134 / 184
魔術師の館
蘇る記憶④
しおりを挟む
それからしばらくして、国務大臣を自身の部屋に招くと、彼はリムアの言葉を聞くなり大声で叫んだ。
「ひ……姫様、まさか本気でやられるのですか?」
「はい、私は本気です」
「しかし……貴女は光の洗礼を受けた身、本来なら光の聖魔剣を扱われるお方なのに……」
「そうですが……私はまだ、光の魔法『浄化』を完全に習得してませんので、墓所に行っても、光の聖魔剣は私を所有者とは認めてくれません、しかし……力の聖魔剣なら、私を所有者と認めてくれれば扱える筈です」
「ですが……光の属性で無い聖魔剣を扱えば、貴女の身も無事では済ませぬぞ」
「その辺の事も考慮してのことです。ある預言者から今の窮地を乗り越えても、更に100年後に大いなる災いが起きると聞いております。それに……私の後、光の紋様を受け継ぐ者も居ません」
「何を言っておられます。良き婿を娶れば良いではありませんか!」
その言葉にリムアは首を横に降った。
「愛し合った者でなければ、継承は難しいです。父は我が母を愛してました。他の兄達の母との関係を退いてまで愛したから、末っ子の筈の私には光の紋様が授かったのです。私は自分にとって大切だった人を失いました。多分……他の人と結ばれても、光の紋様は授からないでしょう。それに既に私は自らの肉体を転生させるための秘術を習得し、今回の窮地と後の災いを阻止させる準備を整えています」
ここ数日間リムアが王立図書館を出入りしてると噂を聞いて大臣も納得した。
「まさか……既にそこまで考えておられるとは……」
少し呆れた様子で大臣は答える。
「もはや何も言いません、ただ……これだけは言わせてください。姫は今でも彼の事を思っているのですか?」
「はい、ずっと___」
「なるほど……」
彼は納得した様子で頷く、もはや彼女の固い決意を変えるのは不可能……そう感じた彼は微笑みながら部屋を出ようとする。
「リムア王女どうか、ご武運を」
大臣は軽く一礼をして部屋を出た。
1人になったリムアは顔を上げて、両手の掌を重ね合わせ胸に押し当てる。
(もし……転生して、運命が再び巡り逢い、彼と出会う時があれば、今度は絶対に……!)
~現在……
(今度は絶対に、もうこの手を離さない!)
リーミアの身体が不思議な光に包まれる。
「め……盟主様?」
リーミアは閉じていた瞳を開けると、何かを悟った様に顔を上げる。
(そう……私は再び彼と巡り逢う為に、この時代に転生したんだ、そして……誓ったんだ自分に……。何があっても彼の手を離さないと)
彼女は意識を取り戻し眠った状態のティオロを見つめる。
「皆……心配かけさせてしまったわね、もう大丈夫よ」
「いえ……平気です」
シャリナは慌てた口調で答える。
「ここから先は、私に任せて」
そう言うとリーミアは額飾りを取り、髪を整え直した。
その時アルムとシャリナは、彼女の額の紋様が光と別の紋様が重なって、全く別の紋様になっている事に気付く。
「任せて……て!まさか盟主殿1人でアイツと戦うのですか?」
その言葉にリーミアは軽く微笑みながら頷く。
「い……幾ら何でも無茶だ!我々だけでは勝てない、仲間が来るのを待っていた方が良い!」
「大丈夫、それよりもティオロを身護っておいてね」
そう伝えると彼女は立ち上がり、ルガンの居る場所へと向かう。
「ちょ……ちょっと!」
アルムが追いかけようとした時、シャリナが彼を引き留める。
「盟主様に任せましょう」
「で……でもよ。シャリナは、本気で勝てると思うのか?」
「分からない、ただ……何だろう?盟主様の後ろ姿を見ていると、まるで何処か異国のお姫様みたいに思えて来るのよ。まるで……私達を守ってくれる大きな盾みたいに感じるわ」
シャリナは期待に膨らんだ表情で、リーミアを見つめていた。
ルガンの側まで近付いたリーミアはフッと軽く微笑んだ。
「何ダ、貴様ハ遂ニ気デモ狂ッタカ?」
「貴方は私が倒します」
その言葉にルガンはガハハと……大笑いする。
「今マデ勝テナカッタ奴ガ良ク言ウ!」
「そう……今まではね……」
そう呟くとリーミアはスウ……と深呼吸すると、右腕を上に伸ばして「来い!」と、一言叫ぶ。
*
彼女の言葉を聞いた力の聖魔剣は、アスレイウと交戦中のルディアンスの腰元から光を放ち、そのまま何処かへと飛び去って行く。
「ナ……何ダ?エ……一体何ガ起キタンダ?」
突然の出来事にルディアンスは戸惑った様子を見せた、自分の腰に携えていた聖魔剣が無くなって居る事に気付くと、周辺を探す。
その仕草を見ていたアスレイウは笑いながら彼に向かって言う。
「ふ……どうやら、聖魔剣は所有者の元へと向かった様だな」
*
館の地下を探しているサリサ、アスファード達を追い掛けているメンバーの1人、ルビィが、廊下の窓ガラス付近を走っている時……光る何かを見つけて立ち止まった。
「どうしんだ?」
「今……何かが横切ったんんだ」
「流れ星か?」
「分からないけど、地面に潜って行ったような?」
「地面に潜る流れ星なんか無いよ、目の錯覚だ」
「そうかな……?」
そう言いながら、皆は再び館の中を走り出す。
*
リーミアが叫んで、わずか数秒の間だった。彼女の元に聖魔剣が飛んで来た、リーミアは自分の手元に飛んで来た短剣を受け止める。
「しばらくぶりね、戻っきてくれてありがとう。早速だけど……お願い私に力を貸して」
リーミアは鞘に軽く唇を押し当てる。
力の聖魔剣が、ドクンドクンと脈打ち鼓動する。力の聖魔剣を手にした彼女は右側の腰に携えると、左右両方の手で剣の柄を握り締める。
(我に力を……)
そう心の中で呟くと、スッと両方の剣から研ぎ澄まされたかの様に凄まじい銀色に輝く長剣が抜き出される。
二つの聖魔剣の刃からは眩い程の光が灯されていた。
「さあ……お遊びの時間は終わりよ。覚悟しなさい!」
「ひ……姫様、まさか本気でやられるのですか?」
「はい、私は本気です」
「しかし……貴女は光の洗礼を受けた身、本来なら光の聖魔剣を扱われるお方なのに……」
「そうですが……私はまだ、光の魔法『浄化』を完全に習得してませんので、墓所に行っても、光の聖魔剣は私を所有者とは認めてくれません、しかし……力の聖魔剣なら、私を所有者と認めてくれれば扱える筈です」
「ですが……光の属性で無い聖魔剣を扱えば、貴女の身も無事では済ませぬぞ」
「その辺の事も考慮してのことです。ある預言者から今の窮地を乗り越えても、更に100年後に大いなる災いが起きると聞いております。それに……私の後、光の紋様を受け継ぐ者も居ません」
「何を言っておられます。良き婿を娶れば良いではありませんか!」
その言葉にリムアは首を横に降った。
「愛し合った者でなければ、継承は難しいです。父は我が母を愛してました。他の兄達の母との関係を退いてまで愛したから、末っ子の筈の私には光の紋様が授かったのです。私は自分にとって大切だった人を失いました。多分……他の人と結ばれても、光の紋様は授からないでしょう。それに既に私は自らの肉体を転生させるための秘術を習得し、今回の窮地と後の災いを阻止させる準備を整えています」
ここ数日間リムアが王立図書館を出入りしてると噂を聞いて大臣も納得した。
「まさか……既にそこまで考えておられるとは……」
少し呆れた様子で大臣は答える。
「もはや何も言いません、ただ……これだけは言わせてください。姫は今でも彼の事を思っているのですか?」
「はい、ずっと___」
「なるほど……」
彼は納得した様子で頷く、もはや彼女の固い決意を変えるのは不可能……そう感じた彼は微笑みながら部屋を出ようとする。
「リムア王女どうか、ご武運を」
大臣は軽く一礼をして部屋を出た。
1人になったリムアは顔を上げて、両手の掌を重ね合わせ胸に押し当てる。
(もし……転生して、運命が再び巡り逢い、彼と出会う時があれば、今度は絶対に……!)
~現在……
(今度は絶対に、もうこの手を離さない!)
リーミアの身体が不思議な光に包まれる。
「め……盟主様?」
リーミアは閉じていた瞳を開けると、何かを悟った様に顔を上げる。
(そう……私は再び彼と巡り逢う為に、この時代に転生したんだ、そして……誓ったんだ自分に……。何があっても彼の手を離さないと)
彼女は意識を取り戻し眠った状態のティオロを見つめる。
「皆……心配かけさせてしまったわね、もう大丈夫よ」
「いえ……平気です」
シャリナは慌てた口調で答える。
「ここから先は、私に任せて」
そう言うとリーミアは額飾りを取り、髪を整え直した。
その時アルムとシャリナは、彼女の額の紋様が光と別の紋様が重なって、全く別の紋様になっている事に気付く。
「任せて……て!まさか盟主殿1人でアイツと戦うのですか?」
その言葉にリーミアは軽く微笑みながら頷く。
「い……幾ら何でも無茶だ!我々だけでは勝てない、仲間が来るのを待っていた方が良い!」
「大丈夫、それよりもティオロを身護っておいてね」
そう伝えると彼女は立ち上がり、ルガンの居る場所へと向かう。
「ちょ……ちょっと!」
アルムが追いかけようとした時、シャリナが彼を引き留める。
「盟主様に任せましょう」
「で……でもよ。シャリナは、本気で勝てると思うのか?」
「分からない、ただ……何だろう?盟主様の後ろ姿を見ていると、まるで何処か異国のお姫様みたいに思えて来るのよ。まるで……私達を守ってくれる大きな盾みたいに感じるわ」
シャリナは期待に膨らんだ表情で、リーミアを見つめていた。
ルガンの側まで近付いたリーミアはフッと軽く微笑んだ。
「何ダ、貴様ハ遂ニ気デモ狂ッタカ?」
「貴方は私が倒します」
その言葉にルガンはガハハと……大笑いする。
「今マデ勝テナカッタ奴ガ良ク言ウ!」
「そう……今まではね……」
そう呟くとリーミアはスウ……と深呼吸すると、右腕を上に伸ばして「来い!」と、一言叫ぶ。
*
彼女の言葉を聞いた力の聖魔剣は、アスレイウと交戦中のルディアンスの腰元から光を放ち、そのまま何処かへと飛び去って行く。
「ナ……何ダ?エ……一体何ガ起キタンダ?」
突然の出来事にルディアンスは戸惑った様子を見せた、自分の腰に携えていた聖魔剣が無くなって居る事に気付くと、周辺を探す。
その仕草を見ていたアスレイウは笑いながら彼に向かって言う。
「ふ……どうやら、聖魔剣は所有者の元へと向かった様だな」
*
館の地下を探しているサリサ、アスファード達を追い掛けているメンバーの1人、ルビィが、廊下の窓ガラス付近を走っている時……光る何かを見つけて立ち止まった。
「どうしんだ?」
「今……何かが横切ったんんだ」
「流れ星か?」
「分からないけど、地面に潜って行ったような?」
「地面に潜る流れ星なんか無いよ、目の錯覚だ」
「そうかな……?」
そう言いながら、皆は再び館の中を走り出す。
*
リーミアが叫んで、わずか数秒の間だった。彼女の元に聖魔剣が飛んで来た、リーミアは自分の手元に飛んで来た短剣を受け止める。
「しばらくぶりね、戻っきてくれてありがとう。早速だけど……お願い私に力を貸して」
リーミアは鞘に軽く唇を押し当てる。
力の聖魔剣が、ドクンドクンと脈打ち鼓動する。力の聖魔剣を手にした彼女は右側の腰に携えると、左右両方の手で剣の柄を握り締める。
(我に力を……)
そう心の中で呟くと、スッと両方の剣から研ぎ澄まされたかの様に凄まじい銀色に輝く長剣が抜き出される。
二つの聖魔剣の刃からは眩い程の光が灯されていた。
「さあ……お遊びの時間は終わりよ。覚悟しなさい!」
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる