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魔の森、攻略!
2人の男性達
しおりを挟むリーミアは約1ヶ月と数日振りに宿舎に戻って来た。しばらく振りに宿舎の前に立ち建物を眺める。出入り口前には門番役の神官が立っていた。初めて見る顔の男性だった為リーミアは軽く神官に挨拶をしてから、玄関のドアを開けた。
宿舎に入って直ぐの受付にレネラが居て、彼女に「ただいま」と、軽く挨拶をする。
「あら、お帰りなさいー!」
レネラは嬉しそうな表情で明るくリーミアに挨拶を交わす。
リーミアは入って直ぐの広間に目を向けると、知らない若い男性の姿があった。彼は昼間から果実酒を飲んでいて、テーブルに足を乗せながら椅子に座っていた。
「リーミアちゃん、元気そうだったわね。良かったわ」
レネラは嬉しそうに近付きながら声を掛ける。
「ええ、何とか無事戻る事が出来ました」
リーミアは愛想笑いしながら答える。
そう話していると、階段をドスドスと足音を立てながら体格の大きい男性が現れて、果実酒を飲んでいる男性に近付く。
「おーい、レティウよ。お前……銀貨500枚貸してくれるって言ったろう。数えたら全然足りねえぞ」
「知るかよアデル、テメエが数え間違えたんだろ?ケ……」
その光景を見ていたリーミアはレネラに向かって話す。
「なんか……知らない間に、色んな人が増えた見たいね」
「ちょっと、人選を見誤った見たいで……面談の時は普通の感じだったのよ……」
「そうだったの……?ところで……何時から宿舎内で個人間で金銭の貸し借りの許可を与えたの?」
「彼等の金銭の貸し借りは知らなかったわ。私も今回が初めて見たわ」
レネラが申し訳無さそうな表情で話す。
宿舎を設ける時、個人間での金銭の取引は禁止するのは、ギルド集会所での手続きの際にも担当から注意されていた。
彼女達が話していると、体格の大きいアデルと言う名の男性がリーミアに気付き近付いて来た。アデル言う者を見ると……赤毛の髪をして、アゴヒゲを生やし、少し褐色の入った肌をした50代位の男性だった。
「お、何だ……お前は?ここは精鋭揃いのグループだぞ、お前みたいな小娘が安易に立ち寄る様な場所じゃねえんだぞ!それとも……男を探しに来たのかね?へへへ……」
彼の振る舞いを見たレティウと言う男性も、リーミアに気付き椅子から降りて近付く。
レティウと言う人物は、細目で、長髪をしていた。身体はアデルと比べると細身で肌は白く、頭にターバンを巻いていた。
「ふうん……まあまあ可愛いじゃない。俺の彼女になれば、ここのグループに居させてやるぜ。どうだ?」
「ヘヘヘ……良いね。俺達の彼女に成れば、毎晩可愛がってやるぜ!」
「見たところ、まだ胸も小さいね。そんなんじゃ男が近寄らねえか……まあ、顔は可愛いけどな……」
彼等はヘラヘラと笑いながら喋っていた。
「ちょ……ちょっと貴方達、彼女が誰だか知って言っているの?この娘は……ッ!」
レネラの言葉を遮る様にしてリーミアはスッと手を伸ばした。
「アデルさんに……そちらはレティウ……さんね、まあ……見た目は良い感じだけど、それほど強い感じがしないわね」
リーミアは、クスッと微笑みながら言う。
「何ィー!」
「なんだとー……!」
2人の男性は見知らぬ少女の発言に対して苛立ちを見せる。
「良かったら、そちらの練習場で腕比べしましょう。私に勝てたら、何でもしてあげるわよ」
「よし、乗った!その言葉絶対に忘れるなよ!」
アデルが意気込みながら答える。レティウも彼に同意して2人は練習場へと向かう。
練習場へと向かったリーミアは木剣を持たず立っていた。
「なんだ貴様、練習用の道具は使わないのか?」
「必要ないわ、貴方達同時に掛かって来なさい」
リーミアの発言に対して苛立った2人は、「コノォー!」と、叫びながら2人同時にリーミアへと襲い掛かる。
しかし……リーミアは避ける事も無く、2人が振り下した木剣を左右両手で軽く受け止め、そのまま2つの大きな体を後方へと投げ飛ばした。
「グワッ……」
一瞬にして、彼等は、体勢を崩して横たわる。
「な……なんだ、これは?」
「う、うそだろ……」
まるで、見えない何かに弾き飛ばされた様な感じで、彼等は呆気に取られた。
「どう、少しは目が覚めたかしら?今後、この光花に在籍するのなら、真摯に振る舞う事ね。あと……貴方達が私に対した失言は、後で反省文として提出させて貰いますから……」
そう言ってリーミアが立ち去ろうとした時だった。レティウがリーミアの態度に対して怒りが込み上げて来て、腰に携えた剣を抜き取り後方から勢いよく攻めて来た。
「コノヤローッ!」
彼の動作を瞬時に察知したリーミアは振り返ると同時に、聖魔剣を抜き出した。
ヒュンッ
キンッ!
風切り音が聞こえ、金属音が交わる音が響くと同時に、レティウの剣が鍔の先が無くなっている事に気付く。
「へ……あれ?」
周囲を見回すと、自分の足元に折れた剣先が落ちていた。
更にレティウとアデルは、目の前の少女が、何時の間に現れたのか分からない不思議な長剣を手にしている姿に驚く。
「信じられん、アイツの剣は鋼で作られた名剣だったのに……。それを飴を切る様に簡単に折ってしまうなんて……。それ以上に……彼女は、何時から剣を手にしていたんだ?少なくとも……我々と一緒に居る間は長剣を持っていなかった!」
眩い銀光を放つ剣をリーミアは、そのまま短剣の鞘へと収める。その時……彼等は不思議な長剣が鞘に吸い込まれる様な感じで収まるのを見た。
「あれは……まさか、聖魔剣?」
アデルは怯えながら呟く、それと同時にハッとある事に気付いた。
(もしかして、あの少女は!)
リーミアは真剣な眼差しでレティウを見た。
「レティウさんでしたね。いくら宿舎内でも真剣を用いての行為は許されませんよ、今回は大目に見ますが、次にこの様な行為をするなら脱退してもらいますから……」
「く……、貴様、何故俺に命令するんだ?」
「何故って、それは……」
「盟主だからだ!」
突然、アデルがリーミアの言葉を遮って言う。彼は起き上がった姿でレティウを見ていた。
「な……なんだって?」
「今、彼女が手にした剣は、紛れもなく聖魔剣だ。お前は気付かったのか?」
それを聞いてレティウは、入隊時の事を思い出した。
入隊時……彼はアルファリオから色々と説明を聞かされた。その時、彼が最後に一つ忠告をして来たのを思い出す。
『現在、光花は盟主が留守にしています。と……言うのも聖魔剣を手に入れる為不在です。しばらくすれば戻って来ますので、その時は挨拶をお忘れなく』
それを思い出し、とんでも無い行為をしてしまった事に気付いたレティウは、リーミアに対して平伏し頭を地面に付けた。
「盟主とは知らず、御無礼してしまい、失礼しました!」
アデルも片膝を付いて「御無礼、申し訳ありません」と、頭を下げて深く礼を述べる。
それを見たリーミアは特に表情を変える事なく2人を見つめた。
「反省しているなら構わないわ。まあ……直ぐに私が盟主だと気付けただけでも、今回の行為は許します。以後……光花の仲間達と共に精進してください」
その言葉に2人は「はいッ!」と、強く返事をする。
「ところでレティウさん」
「は……はい、なんでしょうか!」
彼は顔を上げてリーミアに向かって返事をする。リーミアはレティウに近付く。
「貴方の大事な剣を折ってしまったので、私の声の掛かった武器屋があるから、あとで一緒に行きましょう。購入代金は私が出しますので」
「あ、ありがとうございます!」
彼は喜びながら深く礼をした。改めてリーミアは、新規入隊の男性達を見つめながら練習場を後にして宿舎内へと戻る。
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