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最終章 エリザベト

9:グロ注意:お2人、大立ち回り編4

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 2人は3度目の目配せをかわす。
 そしてやはりゴリねえは「おひょー」との叫びと共に、激しく上段から打ちかかる。
 芸が無いといえば、芸が無い。
 ただ、ゴリねえの膂力りょりょくと体格からすれば、最も合理的な攻めではあった。
 相手は受ける。
 とはいえ、今回、相手は後ろに吹っ飛んだ。
 ゆえに大きく態勢を崩す。
 それでも、ゴリねえの2撃目には、何とか剣を合わせるを得た。
 ただこれまでと異なり、相手が後方へ下がった分、2撃目にもかかわらず、十分踏み込むを得て、その分、体重が乗っかる。
 というか、ゴリねえは全体重を乗っけた。
 ここが勝負の際と見極めての渾身の打ち込みであった。
 相手の態勢を見て、避けられて、たたらを踏んだところで、反撃を食らう恐れなしと見切ってのことであった。

 相手はその勢いを止めるを得なかった。
 ゴリねえはそのまま頭をかち割らんとする。
 相手は、剣が眼前に迫るを見たであろう。
 ガツンと鈍い音がする。
 腰砕けとなり、ゴリねえの突進を受ける形で、仰向けにひっくり返る。
 ただ幸いにも、転んだことと兜に守られたおかげで、ゴリ姉の剣撃による致命傷は避けるを得た。
 とはいえ、次には、ゴリねえは大段平を兜を避けて振り下ろし、鼻から下は原形を留めぬほどに砕かれた。
 そしてゴリねえはその血肉と骨片を浴びる。



 他方、チイねえは難なく、その足下にすべり込むを得て、踏ん張る足を懐剣でかき斬り、そうしてやはり反転しざま、倒れ伏したところのその喉をかき斬った。
 チイねえが全身を返り血に染めること、再びであった。



 2人は斜交はすかいに跳んで、相手を違えたのであった。
 チイねえの相手は、そもそも後方へ跳ぼうとして、後ろに重心をかけておったくらいである。
 そこにゴリねえの体重をかけた一撃を食らえば、持ちこたえられようはずもない。
 
 他方、ゴリねえの相手は、その体重をのせた攻撃を受け止めるために、自ずと足を踏ん張り待ち構えておる。
 そこにチイねえの素早さですべり込まれたら、対応のしようがあるはずもなかった。

 更に言えば、2人とも、逆側、つまりチイねえは下からの攻撃に、ゴリねえは上からの攻撃に特化し、そちらに敵の注意を向けさせることに成功しておった。
 またこれが特に根拠のない攻撃ならいざ知らず、両方ともその体格に合った攻撃であった。
 ゆえに、これに敵が疑いを抱き、何かあると警戒するということも、またなかったのである。



 ゴリねえは倒れ伏しておった者。
 どうも気絶しておったらしい。
 その者の兜を脱がしてから、その頬を張って目を覚まさせる。
 その者は、しばらくぼうっとしておったが、やがて命乞いを始めた。
 ゴリねえはついに立ち上がる。
 その者は命乞いが受け入れられたと想ったのだろう、礼を言う。

「できないのよ、それは。あなたは憶えてないのでしょうけど」

 そう言うと、その頭に大段平を叩きつけ、砕く。
 血肉と骨片を浴びること、再びとなった。



 その様をチイねえは見ておった。
 そして、ゴリねえと最後の目配せをすると、館内への扉を指さして、歩き出す。

 ゴリねえは少し後からついて行く。
「約束は?」

「分かっている」

「いい子ね。だから、王太子は貴方あなたにあげるわ」

 チイねえはふと足を止めた。

 後から追いつき、その顔をのぞき込んで、
「バカね。泣くのはまだ早いわ。
 それはあだを討ってから。
 それにここから先は、何よりエリザベト様の仇となるわ」

 ゴリねえは扉の取っ手に鍵がかけてあることを知る。
 その剛力で難なく鍵を壊し、中に入る。

 チイねえは涙をぬぐって、その後に続いた。
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