ＴＨＥ ＬＡＳＴ ＷＯＬＦ

【開始前】

10

俺にはまだ、実感がなかった。

夢見心地でふわふわしていて、地に足のつかない気分だった。

時間になれば衛視が呼びにくる。

俺はベッドの上であぐらをかき、君のことを考えていた。ほかに考えることなんて、何もなかったから。

俺がゲームに参加する二週間ほど前、初めて君に気持ちを打ち明けたとき、君は俺を拒こばんだね。

笑いながら俺を両手で押し返したけど、目は泣いていた。

もちろん悪いのは俺で、君は何も悪くない。

でも、それから俺たちの関係は気まずくなってしまったね。

一つ屋根の下、心から想う人と一緒に生活をしながら、指一本触れられず、会話もままならないというのはとても辛かった。

だからといって当てつけに死んでやろうとか、自暴自棄じぼうじきでこのゲームに参加したわけじゃない。

もし君が気にしているとしたら、それは違うから安心してほしい。

いくら馬鹿な俺でも、そこまで命を粗末そまつに扱ったりしないよ。

ただ俺は、君にふさわしい男になりたかったんだ。

そして君に、生きるべき価値のある、新しい世界を遺のこしていきたかったんだ。

誰も傷を負うことのない、美しく優しい世界を。