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第1章 夢の中?

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 とにかく私は自分に『待て』と言い聞かせた。
 一つは、夢から目覚めるのを。
 まだ私は希望を捨てた訳ではなかった。

 もう一つは、何かが起きることを。
 エリザベトの婚約破棄や断罪処刑につながる何かが起きるのを。
 もちろん私は待ち望んでなんかいない。
 何も起きないのが一番良い。
 私の『待て』とは、じっとしているということである。

 何にしろ、私には他にしようがない。
 ワンワンに言う『待て』と同じである。

 いや。
 あった。
 チョコやフルーツに舌鼓したづつみを打ち、ワインにほろ酔うことは。
 御免ね、ワンワン。やっぱり違ったね。

 ただ、私はこれが夢かゲーム世界かを判断する一つの決め手には、ようやく気付くを得た。
 それにも、また時が必要であった。
 『季節のうつろい』である。
 私自身は、生まれてこの方、自分の夢の中で、これを実感することはなかった。
 もちろん、夢の中でも暑かったり寒かったりする。
 でも季節が移ろうということはなかった。
 理由は良く分からない。
 夢とはそうしたものだと言うしかない。

 そしてもしここで季節の移ろいを実感できれば、
――ここは乙女ゲームの世界であると断言しても良い、
――そしてそれは、夢であることを断念することでもあったが。


 そうして、私は待ちつつ、季節を観察した。
 どうも私が来たのは、春から夏にかけての時期だったようである。
 それから気温はじわじわ上昇した。
 3ヶ月たち、恐らく今が盛夏である。
 ただ日本の夏の如く、蒸し暑いということもなく、また最高気温もそれほど上がらなかった。

 人物の名前から推し量ると、多分このゲームは、ヨーロッパのオーストリアとかドイツ当たりをイメージした世界なのかなと想う。
 私は行ったことがないが、何となくそこらへんの夏は、こんな感じなのかなと納得する。
 ゲームにすんなり入るためには、こうした納得は大事なんだろう。
 
 何でこんな関係ない話をしているのか?。
 だって結論を言いたくないもの。
 でも、言わなきゃあ。
 フー。
 ため息ついても、元気は出ないぞ・・・・・・と。

 そう、季節は移ろったのである。
 これでゲーム確定である。
 私も乙女ゲームに移ろった。なんちって。
 とふざけても、全然楽しくないぞ・・・・・・と。

 ただ悪いことばかりではなかった。
 この3ヶ月、何にも起きていない。
 もしかすると、このままずっとと想う。
 そしてそれに根拠こんきょがない訳ではない。

 えへん。偉いぞ。私。
 私は再び気付いたのである!
 私が転移したことにより、エリザベトの設定が変わったのである!
 そうなのである!
 エリザベトは身持ちが堅いのである!
 王太子の親友たちともきしていないのである!
 それどころか、誰ともしていないのである!
 ゆえに、婚約破棄がなされることはないのである!
 ゆえに、その先の断罪処刑もなされようがないのである!
 まさに、ラッキー、ラッキーなのである!
 私のすこぶるつきの男へのモテなさが、こんなところで、役に立とうとは・・・・・・びっくり仰天である!
 まさに、それが私の命を救い、同時にエリザベトの命を救うのである!



本話で第1章は終了です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
是非、第2章もお読みいただければと想います。
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