上 下
79 / 184
魔の森、攻略!

反逆者、転生少女

しおりを挟む
 シュウーッ……

 転移石を使って、王都の市場まで帰還したリーミア達は、転移した場所が王都の外側の城壁周辺だった事に驚いた。
「あらぁ……?市場の中央辺りに来る様にしたのに……何でこんな外れなのかしら?」

 女性神官は不思議そうな表情で言う。

「まあ……戻れたし、取り敢えず中に行きましょう」

「それはそうだけど……」

 リーミアの言葉に対して、少し気になる女性神官は何やら納得のいかない表情だった。

 城壁付近まで辿り着くと、男性神官が、城壁周辺に手を差し伸べて何かを感じ取る。

「なるほど……結界が強化されているね」

 その言葉に女性神官は「やっぱり!」と、男性神官に対して返事をする。

「どうしたの?」

 少し先を歩いていたリーミアが振り返って、神官達に話し掛ける。

「王都周辺の城壁一帯に強固な結界が張られたんですよ。だから……僕達は、市場の中央では無く、城壁の外側に転移されたんです」

「そうだったの……」

 リーミアは少し納得した表情で答える。

「でも……こんな事、今までで無かったわよね」

「そうだね、市場や城などで、何か事が起きたとしか予想が付か無いな……」

「何か事って……?」

 リーミアは首を傾げながら言う。

「例えば……魔物が市場に現れた……とか?」

 男性神官が言うと、リーミアは「ええ!」と、大声びながら震え出す。

「まあ、例えば……の話ですよ。実際は、市場に戻って皆から話を聞かなければ分から無いです」

 と……彼は愛想笑いしながら話す。
「そ……そうですね」

 リーミアも一緒に愛想笑いしながら答えた。

 彼等は城壁の門を潜り抜けて、市場へと歩いて行く。

「そう言えば……何故、墓所に向かうのは、歩きだったの……?」

「聖魔剣と言うのは、強力な魔法剣でもあり、その所有者を見極める術が施されているのです。それを扱うに相応しい者かどうか……を試す為に、祠に来るまで魔術を用い無かった……等、試しているのです。実際……リムア姫も歩いて、祠まで行ってテリオンの剣を手にしたそうです。安易な気持ちでは、決して聖魔剣は手にでき無い……と言う意味でもあります」

「そうなのね……」

 リーミアは自分の腰に携えた短剣を改めて眺める。

 彼等が話しをしながら歩いていると、何処からか怒声が聞こえて来た。

「お前、そこにあるのは一体何だ!」

 彼等は驚いて、市場の裏側にある場所に目を向けると、王国騎士団が民家の住人に対して、怒りをぶちまけていた。

「ねえ……あれは一体何をしているの?」

 リーミアは不思議な表情をしながら神官達に向かって囁く。

「何やら危険な物を所持していた用ですね、あまり関わらない方が良いですよ。王国騎士団に目を付けられると、色々と厄介ですから……」

「ねえ、行きましょう」

 そう言って、彼等はその場から離れて行こうとした時だった。

「あ……あれ?リーミア様?」

 振り返ると、自分達と一緒に行動していたリーミアの姿が見えなくなっていた。

「まさか!」

 彼等が戻って見ると、民家のある方へと彼女は向かって行った。

「り……リーミア様!」

 神官達は慌てふためきながら叫ぶ、彼等は王国騎士団に手を出すと、厄介な事になるのを知っていたので、下手に近付けなかった。

「お取り込み中、すみません……」

「何だ……貴様は?」

 甲冑を身に纏った騎士が、民家の男性の胸ぐらを掴んでいるのを見て、リーミアはそっと……騎士団の手を掴んだ。

「この方が、何か悪い事でもしたのでしょうか?」

「不審者を連れて来いと言う命令だ。コイツは以前から怪しかったから、調べて見たら……やはり物騒な物を沢山収集していた。だから……コイツをこれから王宮の牢獄へとぶち込むんだ。邪魔するな!」

「お……おやめください。私達は生活が貧しく、お金を稼ぐために主人は、色んな物を集めて働いているのに……彼が居なくなると私達は……」

 女性の側には、まだ幼い子供達が居た。

「そんな事知るものか!恨むんだったら、妙な物を集めるコイツを恨むんだな!」

 その時だった。リーミアは騎士団の腕を掴み上げる。

「な……何、貴様……!」

「彼等の話しをしっかり聞いたらどうですか?」

「き……貴様、我らの邪魔をすると、どうなるのか知っているのか!」

「さあね、どうなるのかしら?」

「我等、王国騎士団に楯突くとな……!」

 彼女は、グイッと騎士団を片手で投げ飛ばした。

「グアッ……!」

 騎士団が倒れている隙に、彼女は民家の夫婦に近付き、彼等の手に何か渡す。

「え……?」

 夫婦達は、リーミアから何か受け取った。その直後だった。騎士団は起き上がると、「こやつめー……」と、逆上しながらピーと、笛を吹いた。

 すると、笛の音を聞いた付近に居た騎馬隊の騎士団がドドド……と馬蹄を響かせて駆け寄って来た。

「あの少女は、我等に楯突く反逆者だ!」

 投げ飛ばされた騎士団が言うと、他の騎士団は馬から降りて、リーミアを取り囲む様に集まり、全員が彼女に向けて槍を突き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD
ファンタジー
 半世紀ほど前、ブリガント帝国は未曾有の危機に陥った。  その危機を救ったのは一人の傭兵。  その傭兵は見たこともない数々の道具を使用して帝国の危機を見事に救い、その褒美として帝国の姫君を嫁に迎えた。  その傭兵は、その後も数々の功績を打ち立て、数人の女性を娶り、帝国に一時の平和を齎したのだが──  そんな彼も既に還暦し、力も全盛期と比べ、衰えた。  そして、それを待っていたかのように……再び帝国に、この世界に魔の手が迫る!  そんな時、颯爽と立ち上がった少年が居た!彼こそは、その伝説の傭兵の孫だった!  突如現れた漆黒の翼を生やした自称女神と共に、祖父から受け継がれしチートを駆使して世界に迫る魔の手を打ち払う!  異色の異世界無双が今始まる!  この作品は完結済の[俺のチートは課金ショップ?~異世界を課金アイテムで無双する~]のスピンオフとなります。当たり前ですが前作を読んでいなくても特に問題なく楽しめる作品に仕上げて行きます

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

冥界の仕事人

ひろろ
ファンタジー
冥界とは、所謂 “あの世” と呼ばれる死後の世界。 現世とは異なる不思議な世界に現れた少女、水島あおい(17)。個性的な人々との出会いや別れ、相棒オストリッチとの冥界珍道中ファンタジー この物語は仏教の世界観をモチーフとしたファンタジーになります。架空の世界となりますので、御了承下さいませ。

処理中です...