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聖魔剣奪還

魔獣討伐(1)

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~数分前…

サリサと一旦離れたリーミア、アーレス、ケイレムは魔獣の近くへと向かう。眠っている魔獣の近くには先に討伐に集まって待機しているメンバー達の姿があった。

「やあやあ…皆さんお待ちどうさま」
「遅いぞ!」

大柄の男性剣士が待ちくたびれた様子で少し苛立っていた。

「まあ、そう怒らないで、主催者は今日が初の討伐だからね、穏便に見て欲しい。では…彼女に少し色々説明しながらやるから、少し待ってね」

そう言い、アーレスはメンバーを見渡した。集まっているのは魔術師2名、弓使い1名、槍持ち2名、剣盾持ち2名…の前7名だった。

「ふむ…ケイレム君を入れると前衛3名で、関節3名、後衛2名か…まあ、良いでしょう。リーミアちゃん、この構図をよく覚えておきなさい」
「はい、ところで私は何をすれば、良いのですか…?」
「ちょっと待ってね」

アーレスは魔術師達の方へと向かう。魔術師は1人は男性、もう1人は女性だった。

「君達は、魔術は攻撃と回復どちらですか?」
「僕は攻撃」
「私も同じです」

それを聞いたアーレスがリーミアの方へと戻って来て、「君は今回は回復と補助だけしていてね」と、言う。

「はい、分かりました」

それを聞いてたケイレムが不思議そうな表情をした。

「今回は…て、え?盟主の基本ポジションは何処なのですか?」
「彼女は攻守1対型だよ。何処でも任される。今は魔法剣がないから、大人しくして貰っているが、剣術なら君よりも遥かに上だよ。まあ…この程度の魔獣なら1人でも大丈夫だが、いずれは軍団を率いて総指揮を行う為にも今のうちにチームの役割分担を教えておこうと思ってね…」

「そう…なのですか?軍団の総指揮って…盟主はそんなに凄いのですか?」
「平均的な能力は高いと思うよ。ちなみにケイレム君は、リムア姫の伝説は知っているかな?」
「あ、勿論知っています。この国の人なら、知らない人は居ないかと思いますが…」
「もし…その転生した人が、今、君の目の前に居たらどう思う?」
「それは凄いことだと…」

その時、彼はハッと気付いた。

「え、も…もしかして?」

彼の顔を見て、アーレスが軽く微笑みながら頷く。

「そう言う事だよ。まあ…彼女には、討伐は後ろで大人しくして貰おうと思っている。リーミアちゃんが前衛に出たら、君達の活躍の場がなくなってしまうからね…」
「そんなに強いのですか?」
「武器が無くても彼女は、君を吹き飛ばす位の技があるから」
「あ…あの、アーレスさん…」

リーミアが、彼の後ろで困った表情しながら立っていた。

「あまり新入りの方を怖がらせないで下さい。せっかく入ったのに、離脱されると困りますので…」
「ああ、すまないね…一応、聞いた情報を伝えただけなので…あ、ちなみに情報提供者は君の友達のティオロ君だよ。初めての出会いの時に弾き飛ばされた…てね」
「アイツめ…!」

リーミアは少し悔しそうに魔法の杖をギュッと握りしめた。
その表情を見たケイレムは(何があったのだろう?)と、不思議な表情で彼女を見た。
彼等の話が終わると、アーレスが配置を行う。前衛は剣盾持ちを配置、関節には槍持ちを配置して、後衛には魔術師、弓使いを配置した。

リーミアは魔術師と同じ位置で、回復と補助を行うようにした。

「では…剣士さん達、攻撃開始して下さい!」

アーレスが声を掛けると、メンバーの中で、一番階級が上の者が魔獣を攻撃する。

グオオー!

攻撃と同時に魔獣が目を覚まし、起き上がって剣士を襲い掛かるが、リーミアの攻撃補助魔法で、位置が固定され身動き出来ず、その場から剣士達を薙ぎ払う様な動作で暴れ回る。
更に、槍と弓、攻撃魔法の乱れ打ちが行われ、魔獣はダメージを蓄積される。

グオオー!

魔獣の雄叫びが周囲に響き渡る。

「始まったのね!」

少し離れた位置から見護っているアーレスの側にサリサが駆け寄って来た。

「王女様は…大人しくしている見たいね」
「予想以上だよ」
「何が…ですか?」

「魔獣が完全に身動き出ない位に完全に固定されている。階級が低い魔術師だと、一定時間で魔術が解かれたり…動きを抑えるのに必死なのに、まるで魔獣を子供の様に完全に抑え着けてしまっている…」
「相変わらず規格外の能力ね、これじゃあ実戦訓練にもならないわね…」

彼等は将来有望の我が子を見る様な目でリーミアを見つめていた。

「それはそうと…害虫はどうだったの?」
「仕留め損ないました。相手は隙を見て逃げ出してしまいました」
「そうか…まあ、追い払う事が出来ただけでも良かったよ」
「ただ…収穫はありました」
「へえ、それは何?」
「今回現れた人物はルディアンスとは別の魔剣士でした」

その言葉を聞いたアーレスがピクッと反応した。

「それは、本当か?」
「はい、相手がそう言ってました」
「なるほど…」

そう言うと、アーレスは顎に手を当てながら少し考え込む。

「どうかしましたか?」
「いや…少し考え過ぎかもしれないが…彼等を率いている者はメヌザと言う、闇の魔術を崇拝している老婆ばかりだと思っていたんだ」
「それは私も同じです」
「ただ…その老婆は、今までで中々尻尾を見せなかったのだが、何故今回は、その様な失態を見せたんだろうと思って…」
「失態…ですか?」

「リーミアちゃんを仕留めるなら、別の魔剣士では無くルディアンスに任せれば、向こうの手の内も読めなかったと思う。なのに…別の魔剣士に来させたと、なると…彼等は既にチームで行動していると、あらかさまに言っている様なもの…」
「なるほど…言われてみれば確かに」
「まあ…今回の事で迂闊にリーミアちゃんに近付けられないと判断して、別の行動を取ると予想出来る。ただ…奴等が聖魔剣を集めるとしても、レンティ占星術師の話ではエルテンシア国には2本しか存在しないと言われているから、諸外国に足を運んで集めるのだろうと思うけど、一体どうやってそれを実行するのだろうね」

「同じ魔剣士を集めて、彼等に聖魔剣を奪わせる…てことかしら?」
「そう考えるのが必然的だけど、聖魔剣と言っても、セルティスとテリオンの様に、紋様を受け継ぎし者に適応した物と、契約のみで扱える物の2種類がある。彼等はそれを知って実行しているのだろうかね?他の紋様を授かりし者に対して、国を滅ぼしたいから手を貸してと言うのだろうか?そんな野心家に神が神秘的な力を授けるとは思えない…。その辺のことを知って彼等は行動しているのか…?」

「どちらにしても、もう一度対面する必要はありますね」
「多分、今回の事で奴等は、しばらく姿を現さなくなったと思う。まあ…奴等が次にどう行動するかで、こちらも相応の準備をしようと思う」
「そうね、この場であれこれ議論し合っても解決には到らないからね、今はリーミア様の出世だけを見届けましょう」

そう言っていると、目の前の魔獣がグオワーッと唸り声を上げながら横たわった。
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