護国の鳥

凪子

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秋の章

115

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「そういうことじゃねえんだよ」

「じゃ、どういうこと?」

フィンがたたみかけてくるのに、レッドはやや閉口気味に言った。

「俺とかチビは天才肌だからな。教えてもらわなくても最初からできるもんはできるし、あんまり実科で苦労した覚えないだろ。できる分野とできない分野の差は激しいけど」

「そうかなあ?」

とフィンはきょとんとしている。

「ユリシスは飲み込みも早いし覚えもいい。その上、努力家だ。座学でも実科でも、一通りそつなくこなしちまう。でも、だからこそ、そこで止まっちまうんだよ」

英才教育の弊害だな、とレッドは鋭い目で言った。

「器用貧乏っていうのかな。何でも問題なく、ある程度の水準までできるから、それ以上の成長が見込めない。壁にぶち当たらないから、伸びしろが少ない。何でもできるけど、これといって突き抜けた強みは得られない」

フィンは鼻に皺を寄せている。

「うーん。それって悪いこと?」

「別に悪いことじゃない。ただ、あいつは軍人に向いてないと思う。それだけだよ」

レッドの語り口は淡々としていた。

「軍はどう考えたって、頑張れば報われる世界じゃない。むしろ頑張れば頑張るほど、あいつの場合、自分を追い詰めることになりかねない。俺やお前みたいに、適当にサボったりするぐらいがちょうどいいんだ」

「じゃ、ルートは?」

「お姫様は大丈夫だろ」

レッドはあっさりと請け合った。

「あれだけ鋼鉄の精神と丈夫な心臓を持ってたら、まず間違いなく、人を殺すのに躊躇しないしな」

「そっか」

フィンはようやく腑に落ちた顔で、

「レッドはこう思ってるんだね。ユリシスに人は殺せないって」

呆気にとられ、レッドは唇を半開きにしたままフィンを見つめる。

――そうか。そういうことか。

ともあれ、結局はが決定打なのだ。

確かに、言われてみれば、これ以上当てはまる答えもない。

――間抜けだな、俺も。チビに言われて気づくなんて。

レッドはようやく、目の前にいる少年が少しだけつかめたような気がした。
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