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魔の森、攻略!
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パカラ、パカラ……
蹄音を鳴らしながら白馬がコテージの方へと走って来る。馬の鞍には見慣れ無い人物が跨っていた。
その様子を見て、サリサは不思議そうな表情で白馬を見つめた。白馬を良く見ると、その馬が先程出発したアーレスが乗っていた馬に何処か似ている事にサリサは気付く。
彼女が立っている側まで白馬が来ると、ヒヒーンと嗎を上げながら、前足を大きく上げて跨っていた旅人を振り落とした。
「うわ!」
ドスンッ!
旅人は地面に叩き付けられる様に尻もちを付いた。
「イテテ……何て乱暴な駄馬だ。全く……」
旅人の男性は、腰を撫でながら起き上がる。
「駄馬だなんて……この馬は、しっかりと調教されているのよ」
そう言いながらサリサは、白馬の手綱を握りながら優しく馬の頭を撫でる。
「はあ?俺が、西にある休憩小屋へと向かおうとしたら、この馬が言う事を聞かなかったんだぞ」
それを聞いたサリサはクスッと笑った。
「だからよ……最初から、この付近まで乗る様にすればよかったのに……。この馬は厩舎に戻る様に、しっかりと躾けられていたのよ」
「はあぁ……?何だそれは?」
旅人は呆れ返った様な表情で答える。
よく見ると、結界で少し見えなくなっているコテージの側に、別の魔法効果で取付けられてある扉が見えた。その扉の向こう側には何十頭もの馬の姿が見えた。
サリサが白馬の手綱から手を離すと白馬は厩舎の中へと向かって行く。
「ところで……貴方は一体誰なの?何故……あの馬に乗っていたの?」
「俺は、レムリア大陸の各国を旅している者だよ。たまたま……この付近を歩いていたら、近くの物騒な森の近くで、見知らぬ青年と少女が、森に入ろうとしていて……。その時、青年が今乗っていた馬を俺に貸してくれたんだよ。まさか……こんな風な躾がされているとは思わなかったよ。全く……あの風変わりな格好した青年め!」
その話を聞いたサリサは、彼の話している人物が、アーレスとリーミアだと知る。
「そうだったの……」
彼女は返事をして、彼等の安否を少し気遣った。
「サリサさん」
アーレスとリーミアの事を思っていると……彼女を呼ぶ声が聞こえた。サリサが顔を振り向くと既に数名のメンバー達が、甲冑を身に纏い、荷物を掲げて、出発の準備を整えていた。
「何時でも出掛けられますぜ!」
エムランが元気良く声を掛ける。
「そ……そうなの、分かったわ!」
肝心なサリサは、旅人の相手をしていて、まだ準備をして居なかった事に気付き、慌ててコテージの中へと入って行こうとする。
「ご……ごめん、少しだけ待っていてね!」
そう言われてエムランが少し呆れた様子で待っていると、フォルサ、レトラ、アルム、ティオロ……の男性陣が集まって来た。
旅人は、自分よりも体格が大きな連中が武装した状態で、集まっている様子に少し驚いた。その中の1人は、先程道案内をしてくれた人物だった。
(あの男性も、ここに集まっているメンバーだったのか!)
旅人は少し震えながら見ていた。アルムは、肩や両腕、胸、腰、脛に防具を取付、両手の甲には鋭い形をした鉄の爪が装着していた。近接戦闘で敵を仕留める戦いが得意そうな雰囲気を感じさせていた。
「おや……?」
アルムが、旅人の姿に気付く。
「どうしたんだ?」
フォルサがアルムの側に近付き声を掛ける。
「いえ……ただ、あそこに居る人……」
アルムは鉄の爪を装着した手で、自分達から少し離れた位置に居る、少し見窄らしそうな男性を指して言う。
「何だアレは?何で……ここに一般人が居るんだ?」
フォルサの言葉に気付いたエムラン、レトラ、ティオロまでもが、旅人の方へと視線を向ける。
「へえ……ここに一般人が居るとはね……」
銀色の甲冑に身を包んだエムランが面白そうにニヤついた表情で旅人の方に視線を向ける。
「あ、あわわ……」
彼は少し震え出した。目の前の男性達は、ほとんどが腰に剣を携えていた。普通に戦ったら間違いなく斬り殺されてしまいそうだった。それ以上に、相手は自分よりも力もありそうな程に逞しそうに感じられた。
部が悪いと感じた彼は、一目散で……この場から逃げようと思った。
その時だった……
「お待たせー」
離れた位置から、黄色の爽やかな声が響いて来た。
男性陣達の側に、品格のある美しい女性達が武装したり、ローブに身を包んだりして現れた。
「遅過ぎるぞ!」
エムランが女性達に言うと、彼女達は不機嫌そうな表情をする。
「うるさいわね。女性は身だしなみが大切なのよ!そんな事言っていると、女性に嫌われるわよ。全く……」
「シャリナ、およしなさい。元々……女性に嫌われている人に対して失礼でしょ。いちいち気にしていたら、美容にも影響してしまうわよ。ま……低脳な害虫には近付か無い事が一番ね」
ルフィラがエムランに対して、この上無い位の皮肉を言う。それに対して彼は悔しそうな表情でルフィラを睨み付ける。
「クヌゥ……コイツゥ」
歯軋りしながら震えていると、彼の肩を叩きながらレトラが立ち寄る。
「辞めて置け、色んな意味でお前に勝ち目は無い」
その様子を見ていた旅人は、状況が良く把握出来ずに見ていた。取り敢えず、自分では無く女性達の方に彼等の視線が向けられているうちに、この場を去ってしまおうと考えた旅人は、皆に気付かれ無い様に走り出した。
「何か、良く解らないけど、このまま逃げ去ってしまえ!」
そう言って、彼が走り出して表参道の道へと向かった直後だった。
「ひいい……!」
彼は目の前の光景に対して思わず腰を抜かしてしまい、慌てて来た道を戻て行く。
その頃……
コテージ前では、ルフィラに対してエムランが激しい形相で見ていた。
「以前から思ってたんだよな。どうも貴様とは一度真剣に勝負しようと考えていたんだ。おい貴様、今、ここで決着を付けようぜ!」
エムランは腰に携えた剣を抜き、刃先をルフィラに向ける。
「宿舎以外で、しかも非公式の場で決闘するのは御法度よ。貴方の行動に応じたら、私もギルドを追放される可能性があるわよ。それにね……貴方に貴様呼ばわりされる理由は無いわよ」
「んなこたあ関係ねえ、決闘するのか、しないのか!どっちなんだー!」
その直後!
上空から魔法の球が、エムランに向けて放たれた。
ボンッ!
「グハッ……」
軽い呻き声を放ちながら、彼は地面を転がって行き気を失う。
「え、な……何、今の?シャリナ、アメリ……貴女達なの?」
ルフィラが慌てた様子で彼女達を見るが、2人は顔を蒼白した様子で首を横に振るう。
「違うわ。まるで……空から、魔法の球が放たれた様子だったわ……」
アメリが上空を指して呟く。
「え……?」
アメリの言葉に、全員が空を見上げた直後だった。
「何だあれは!?」
ティオロが大声で叫んだ。
上空から旋回しながら飛行している影があった。
その影が彼等の前へと降り立つ。
目の前に現れたのは先程厩舎に戻った、白馬に良く似た翼の生えた天馬だった。その天馬に跨り、黄金色の杖を片手に持ち、気品を漂わす品格のある甲冑に身を包んだ美しき女性の姿があった。
彼女は彼等に対して軽く微笑みながら、天馬から降りると……軽く一礼をする。
「初めまして光花の皆様……私は神殿の女神官長を努めますリーラと言う者です。以後……お見知り置きを」
彼女は軽く一礼をしただけであるが……その仕草は優雅だった。
「女神官長……て?」
ティオロは不思議そうな表情で呟いた。彼の側に立っていたルファが話し掛ける。
「神殿で、神官剣士の職務で最高位の称号よ。実力なら……代理王と互角以上と言っても過言では無いわね」
2人の会話を聞いていたアメリが間に割って入る感じで話し掛けて来た。
「女神官長て、全ての女性の憧れの存在よ。相当な実力も必要とされているけど……運も良く無いと、まず、その職務には就く事さえ不可能なのよね……あの、サリサさんて言う人が就いている副神官剣士さえも、難しいと言われているわ」
「そんなに凄い人が何故ここに?」
「そんな事、私も知ら無いわよ」
ルファは少し呆れた口調で答える。
「お待たせ、遅くなってしまったわね……て、あれ?」
コテージから出て来たサリサが、目の前にリーラが居る事に気付くと、慌てた様子で彼女の前に片膝を付いた。
「お……お早う御座います女神官長様、何故……ここへ?」
「顔を上げて下さいサリサ」
リーラは、そっと手を差し伸べながらサリサを立たせる。
「色々と王都周辺で騒ぎが勃発し始めたのよ。早急に貴女達を帰還させる様、神殿から言われて、兵達を少し借りて出発して来たのよ」
「兵達を……?」
サリサが不思議そうな表情で答えると、遠くから「ひええー……」と、叫びながら旅人が走って来た。
「おい、な……何だ、あれは?」
旅人の方を見たフォルサは、思わず大声を出しながら、平原を隠す程の集団を見て驚く。
「神官剣士と王国騎士団達よ」
リーラが平然とした口調で答える。彼女の言葉に対して周囲は呆然とした様子だった。目の前に現れた集団は数千もの数はありそうな程であった。
ザッ……ザッ……ザッ……
一方は青色の衣に灰褐色の武具を身に付けた神官剣士の集団で、もう一方は、黒色の衣に銀色の甲冑を身に纏った王国騎士団の集団だった。
彼等は同じ歩幅で行進しながら、コテージのある方へと進行して来た。
実際に彼等と手合わせした訳では無かったが……彼等の1人当たりの実力は、ギルドの称号なら銀以上は確実と言えた。そんな彼等が集団で、この場に現れた事に対して、皆は驚きを隠せなかった。
平原を進行していた騎士団達の中から1人だけ、こちらに向かって来る者が居た。
黒い馬に跨り、銀色の甲冑に身を包んだ大男の姿があった。
彼は、皆の前に近付くと、馬を降りて軽く一礼をする。
「初めまして、光花の皆様。私は今回、臨時でこの騎士団の指揮を任されたロムテスと言います」
突然の事に対して、サリサを含む光花のメンバー達は皆、唖然とした表情をしていた。
蹄音を鳴らしながら白馬がコテージの方へと走って来る。馬の鞍には見慣れ無い人物が跨っていた。
その様子を見て、サリサは不思議そうな表情で白馬を見つめた。白馬を良く見ると、その馬が先程出発したアーレスが乗っていた馬に何処か似ている事にサリサは気付く。
彼女が立っている側まで白馬が来ると、ヒヒーンと嗎を上げながら、前足を大きく上げて跨っていた旅人を振り落とした。
「うわ!」
ドスンッ!
旅人は地面に叩き付けられる様に尻もちを付いた。
「イテテ……何て乱暴な駄馬だ。全く……」
旅人の男性は、腰を撫でながら起き上がる。
「駄馬だなんて……この馬は、しっかりと調教されているのよ」
そう言いながらサリサは、白馬の手綱を握りながら優しく馬の頭を撫でる。
「はあ?俺が、西にある休憩小屋へと向かおうとしたら、この馬が言う事を聞かなかったんだぞ」
それを聞いたサリサはクスッと笑った。
「だからよ……最初から、この付近まで乗る様にすればよかったのに……。この馬は厩舎に戻る様に、しっかりと躾けられていたのよ」
「はあぁ……?何だそれは?」
旅人は呆れ返った様な表情で答える。
よく見ると、結界で少し見えなくなっているコテージの側に、別の魔法効果で取付けられてある扉が見えた。その扉の向こう側には何十頭もの馬の姿が見えた。
サリサが白馬の手綱から手を離すと白馬は厩舎の中へと向かって行く。
「ところで……貴方は一体誰なの?何故……あの馬に乗っていたの?」
「俺は、レムリア大陸の各国を旅している者だよ。たまたま……この付近を歩いていたら、近くの物騒な森の近くで、見知らぬ青年と少女が、森に入ろうとしていて……。その時、青年が今乗っていた馬を俺に貸してくれたんだよ。まさか……こんな風な躾がされているとは思わなかったよ。全く……あの風変わりな格好した青年め!」
その話を聞いたサリサは、彼の話している人物が、アーレスとリーミアだと知る。
「そうだったの……」
彼女は返事をして、彼等の安否を少し気遣った。
「サリサさん」
アーレスとリーミアの事を思っていると……彼女を呼ぶ声が聞こえた。サリサが顔を振り向くと既に数名のメンバー達が、甲冑を身に纏い、荷物を掲げて、出発の準備を整えていた。
「何時でも出掛けられますぜ!」
エムランが元気良く声を掛ける。
「そ……そうなの、分かったわ!」
肝心なサリサは、旅人の相手をしていて、まだ準備をして居なかった事に気付き、慌ててコテージの中へと入って行こうとする。
「ご……ごめん、少しだけ待っていてね!」
そう言われてエムランが少し呆れた様子で待っていると、フォルサ、レトラ、アルム、ティオロ……の男性陣が集まって来た。
旅人は、自分よりも体格が大きな連中が武装した状態で、集まっている様子に少し驚いた。その中の1人は、先程道案内をしてくれた人物だった。
(あの男性も、ここに集まっているメンバーだったのか!)
旅人は少し震えながら見ていた。アルムは、肩や両腕、胸、腰、脛に防具を取付、両手の甲には鋭い形をした鉄の爪が装着していた。近接戦闘で敵を仕留める戦いが得意そうな雰囲気を感じさせていた。
「おや……?」
アルムが、旅人の姿に気付く。
「どうしたんだ?」
フォルサがアルムの側に近付き声を掛ける。
「いえ……ただ、あそこに居る人……」
アルムは鉄の爪を装着した手で、自分達から少し離れた位置に居る、少し見窄らしそうな男性を指して言う。
「何だアレは?何で……ここに一般人が居るんだ?」
フォルサの言葉に気付いたエムラン、レトラ、ティオロまでもが、旅人の方へと視線を向ける。
「へえ……ここに一般人が居るとはね……」
銀色の甲冑に身を包んだエムランが面白そうにニヤついた表情で旅人の方に視線を向ける。
「あ、あわわ……」
彼は少し震え出した。目の前の男性達は、ほとんどが腰に剣を携えていた。普通に戦ったら間違いなく斬り殺されてしまいそうだった。それ以上に、相手は自分よりも力もありそうな程に逞しそうに感じられた。
部が悪いと感じた彼は、一目散で……この場から逃げようと思った。
その時だった……
「お待たせー」
離れた位置から、黄色の爽やかな声が響いて来た。
男性陣達の側に、品格のある美しい女性達が武装したり、ローブに身を包んだりして現れた。
「遅過ぎるぞ!」
エムランが女性達に言うと、彼女達は不機嫌そうな表情をする。
「うるさいわね。女性は身だしなみが大切なのよ!そんな事言っていると、女性に嫌われるわよ。全く……」
「シャリナ、およしなさい。元々……女性に嫌われている人に対して失礼でしょ。いちいち気にしていたら、美容にも影響してしまうわよ。ま……低脳な害虫には近付か無い事が一番ね」
ルフィラがエムランに対して、この上無い位の皮肉を言う。それに対して彼は悔しそうな表情でルフィラを睨み付ける。
「クヌゥ……コイツゥ」
歯軋りしながら震えていると、彼の肩を叩きながらレトラが立ち寄る。
「辞めて置け、色んな意味でお前に勝ち目は無い」
その様子を見ていた旅人は、状況が良く把握出来ずに見ていた。取り敢えず、自分では無く女性達の方に彼等の視線が向けられているうちに、この場を去ってしまおうと考えた旅人は、皆に気付かれ無い様に走り出した。
「何か、良く解らないけど、このまま逃げ去ってしまえ!」
そう言って、彼が走り出して表参道の道へと向かった直後だった。
「ひいい……!」
彼は目の前の光景に対して思わず腰を抜かしてしまい、慌てて来た道を戻て行く。
その頃……
コテージ前では、ルフィラに対してエムランが激しい形相で見ていた。
「以前から思ってたんだよな。どうも貴様とは一度真剣に勝負しようと考えていたんだ。おい貴様、今、ここで決着を付けようぜ!」
エムランは腰に携えた剣を抜き、刃先をルフィラに向ける。
「宿舎以外で、しかも非公式の場で決闘するのは御法度よ。貴方の行動に応じたら、私もギルドを追放される可能性があるわよ。それにね……貴方に貴様呼ばわりされる理由は無いわよ」
「んなこたあ関係ねえ、決闘するのか、しないのか!どっちなんだー!」
その直後!
上空から魔法の球が、エムランに向けて放たれた。
ボンッ!
「グハッ……」
軽い呻き声を放ちながら、彼は地面を転がって行き気を失う。
「え、な……何、今の?シャリナ、アメリ……貴女達なの?」
ルフィラが慌てた様子で彼女達を見るが、2人は顔を蒼白した様子で首を横に振るう。
「違うわ。まるで……空から、魔法の球が放たれた様子だったわ……」
アメリが上空を指して呟く。
「え……?」
アメリの言葉に、全員が空を見上げた直後だった。
「何だあれは!?」
ティオロが大声で叫んだ。
上空から旋回しながら飛行している影があった。
その影が彼等の前へと降り立つ。
目の前に現れたのは先程厩舎に戻った、白馬に良く似た翼の生えた天馬だった。その天馬に跨り、黄金色の杖を片手に持ち、気品を漂わす品格のある甲冑に身を包んだ美しき女性の姿があった。
彼女は彼等に対して軽く微笑みながら、天馬から降りると……軽く一礼をする。
「初めまして光花の皆様……私は神殿の女神官長を努めますリーラと言う者です。以後……お見知り置きを」
彼女は軽く一礼をしただけであるが……その仕草は優雅だった。
「女神官長……て?」
ティオロは不思議そうな表情で呟いた。彼の側に立っていたルファが話し掛ける。
「神殿で、神官剣士の職務で最高位の称号よ。実力なら……代理王と互角以上と言っても過言では無いわね」
2人の会話を聞いていたアメリが間に割って入る感じで話し掛けて来た。
「女神官長て、全ての女性の憧れの存在よ。相当な実力も必要とされているけど……運も良く無いと、まず、その職務には就く事さえ不可能なのよね……あの、サリサさんて言う人が就いている副神官剣士さえも、難しいと言われているわ」
「そんなに凄い人が何故ここに?」
「そんな事、私も知ら無いわよ」
ルファは少し呆れた口調で答える。
「お待たせ、遅くなってしまったわね……て、あれ?」
コテージから出て来たサリサが、目の前にリーラが居る事に気付くと、慌てた様子で彼女の前に片膝を付いた。
「お……お早う御座います女神官長様、何故……ここへ?」
「顔を上げて下さいサリサ」
リーラは、そっと手を差し伸べながらサリサを立たせる。
「色々と王都周辺で騒ぎが勃発し始めたのよ。早急に貴女達を帰還させる様、神殿から言われて、兵達を少し借りて出発して来たのよ」
「兵達を……?」
サリサが不思議そうな表情で答えると、遠くから「ひええー……」と、叫びながら旅人が走って来た。
「おい、な……何だ、あれは?」
旅人の方を見たフォルサは、思わず大声を出しながら、平原を隠す程の集団を見て驚く。
「神官剣士と王国騎士団達よ」
リーラが平然とした口調で答える。彼女の言葉に対して周囲は呆然とした様子だった。目の前に現れた集団は数千もの数はありそうな程であった。
ザッ……ザッ……ザッ……
一方は青色の衣に灰褐色の武具を身に付けた神官剣士の集団で、もう一方は、黒色の衣に銀色の甲冑を身に纏った王国騎士団の集団だった。
彼等は同じ歩幅で行進しながら、コテージのある方へと進行して来た。
実際に彼等と手合わせした訳では無かったが……彼等の1人当たりの実力は、ギルドの称号なら銀以上は確実と言えた。そんな彼等が集団で、この場に現れた事に対して、皆は驚きを隠せなかった。
平原を進行していた騎士団達の中から1人だけ、こちらに向かって来る者が居た。
黒い馬に跨り、銀色の甲冑に身を包んだ大男の姿があった。
彼は、皆の前に近付くと、馬を降りて軽く一礼をする。
「初めまして、光花の皆様。私は今回、臨時でこの騎士団の指揮を任されたロムテスと言います」
突然の事に対して、サリサを含む光花のメンバー達は皆、唖然とした表情をしていた。
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