THE LAST WOLF

凪子

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【延長戦】

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「周の息子だろう。君は誤解している。私を撃つ前に、せめて話を聞いてくれ」

「撃て、歩」

冷酷な表情で戸上さんは言った。

「こいつの話に耳を貸すな」

護衛についた男二人は、隙あらばこちらの武器を奪おうと腰を低くして身構えている。

ここでいたずらに時間を浪費するわけにはいかない。俺たちにはまだ、やらなければならないことがあるのだ。

俺は吉田正義の額に銃口を向けた。

「このクソみたいなゲームを始めたのはあんただろ?自分だけ安全な場所にいて、高見の見物なんて許さない」

「違うんだ、歩君」

俺が一発撃つと、弾は吉田の右足をかすったようだった。

「うぐああっ」と悲鳴を上げて、吉田は痛みにのたうち回る。

それを見た護衛の二人が玉砕覚悟で突っ込んできたので、戸上さんが二人を狙撃した。

パン、パンという音とともに、簡単に二つの死体ができ上がる。

生者と死者との間にある境界線なんて、薄く脆いものにすぎない。

入江には静寂が訪れ、立っている者は三人だけとなった。

「バニシングナイトはもうやめる。これまでゲームに負けてお亡くなりになった方には、我が社から弔慰金を支払わせてもらう。もちろん君のお父さんもだ。それでいいだろう?」

激痛に歯を食いしばりながら、血走った目を見開き、吉田は必死で話し続ける。

人間、命乞いのためならどんなことでもできるというのは本当だった。

「そんなことをしても死者は蘇らない」

俺は自分の声色が変わっているのを感じた。

戸上さんが俺を見ている。その目は強く何かを訴えかけていた。

早く殺せという意味か、それとも別の意味なのか、そのときの俺には分からなかった。

でも、どうしても止められなかった。

「あんたはこの国に災厄をばらまいた。このゲームのせいで国民に根づいた強い不信感は、いたるところで事件となって噴出している。疑惑、混乱、疑心暗鬼――全てあんたが引き起こしたものだ」

「『汝は人狼なりや?』を開発したのは君のお父さんだ。君はお父さんの創り出したものを否定するのか」

「父さんは途中で危険性に気づいた。だからゲームを終わらせようとした。その父さんを殺してまで、私利私欲のためにゲームを続けたのはあんただろう」

「私は殺してない」

ぎらぎらと光る瞳で吉田は訴えた。

足の痛みは恐怖と興奮にかき消されているのか、手を地面について立ち上がろうとさえしている。
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