

 少し場違いな容姿の者達が入れ混じった広間に少し不機嫌そうな表情でジャルサは見ていた。

 (全く……)

 口には出さなかったが、彼はあまり良い感じで見ては無かった。

 「えー……今回は、特別に褒賞式として皆に集まって貰った。その褒賞式とは……」

 「ハクションッ!」

 彼の言葉を遮る様に大きなクシャミをした者がいた。

 ちょうどリーミアの後ろに居たエムランが、大きなクシャミで周囲を驚かせた。

 「エムラン……!」

 「イヤァ……悪ィ、悪ィ……」

 (ウヌ……)

 不機嫌そうな表情で、彼はリーミア達の方を睨み付ける。

 ジャルサは機嫌を取り直して話をし直す。

 「本日は特別な式で、先日魔の森に討伐に行き、見事魔の森を浄化した者が居て……」

 ジャルサが皆に向かって話をしている最中、リーミアとは対面になったフォルサチームと、その方に参列した光花の新人の少年が居た。彼は自分の前に居るアメリが身につけて居る緑色に輝くブレスレットが気になって見て居た。

 「お姉ちゃん、そのブレスレット綺麗だね、ちょっと貸して」

 「あ……後でね」

 「ちょっと、今見たい、貸してよ」

 「ダメよ、後にしなさい!」

 「良いじゃない、貸してよ!」

 そう言って彼が無理矢理取ろうとして来た。

 「チョット止めなさい!」

 それを翻そうとしたアメリと少年はドスンと、絨毯の方へと倒れ込む。

 「あ……」

 2人が気付き周囲を見渡すと参列者の視線が一斉に自分達の方に向けられて居た。

 更に壇上居るジャルサが眉間にシワを寄せながら睨み付けて立っている姿があった。
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