ＴＨＥ ＬＡＳＴ ＷＯＬＦ

【延長戦】

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そして、桜庭のん。

彼女こそ、Ｓａｃｒｅｄ　Ｒａｖｅｒの創始者であり生みの親だ。

組織の名前も、彼女の名字である桜庭からとっている。

ＢＢＷの最も強力なスポンサーであり、創成期からバックアップし、ＢＢＷが潰れそうになったときは政界のパイプを使ってそれを阻止し、人狼法制定の陰の立役者となった企業・桜庭建設。

その代表取締役社長・桜庭光隆は、のんの父親である。

彼女は穏やかで人当たりのいい父親と、優しくて可愛らしい母親、優秀な兄に囲まれて何不自由なく暮らす、大金持ちのお嬢様だった。

そして何の疑いも抱くことなく、幸せな暮らしを享受してきた。

十年ほど前、桜庭建設とＢＢＷとのつながりを知るまでは。

あまりにも聡明だったのんは、疑惑を放置しておくことができなかった。

両親に問いかけてもはぐらかされたため、自力で真実を調べ上げ、そして桜庭建設とＢＢＷに潜む深い闇に気づく。

だが、もはや二つの企業は一蓮托生とも呼べる蜜月関係にあり、どれだけ自分が父親に訴えたところで、今さらＢＢＷとのつながりを断つことはできないと知った。

人を殺し、その生き血をすすり、今まで幾人もの人間を破滅させてきたＢＢＷ。

桜庭建設もその恩恵に与っている。

人工島『楽園』の建設を筆頭に、ＢＢＷの社員寮やホテルやマンション、イベント会場などの建設によって、桜庭建設は巨額の利益を得ているのだ。

その事実が、のんには耐えられなかった。

娘をとるか、会社をとるか。

最終手段として父親と一対一で条件を突きつけ、父の心を変えられないと悟ったのんは実家を出奔し、知り合いであった戸上明典のもとへと身を寄せる。

日本有数のゼネコンである桜庭の一人娘が、協力関係にあるはずのＢＢＷへの対抗勢力Ｓａｃｒｅｄ　Ｒａｖｅｒを立ち上げたのは、五年前、彼女がわずか十三歳のころだった。