THE LAST WOLF

凪子

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【延長戦】

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「ほら、見て」

のんに肩をたたかれ、俺は顔を上げる。

窓の外、先ほどまで星がまたたいていた紫紺の空が、うっすらと明るくなり始めている。

夜明けがやってきたのだ。

「準備できました!」

大きな声で言って、きりりとした顔で古川さんは振り向いた。

「いつでも放送できます」

「了解」

戸上さんは真知子さんに包帯を巻いてもらって立ち上がると、俺のほうに歩いてきた。

「歩、やれそうか」

「もちろんです」

俺は心臓に手を当てる。鼓動が命のリズムを伝えてくれる。

そこから数時間して、サークルヴィジョンと全国のテレビ電波をジャックして、俺たちが放送した内容は君も知ってのとおりだ。

放送は朝のニュースの時間帯を使ったから、多くの国民が目にすることになった。

俺はのんとともに、BBWの真実を全て話した。

彼らが今まで行ってきたこと。『汝は人狼なりや?』の危険性。

それについて放置するばかりか、政府に働きかけて人狼法を制定させ、都合の悪い人間は秘密裏に葬り去ってきたこと。

バニシングナイトが私刑と謀殺の温床となっていること。

そして俺たちSacred Raverは、BBWに対抗するためにつくられた組織であるということ。

俺が『汝は人狼なりや?』を生みだした、小鳥遊周の息子であること。

父に託された使命を果たすため、バニシングナイトに乗り込み正々堂々と戦い、正体がばれて殺されそうになったが、何とか生き残ったこと。

BBWの代表である、吉田正義を殺したこと。

バニシングナイトを終わらせ、BBWを潰し、この世から『汝は人狼なりや?』という呪われた遊びを消滅させる。

それが俺たちの使命だった。

そのためには政府に人狼法を廃止させ、逆に『汝は人狼なりや?』を禁止する法律をつくる必要がある。

そのモデルについては、同じくこのゲームを法律で禁止しているロシアが参考になるはずだ。

俺たちの政府への要求は三つ。

一つ、人狼法を廃止すること。

二つ、『汝は人狼なりや?』を禁止する法律を制定すること。

三つ、BBWを解散させること。

そして、国民の皆にも俺たちは呼びかけた。

もう何も怖がらなくていい。不信と悪意を増幅させるこのゲームに、これ以上時間を費やすのはやめるべきだ。

中毒になる前にみずから放り投げ、BBWの支配から解放されよう。ともに信じ合える世界をつくろう。

放送は10分ほどのものだったが、テレビ電波のほうは途中で強制的に打ち切られた。

だけど、もちろん同じものをサークルヴィジョンでも繰り返し動画配信していたから問題ない。

一瞬で俺たちの声は電子世界を駆け抜け、あらゆる人のもとに届いた。

達成感があった、それに満足感も。

俺たちは勝った、勝ったんだ。

バニシングナイトを終わらせ、諸悪の根源であるBBWを潰し、その筆頭である吉田正義をこの世から消し去った。

これだけ大騒ぎになったんだから、政府もこの事件をなかったことにしてもみ消すわけにはいくまい。

国内に残っているSacred Raverのメンバーも、俺たちの意思表明と同時に大規模集会を行い、人狼法廃止のデモ行進を行う手筈になっていた。

これで平和が戻ってくる。俺たちの夢見ていた平和が。

もう誰も疑い合わなくていい、騙し合わなくていい。

『汝は人狼なりや?』さえなくなれば、国中に蔓延する疑心暗鬼のムードも、争いの火種も消えてなくなるだろう。

俺はそう考えていた。

本気でそう思っていたんだ。






























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