護国の鳥

凪子

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終章

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「話を元に戻すぞ」

とルベリエは続ける。

「紛失した資料を探すうち、捜査線上に浮かび上がったのがサイクロイドだった」

ルベリエは言葉を切り、ルートの顔を見据える。

「俺はサイクロイドに潜入し資料を破棄したが、持ち出した人物を突きとめることはできなかった。当時サイクロイドにいた全員に調査が入ったが、決定的な証拠は得られなかった」

「資料はラグランジュ先生が持ち出したのではないのですか」

ユリシスが尋ねると、ルベリエは首を振って、

「いや、もし資料があいつの手に渡っていたのなら、もっと早くインフィニティに接触し、行動を起こしていただろう。わざわざユージェニーを捕えてインフィニティの人体実験に関する内容を聞き出そうとしていたことを見ても、あいつは次元の呪いやインフィニティの真の能力については知らなかったと考えられる。

資料を持ち出した人物は別にいる。そいつは恐らく俺が辿りつく前に資料を複製し、そのうちの一つをあえてサイクロイドに置いておいた。俺はそれを焼却した後、複製しておいた資料の一部を再び時計塔に残すことで餌を撒いた。ラグランジュや翼の会の連中や、お前たちのような人間をおびき寄せるために」

「軍部が想像する以上に、三年前の事件は世の中に広まっている。興味を持つ人間もごまんといる。それを利用し、火種を撒いて軍とインバースを衝突させた……」

ルートが呟き、レッドが頷いた。

「俺は調査を続けて犯人を突きとめるつもりだったが、軍上層部は資料を焼却したという結果だけを国王陛下に報告し、この件に関する捜査を打ち切った」

ルベリエは感情を排し、抑制の行き届いた目つきで言った。

「そのころ、第二の問題が勃発した。レムニスケートで隔離生活と人体実験を続けていたインフィニティが、目に見えて凶暴性を増してきた」

事件から二年。

記憶を消され、体の成長が止まったままのフィンは、施設から一歩も出ることができず、話し相手すらいない鬱屈した環境の中で暴走の兆しを見せ始めていた。

「グレムリン所長は、そもそも人間の感情の機微にうとい。インフィニティを可愛がってはいたが、それはあくまで実験体としてだ。このままインフィニティの精神や肉体に負荷がかかり続ければ、何かのスイッチで記憶が戻り、再び暴走しかねない。そうなれば、研究所や首都に甚大な被害をもたらすおそれがあった」

新しい檻が必要だった。

もっと広く、もっと大きくて、ある程度の自由は保障され、しかも隅々まで目の行き届いた、隔離された実験場。

訓練という名目で閉じ込め、抑圧されない状態で人と交わらせ、兵器としての危険性や利用価値を評価し、いざ暴走しても最小限の被害で見捨てられる環境。

サイクロイド士官学校は、まさに打ってつけだった。
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