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夏の黎明

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そして京介の目の前に立ち、両手で両頬を挟むと、息がかかるほどの距離で、

「殺さない。そんなことしてあげない。私があんたを楽にしてあげるはずないでしょ」

京介の目に暗い失望が映る。

「あんたは一生、私と透子のために生きるの」

まるで自分に言い聞かせるように、必死に涼子は言った。

彼女の噛みしめた唇が震えている。

京介は目を閉じると、彼女の両手をつかんで顔から離させた。

「店に戻る」

踵を返すと、鋭い声が引きとめた。

「あの子は辞めさせなさい。今すぐに」

京介は足を止めて振り向く。

「……あの子って誰だよ」

「分かってるでしょ?」

怜悧な眼差しで涼子は再び腕を組む。

その唇が動く前に、京介は彼女が次に何を言うのか予想できた。

「来てみてよかった。あんたの性格の悪さには毎度驚かされるわ。よくもあそこまで残酷なことができるわね?あんな……」

涼子は言葉に詰まり、躊躇していたが、やがて勢いをつけて言い放った。

「あんな、透子みたいな子を自分の傍に置くなんて」

予想どおりの指摘だったので、京介は平静さを保って答えることができた。

「言っとくけど、桜は透子とは全然似てないよ。そもそも、」

「辞めさせなさい。いいわね?」

有無を言わさず涼子は断言した。

「一目見てすぐに分かった。ぞっとしたわよ。顔とか雰囲気とか、そういう問題じゃない。心臓がばくばくして見てられなかった」

「いや、だから違うって」

「あの子はあの子で可哀想だけど、あんたもあんたでどうかしてるわよ。実はMなの?」

人差し指を突きつけられて、京介はたじろぐ。

「言っておくけど、あの子とあんたじゃうまくいくはずないわよ。一緒にいても不幸になるだけ」

「人の話を聞けよ。いいか、涼子。桜は優秀なパティシエなんだ。俺は彼女を雇ってる、それだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

涼子は鼻で笑った。

「笑わせないで。私がそんなお題目を鵜呑みにするほど間抜けだと思う?」

京介を睨みつけると、彼女は低い声で凄んだ。

「あんたがいくら否定しようと、あの子は透子そのものよ。あんただって内心それは認めているはず。

……さっさと別れないと、今度はあの子が死ぬことになるわよ」















































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