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更なる試練
早朝、会議②
しおりを挟むリーミアが皆に向かって声を掛けた直後だった。
会議室の扉が開き「やあ……ども、ども、遅れました」と、愛想笑いしながら20代位の男性が入って来た。
「遅いぞ!サディラ」
アルファリオが男性に向かって大声で言う。
「いやぁ……ちょっとお手洗いに入ってたら遅くなってしまって……」
サディラと呼ばれた男性は陽気な声で答えた。彼の陽気な振舞いは周囲に居る他の者達にも伝わり、フフフ……と、笑う者も居た。その様子を見たアルファリオは、それ以上彼に対して何も言わなかった。
後ろの壁際へとサディラが行こうとした時、ふと……上座の席に目を向けた時、彼はリーミアの存在に気付いた。
「ほお、貴女が盟主様でしたか!」
彼は、そう呟きながらリーミアが座って居る席の前に立った。
「はじめまして」
「あ……はい、はじめまして」
2人は挨拶を交わす。
「後ろの方に下がれサディラ!」
アルファリオが彼に向かって言う。
「いやぁ……貴女にお会い出来て光栄です」
「そうでしたか、嬉しいです」
リーミアは、愛想笑いしながら答えた。
その瞬間ー。サディラは、ニヤリと笑みを浮かべて右手を腰へと伸ばした。
(へへ……隙あり!こんな少女が盟主なら、ちょっと脅してしまえば簡単だ!)彼は、少女を驚かせて、自分がその勢いでこのグループの盟主になろうと、野心紛いな狙いがあった。
腰に携えた剣の柄を掴もうとする。
しかし……それと同時に、眩い閃光が走った!
オオッー!
周囲から驚きの声が轟いた。
彼の首筋に一際煌めく銀色に輝いた長剣の刃が伸びて居た。
その剣の持ち主はリーミアだった。
会議室に入って来た時、大勢の者達は彼女が、そんな長剣を携えている姿を見てなかった。
初めて彼女の姿を見た者は、短剣から抜き出た剣が、鞘とは比較出来ない位の長さに伸びるなんて全く想像しては居らず、その驚異的とも思える光景に絶句した。
「あ……あれが聖魔剣……」
「噂には聞いて居たが、まさか本当に存在するとは……」
それ以上に、周囲を驚かせて居たのは、その鏡面の様な輝きに以上に、刃から発せられる眩い光の様な発光が放たれている事だった。
どんな優れた魔法剣でも、同じ様な現象は不可能だと思わされる。そんな驚異的とも思える剣の前にサディラと言う人物は成す術は無かった。
その気になれば彼の首を一瞬にして簡単に胴体から切り離す事も可能だった事にサディラ自身驚いた。
その様子を席から見て居た体格の大きい男性は先程アルムが言っていた『あの方に敵う者は居ないよ』と言う意味が分かった様子で唖然として居た。
「今から会議を始めます、この様な場所で流血騒ぎを起こさないで下さい。どうしてもと言うなら、後で訓練場に来れば、幾らでも相手して上げるわよ」
「は……はい」
ハー……ハー……と、呼吸を乱しながらサディラは返事する。
リーミアは、相手に抵抗の意思が無いのを確認すると、聖魔剣を鞘に納める。
サディラはリーミアには敵わないと感じると、アルファリオに先導されて壁際へと向かう。
まるで小さな短剣の鞘に吸い込まれる様に剣が入ると、彼女は会議室に入って来た時の姿で、周囲を見渡す。
「彼の様に、私と相手をしたいと思う方は、遠慮せずに後で訓練場でお相手しましょう。ただし決闘等は禁止します。私はそこまで流血塗れの争いはしたくありませんので……」
彼女は一旦口を閉ざし、少し顔を俯かせると改めて皆の前で話しを始める。
「今日、早朝に皆に集まって貰ったのは、先程純白城から伝文が私宛に届きました。副盟主、宜しければ読んで下さい」
リーミアは、その羊皮紙を隣のアルファリオに手渡すと、彼は快く受けて席を立ち皆の前で声を出して読み始める。
「光花、及び、それに参加した者達への褒賞を王宮広間で行う。魔の森を浄化した光花盟主には大神官から赤金の称号を授ける。以降参加した者達全員1階級格上げとする。他……元帥侯爵に寄る褒賞が用意されるので全員参加するように」
文面を読み終えると周囲はしばらくの間、しん……と静まり返った空気に包まれた、その後、周囲からは小声で話し合う声が響き渡る。
「お……おい、今の話しは本当なのか…?」
「赤金の称号か……噂じゃあ白金並に獲得が難しいらしいと聞いたけど……」
「凄いな……」
「俺、夢でも見てるのかな?」
等と……周囲は驚きと興奮に包まれていた。
「授賞式は7日後ですので皆さん忘れずに出席して下さい!」
周囲を見渡しながら、リーミアは皆に向かって話す。会議室に居る者達はリーミアの言葉を聞き軽く返事をする。その様子を見て彼女は軽く微笑む。
「では、会議を終えます。お疲れ様でした」
リーミアは軽く一礼すると早朝の会議が終えた。
*
ラトム・ギルド集会所
その日、魔物狩を終えたフォルサ達は、受付のレナから奨励金を頂いた。彼等は、そのまま立ち去ろうとした時、レナが彼等を呼び止める。
「ねえ、そう言えば貴方達て……確か魔の森討伐に参加したよね?」
「ああ……そうだけど、何か?」
「純白城から貴方達宛に通達が来て居るわよ」
「お城から……?何だろう?」
レナが奥の事務所に入り、戻って来ると紐が掛けられた羊皮紙を持って来て、彼等に手渡す。
「どうしたの?」
戻って来ないフォルサが気になって、集会所に入って来たティオロとアメリ、それと……最近彼等と同行し始めた青年がフォルサの側へと近付いて来た。
文面に書かれた内容を読んで、フォルサは少し震えていた。
読み終えると同時にガハハ!と大声で笑い出す。
「こいつァ……たまげたぜ全く、おいティオロよ!お前の元彼女また出世したぞ!」
「え、どう言う事なの?」
そう言いながらティオロは、羊皮紙を受け取る。気になったアメリと青年も一緒に文面に目を通す。
「魔の森に参加した我々も、お城に御招待とは元帥閣下も意外と見る目があるな……ところで受付の姉ちゃんよ。俺達に似合う衣装て用意してあるかな?」
その言葉にレナは呆れた表情をしながら溜息混じりに答える。
「貴方……この集会所に通って何年になるの?何故未だ私の名前を覚えてくれないのよ?それに集会所では衣装の貸し出しはしてないわよ。必要だったら自分達でマネニーゼ市場にある店を探してよね」
不機嫌そうな表情を見て、アメリが「と……とりあえず、一旦宿屋に行きましょう」と、皆を連れて集会所を出て行く。
去り際に彼女は「失礼しました!」と、レナに一声掛ける。彼女もアメリに向かって軽く手を振った。
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