ＴＨＥ ＬＡＳＴ ＷＯＬＦ

【延長戦】

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雪妃の家は母子家庭で、母親が雪妃を妊娠中に父親が蒸発したという。

雪妃を十代で出産した母親は自分の美貌だけを愛しており、自由な時間と化粧品に使うお金を奪う赤ん坊は邪魔でしかなく、雪妃は十四年の間ネグレクトされて育った。

母方の祖母だけが雪妃の面倒を見てくれる唯一の存在だったが、その祖母も十歳のころに亡くし、それ以降、身の回りのことは全て一人で行う生活が続いた。

十四歳の誕生日、プレゼントの代わりに待ち受けていたのはバニシングナイトへの招待状だった。

自分は母親に売り飛ばされたのだと知り、雪妃は絶望し、みずから命を絶とうとする。

だが、風呂場で手首を切って流れる血を見つめていると、激しい怒りが胸を突き上げた。

なぜ自分が死ななければいけない？

どうして何も悪いことをしていないのに、殺されなければならない？

そんなのは間違っている。強い声が頭の中で鳴り響いた。

私は死なない。戦って勝ち残り、必ず生き抜いてやる。

どんな手を使ってでも。これが自分の運命だなんて、甘んじて受け入れてやるつもりはない。

もう素直ないい子になんかならない。

いい子でいても、お母さんが私を愛してくれたことは一度もなかったんだから。

そして雪妃は最年少参加者としてバニシングナイトに参加し、見事勝利を手にした。

賞金の五億を得て戻った後、当然のように母親はその金を奪いに来た。

雪妃はそれを返り討ちにし、母親に重傷を負わせて逃亡した。

住居を転々とし、警察に追われていたところを戸上明典に拾われ、Ｓａｃｒｅｄ　Ｒａｖｅｒに保護されて居場所を得た。

古川さんは勤めていた大手ＩＴ企業でＢＢＷと取引関係があり、ＢＢＷにスカウトされかけたが断固として断った。

その結果、会社をあっさりクビになった。

彼の技術力は確かだったため、声をかけてくれる再就職先も複数あったが、そのどれもに手を回されて妨害され、業界からつま弾きにされて働く場所を失った。

野村さんは元警察官で、バニシングナイトに対する大規模な反対デモが起こった際、暴動鎮圧に参加したところ、死者十九名、負傷者三百名という大惨事となった。

そのことからＢＢＷに疑念を持つようになっていたが、それを同僚に話してから間もなくして、突然身に覚えのない横領の嫌疑をかけられて懲戒解雇となった。

処分は実名で報道され、非難や嫌がらせが相次ぎ、耐えきれずに妻子は家を出ていった。