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聖魔剣奪還

訓練所(1)

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 ー翌日、早朝

リーミアは朝起きて、ケイレムの寝室へと向かった。彼の部屋に入るとケイレムはまだ起きていなかった。

「おはよう」
「あ、おはようございます……」

リーミアの挨拶で目を覚ました彼は、起きあがろうとした彼は、体中が痛くて上手く起き上がれなかった。

「イテテ……」
「どうしたの?」
「てへ……どうやら筋肉痛の様です。昨日、ちょっと頑張りすぎました」
「そんなに魔獣と戦ったっけ?」
「4体位相手にしましたね」
「それで筋肉痛なの?」

リーミアは不思議そうな表情で言う。

「盟主……貴女と他の一般人と同格にしない方が良いですよ。僕の中では結構頑張った方なんですよ……」
「そうだったの、気がつかなくてごめんなさい。体調が万全になるまで休んでいて」
「すみません、ありがとうございます。しばらく休みませて頂きます」

そう言うと、リーミアは階段を降りて広間へと向かう。

リーミアが降りて来たと気づくとルナが「おはようございます。王女様お待ちしておりました。どうぞこちらへ」と、他の利用客から外されて、彼女専用のVIPルームへと案内させる。

「本日の朝食は厳選素材を使った地場野菜に、我が宿に特別待遇で呼び寄せた、腕利きの良いシェフの自慢の手料理です。勿論味付け等は折紙付きです。是非とも王女様の口に合えばとご用意致しました」

ルナはそう説明すると、ホールで働いている者に、出来上がった料理を運ばせる。
出来立ての香りの良い食事をリーミアは食べた。

「美味しいですね」

その言葉にルナは大喜びする。
食事が終わる頃、彼女は本日調理担当のシェフを紹介する。
身体が大きく逞しそうな地黒の男性がリーミアに挨拶しに来た。

「王女様に喜んで頂きとても光栄です」
「あの……まだ、王女では無いですけど……」

リーミアは少し困った表情で愛想笑いしながら答えた。
朝食を済ませると、リーミアは外出する為の準備を行う。

「お出掛けですか、今度は何時頃お戻りになりますか?」

ルナが彼女に尋ねて来た。

「一応今日戻る予定です。しばらくは、宿を利用しようと思っています」
「分かりました。では……その様に準備してます。どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」

ルナがリーミアを見送りすると、彼女はギルド集会所へと向かう。集会所に着くと、入り口に神官の衣装に身を纏った若い男女2人が立っていた。
彼等はリーミアに気付くと、深くお辞儀をして挨拶する。

「おはようございます。リーミア様」
「お早う御座います」
「我々はサリサ剣士副長官の御命令により本日から、貴女の護衛を付き添わせて頂くことになりました。自分はレーメと言います。以後……宜しくお願いします」

「私はラティと言います。宜しくお願いします」
「分かりましたわ。よろしくお願いね。あと……昨日グループになってくれたレトラとシャリナと……言う方がいるけど……見当らないから、多分……集会所の中ね、ちょっと呼んでくるから待っていてください」
「はい」

彼等を外に置いて、リーミアが中に入ると、集会所の中が騒がしかった。

ガシャーンッ

何かが砕ける音が響いた。

「テメエ、よそ者の分際が、どう言う了見で物を言ってやがるー!」

昨日グループに入ったレトラが大男に絡まれて、騒動を起こしていた。彼の側にはシャリナが居た。

「どうしたの、何があったの?」

リーミアはシャリナの近くへ行き、彼女に尋ねる。シャリナはリーミアに気付くと慌てふためきながら話す。

「あ、盟主様、実は……我々が盟主様を待って居る時に、あちらの大男が、集会所の張り紙を見て、貴女の事を罵倒したのです。転生者の能力が封じられて、更に魔法剣も盗られたものだと……それを聞いたレトラが、彼に怒ったのです。そしたら……」

それを聞いたリーミアが、なるほど……と頷き、「任せて」と、シャリナの肩を軽く叩きレトラと大男の側へと行く。

「おやめ下さい、こちらの方は私の仲間です。文句なら私が直接聞きます」

それを聞いた大男がリーミアを見る。

「ほお、役立たずの盟主さんのお出ましか」
「盟主、コイツは、貴女の事を悪く言ったんですよ」
「話は聞きました。有り難う。私のことを庇ってくれて、あとは……私に任せてください」
「へ……使えねえ盟主が現れたところで何も怖くは無い。お前なんか、この俺が一握りで倒せてしまうぜ!」
「本当に一握りで倒せるかしら?」
「何ー!」

大男は、大きな握り拳を勢い良くリーミアに放つ。……が、彼女は避ける事なくその拳を掌で受け止めた。その振る舞いに周囲は「おおッ!」どよめきが走った。
彼女は唖然とした大男を椅子に座らせ、彼の身だしなみを整えさせる。

「私達は今から魔獣討伐に行くので、これで失礼するわね」

一瞬、何が起きたのか理解出来無かった大男はハッと我に返り、リーミアを睨みつける。

「こ……このぉ!変な術で交わしたんだろう、俺の目は誤魔化されんぞ、テメエはどうせ魔法剣も奪われたんじゃなくて、魔剣士が怖くて命乞いしながらヤツにくれたんだろう?」

聖魔剣の悪口を言われて流石のリーミアも我慢しきれなく震え出した。

「へ……悔しかったら、正々堂々勝負しろ、俺がテメエをぶちのめしてテメエが結成したグループの権限も俺が奪ってやるぜ!」
「そこまでいうなら、公式で勝負出来る場所を案内させなさい、貴方の言う事が正しいかどうか、その目に焼き付けてやるわ!」
「公式でなくたって、ホラ集会所では、訓練場があるぜ……そこによ」

大男が軽く指を指しながら言う。

「訓練所なら力比べが出来る場所だ、流血塗れの決闘は許されないが、相手との勝負は許されるぜ、どうだ……やるのか、やらないのか?」
「良いでしょう、やりましょう」
「め……盟主!」
「少しお待ちください。直ぐに終わらせますので」

そう言うと彼女は上着を脱ぎ、レトラに杖と上着を持たせる。

「おう、さっさと来やがれ小娘め!」

大男は先に訓練所に行き、リーミアが来るのを待っていた。
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