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王位継承権への道
帰還
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馬車が進むと次第に彼等は純白城を目の当たりにする。その城を取り囲むように城壁が見えて来た。市場に戻るとフォルサ達一同は数日振りギルド集会所に顔を出した。本来なら湿地帯の主まで倒して意気揚々と凱旋する筈が、リーミアの落ち込んだ様子に集会所に居る人達は不思議な表情をしていた。
受付担当のレナは狩場での報告や、敵の遺品等を受け取り、ギルドの事務所に鑑定を依頼した。しばらくして鑑定結果が報告された。一番の功労者はリーミアで、水晶の称号を授与された。
「たった一週間ちょっとで、ここまで特進出来るなんてすごいわね」
レナは驚きながらリーミアに水晶のペンダントを差し上げる。
「ありがとう…」
暗い表情で、リーミアはペンダントを受け取る。
「どうしたの?もっと喜びなさいよ?」
「はい…」
俯きながら、彼女は近くの椅子に腰を降ろした。
その傍らで、フォルサがカルファに声を掛ける。
「なあ、お前…水晶の称号を受け取るまで、どれ位掛かった?」
「俺は3年以上だったかな?水晶の称号を頂いた時は、嬉しくてはしゃいだけどな…フォルサは?」
「俺は…4年半だった。授与された時、当時の仲間と一緒に盛大にパ―ティをして一夜を過ごしたんだが…」
そう話している横でアメリが「ウウ…」と、哀しそうな表情をしていた。
「どうしんだ?」
「私、ギルドに登録してもう3年になるのに、まだ灰色の称号なのよ。なのに、あの子は私よりも階級が上に行ってしまったわ…」
「まあ、仕方ないさ…あんなハチャメチャな戦い方だったら、直ぐに金の称号まで行けてもおかしくはないさ」
その傍らで、フォルサはリーミアを見た。
(今後は苦しい戦いになるだろうけど…)
レナが他のメンバーの報告に来た。
「フォルサさんとカルファさんは、もう少しで銀の称号に辿り着けるわね。アメリさんは、あと少しで白よ」
それを聞いていたティオロがレナに「ねえ俺は?」と、声を掛ける。
「君は、もう少し頑張った方が良いわね」
階級上げの報告がされず、ティオロはガックリと肩を落とす。
「お前は、湿地帯で5匹くらいしか魔物倒して無かっただろう?」
カルファが呆れた声でティオロに言う。
「あと…奨励金を配るわね」
レナは最初にリーミアに奨励金を持って行く。すると彼女はレナに向かって、何か話をしていた。
「え…?そうなの、分かりました」
レナは一旦事務所に戻ると、改めてフォルサ達の方に来て、奨励金の入った袋を差し出す。
「彼女から、貴方達3人に分けて欲しいと言われたの…」
「?」
フォルサは、何時もの小銭が入った重い袋でなく、軽すぎる袋を持って中を見て驚いた。
「お…おい、金貨が3枚も入っている!」
「わ…私もよ!初めてだわ、こんな大金!」
フォルサ達は、人一倍戦っていながら、奨励金を受け取らない少女を不思議な眼差しで見た。
「お前、何で奨励金を受け取らないんだ?」
「私は平気よ。貴方達全員でそのお金を使って」
気落ちしながらもリーミアは笑顔で言う。
「そうなのか、すまないな…」
フォルサが戸惑いながら礼を言う。
「大事に使わせてもらう」
カルファが、軽く一礼してリーミアに言う。
「ありがとう、嬉しいわ」
アメリはリーミアに握手しながら礼を述べた。
不思議な少女を目の当たりにして戸惑いを隠せないフォルサは、今後リーミアとティオロはどうするのか尋ねる。
「俺達と一緒に行動するか?それとも一旦除隊にするか?」
その問いにティオロはリーミアを見つめた。
「一旦除隊の方が良いね、元気を取り戻すのにも少し時間が掛かりそうだし…」
「分かった。では…その様に手続きを済ませて置くよ、ちなみにアメリちゃんは、どうするのだ?」
「私は…少し前、ギルドメンバーを外れてしまったのよ。誰かと一緒に行動したいと思っているのよ」
「良かったら、俺達と行動するか?」
「そうしてくれるなら、構わないわ」
話が纏まると、フォルサはリーミアとティオロを除隊させて、カルファとアメリと一緒に行動する事になった。
「じゃあ、彼女が元気を取り戻したら、また声を掛けてくれ」
そう言ってフォルサ、カルファ、アメリの3人はティオロに軽く手を振りながら、ギルド集会所を出て行った。
彼等と別れたティオロは、ずっと座ったまま落ち込んでいるリーミアの手を引っ張り、ギルド集会所を出て、宿屋へと一緒に歩いてく。
彼が手を話すと、彼女はそのまま地べたに座り込んでしまいそうな程、元気を失って居た。
「何時まで落ち込んでいるんだよ…全く」
「うん…」
リーミアは小声で返事をした。
(ここまで来ると、相当重症だな…)
呆れた表情でティオロはリーミアを見た。完全に正気を失っているかの様な彼女を見ながら、彼は宿屋の前まで彼女を連れて来た。
「ほら、宿屋に着いたぞ。さあ中に入ろう」
と、ティオロは宿屋の扉を開けた。すると…宿屋の中は物凄い賑わいだった。
「いっ!何コレ?」
ティオロは驚きながら言う。流石に意気消沈として居たリーミアも少し驚いた表情をした。
彼等が戻って来たのに気付いた宿屋の女将ルナが「あら、お帰りなさい」と、声を掛ける。彼女は忙しそうに、宿屋のホールを走り回って居た。
「どうしたの、コレ?」
自分達が出掛ける前まで、店に客等1人も居なかった…。と、言うよりも宿屋の客は自分達だけで、店は物抜けの空だったのに…彼等が出掛けて帰って来ると、まるで別の建物になったかの様に、宿屋は繁盛していた。
「ちょっと、待ってね。アニー、リーミアちゃんを、例の部屋に案内してあげて!」
「は~い!」
奥から小さな少女が現れて「おかえり、こっちよ」と、彼女はリーミアの手を引っ張って階段を上がって行く。
彼女達は4階まで上がると、目の前に大きな扉が見えて来て、アニーと言う少女は鍵を取り出して扉を開ける。
「ここは、リーミアちゃん専用の部屋よ。好きなだけ使ってね。勿論宿代は永久無料よ」
そう言って彼女は扉を開き、中の部屋を見せる。
「うわー!」
付き添っていたティオロが大声を出しながら驚いた。目の前に現れた部屋は宮殿の様な室内だった。美しい刺繍で彩られた絨毯や、カーテン付きの華やかな高級ベッド。天井にはシャンデリアが飾られ、更にタンスやクローゼット、ソファーまでも取り揃えてあった。
「何コレ、凄いじゃないか!僕の部屋も、こんな風になっているの?」
「こちらが、貴方の部屋よ」
ティオロは、部屋番の掛かれた鍵を渡されると、急いで部屋に向かって中を見た。すると…部屋の中は、出掛ける前と同じ殺風景な空間だった。
「ちょっと!」
ティオロは、不機嫌そうに戻って来て言う。
「何で、僕の部屋は前のままなんだよ!」
「え…?だって、あのお金、リーミアちゃんのお金なんでしょ?」
「そうだけど…でも、僕にも少し位は残して欲しかったね。大体幾ら使ったのだよ?僕のお小遣い分くらい残って無いの?」
「あるわよ、少しくらいは…」
アニーが金貨の入っている袋を見せる。彼は急いでそれを受け取り、中を見たら…袋の中には金貨が2枚しか無かった。
「あんなに沢山あったのに、全てお店と、この部屋につぎ込んだの?」
宿屋に戻ったら、しばらく遊び回ろうと予定して楽しみにしていた。リーミアがフォルサ達に奨励金を全て分配されても、帰って来ればお金があると、楽しみにしていた為、ギルドでは何も言わなかった。しかし…当初の計画は予想外の方向に資金が使われてしまった為、自分の手元には残った金貨2枚だけだった。
ティオロは愕然として、その場に座り込む。
「あ…ちなみにティオロさんの宿泊代は別料金なので、期限が切れたら、しっかり払って貰いますね」
「なんか…扱いの差が酷くない?」
「そんな事ありませんよ。ティオロさんが同じ金額を出せば、同じ様に接しますよ…払える金額があれば…ですが」
アニーと言う娘は、ニヤけた表情でティオロを見下ろした。その表情に彼はこの宿屋から抜け出したいと本気で思った。
結局、帰宅したその日は、ティオロは楽しみにしていたお楽しみが無くなり宿屋で一晩過ごす事になった。
受付担当のレナは狩場での報告や、敵の遺品等を受け取り、ギルドの事務所に鑑定を依頼した。しばらくして鑑定結果が報告された。一番の功労者はリーミアで、水晶の称号を授与された。
「たった一週間ちょっとで、ここまで特進出来るなんてすごいわね」
レナは驚きながらリーミアに水晶のペンダントを差し上げる。
「ありがとう…」
暗い表情で、リーミアはペンダントを受け取る。
「どうしたの?もっと喜びなさいよ?」
「はい…」
俯きながら、彼女は近くの椅子に腰を降ろした。
その傍らで、フォルサがカルファに声を掛ける。
「なあ、お前…水晶の称号を受け取るまで、どれ位掛かった?」
「俺は3年以上だったかな?水晶の称号を頂いた時は、嬉しくてはしゃいだけどな…フォルサは?」
「俺は…4年半だった。授与された時、当時の仲間と一緒に盛大にパ―ティをして一夜を過ごしたんだが…」
そう話している横でアメリが「ウウ…」と、哀しそうな表情をしていた。
「どうしんだ?」
「私、ギルドに登録してもう3年になるのに、まだ灰色の称号なのよ。なのに、あの子は私よりも階級が上に行ってしまったわ…」
「まあ、仕方ないさ…あんなハチャメチャな戦い方だったら、直ぐに金の称号まで行けてもおかしくはないさ」
その傍らで、フォルサはリーミアを見た。
(今後は苦しい戦いになるだろうけど…)
レナが他のメンバーの報告に来た。
「フォルサさんとカルファさんは、もう少しで銀の称号に辿り着けるわね。アメリさんは、あと少しで白よ」
それを聞いていたティオロがレナに「ねえ俺は?」と、声を掛ける。
「君は、もう少し頑張った方が良いわね」
階級上げの報告がされず、ティオロはガックリと肩を落とす。
「お前は、湿地帯で5匹くらいしか魔物倒して無かっただろう?」
カルファが呆れた声でティオロに言う。
「あと…奨励金を配るわね」
レナは最初にリーミアに奨励金を持って行く。すると彼女はレナに向かって、何か話をしていた。
「え…?そうなの、分かりました」
レナは一旦事務所に戻ると、改めてフォルサ達の方に来て、奨励金の入った袋を差し出す。
「彼女から、貴方達3人に分けて欲しいと言われたの…」
「?」
フォルサは、何時もの小銭が入った重い袋でなく、軽すぎる袋を持って中を見て驚いた。
「お…おい、金貨が3枚も入っている!」
「わ…私もよ!初めてだわ、こんな大金!」
フォルサ達は、人一倍戦っていながら、奨励金を受け取らない少女を不思議な眼差しで見た。
「お前、何で奨励金を受け取らないんだ?」
「私は平気よ。貴方達全員でそのお金を使って」
気落ちしながらもリーミアは笑顔で言う。
「そうなのか、すまないな…」
フォルサが戸惑いながら礼を言う。
「大事に使わせてもらう」
カルファが、軽く一礼してリーミアに言う。
「ありがとう、嬉しいわ」
アメリはリーミアに握手しながら礼を述べた。
不思議な少女を目の当たりにして戸惑いを隠せないフォルサは、今後リーミアとティオロはどうするのか尋ねる。
「俺達と一緒に行動するか?それとも一旦除隊にするか?」
その問いにティオロはリーミアを見つめた。
「一旦除隊の方が良いね、元気を取り戻すのにも少し時間が掛かりそうだし…」
「分かった。では…その様に手続きを済ませて置くよ、ちなみにアメリちゃんは、どうするのだ?」
「私は…少し前、ギルドメンバーを外れてしまったのよ。誰かと一緒に行動したいと思っているのよ」
「良かったら、俺達と行動するか?」
「そうしてくれるなら、構わないわ」
話が纏まると、フォルサはリーミアとティオロを除隊させて、カルファとアメリと一緒に行動する事になった。
「じゃあ、彼女が元気を取り戻したら、また声を掛けてくれ」
そう言ってフォルサ、カルファ、アメリの3人はティオロに軽く手を振りながら、ギルド集会所を出て行った。
彼等と別れたティオロは、ずっと座ったまま落ち込んでいるリーミアの手を引っ張り、ギルド集会所を出て、宿屋へと一緒に歩いてく。
彼が手を話すと、彼女はそのまま地べたに座り込んでしまいそうな程、元気を失って居た。
「何時まで落ち込んでいるんだよ…全く」
「うん…」
リーミアは小声で返事をした。
(ここまで来ると、相当重症だな…)
呆れた表情でティオロはリーミアを見た。完全に正気を失っているかの様な彼女を見ながら、彼は宿屋の前まで彼女を連れて来た。
「ほら、宿屋に着いたぞ。さあ中に入ろう」
と、ティオロは宿屋の扉を開けた。すると…宿屋の中は物凄い賑わいだった。
「いっ!何コレ?」
ティオロは驚きながら言う。流石に意気消沈として居たリーミアも少し驚いた表情をした。
彼等が戻って来たのに気付いた宿屋の女将ルナが「あら、お帰りなさい」と、声を掛ける。彼女は忙しそうに、宿屋のホールを走り回って居た。
「どうしたの、コレ?」
自分達が出掛ける前まで、店に客等1人も居なかった…。と、言うよりも宿屋の客は自分達だけで、店は物抜けの空だったのに…彼等が出掛けて帰って来ると、まるで別の建物になったかの様に、宿屋は繁盛していた。
「ちょっと、待ってね。アニー、リーミアちゃんを、例の部屋に案内してあげて!」
「は~い!」
奥から小さな少女が現れて「おかえり、こっちよ」と、彼女はリーミアの手を引っ張って階段を上がって行く。
彼女達は4階まで上がると、目の前に大きな扉が見えて来て、アニーと言う少女は鍵を取り出して扉を開ける。
「ここは、リーミアちゃん専用の部屋よ。好きなだけ使ってね。勿論宿代は永久無料よ」
そう言って彼女は扉を開き、中の部屋を見せる。
「うわー!」
付き添っていたティオロが大声を出しながら驚いた。目の前に現れた部屋は宮殿の様な室内だった。美しい刺繍で彩られた絨毯や、カーテン付きの華やかな高級ベッド。天井にはシャンデリアが飾られ、更にタンスやクローゼット、ソファーまでも取り揃えてあった。
「何コレ、凄いじゃないか!僕の部屋も、こんな風になっているの?」
「こちらが、貴方の部屋よ」
ティオロは、部屋番の掛かれた鍵を渡されると、急いで部屋に向かって中を見た。すると…部屋の中は、出掛ける前と同じ殺風景な空間だった。
「ちょっと!」
ティオロは、不機嫌そうに戻って来て言う。
「何で、僕の部屋は前のままなんだよ!」
「え…?だって、あのお金、リーミアちゃんのお金なんでしょ?」
「そうだけど…でも、僕にも少し位は残して欲しかったね。大体幾ら使ったのだよ?僕のお小遣い分くらい残って無いの?」
「あるわよ、少しくらいは…」
アニーが金貨の入っている袋を見せる。彼は急いでそれを受け取り、中を見たら…袋の中には金貨が2枚しか無かった。
「あんなに沢山あったのに、全てお店と、この部屋につぎ込んだの?」
宿屋に戻ったら、しばらく遊び回ろうと予定して楽しみにしていた。リーミアがフォルサ達に奨励金を全て分配されても、帰って来ればお金があると、楽しみにしていた為、ギルドでは何も言わなかった。しかし…当初の計画は予想外の方向に資金が使われてしまった為、自分の手元には残った金貨2枚だけだった。
ティオロは愕然として、その場に座り込む。
「あ…ちなみにティオロさんの宿泊代は別料金なので、期限が切れたら、しっかり払って貰いますね」
「なんか…扱いの差が酷くない?」
「そんな事ありませんよ。ティオロさんが同じ金額を出せば、同じ様に接しますよ…払える金額があれば…ですが」
アニーと言う娘は、ニヤけた表情でティオロを見下ろした。その表情に彼はこの宿屋から抜け出したいと本気で思った。
結局、帰宅したその日は、ティオロは楽しみにしていたお楽しみが無くなり宿屋で一晩過ごす事になった。
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