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カレーライス
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自慢じゃないが、ぼくは忘れ物が多い。まず授業に持っていくものを忘れる。毎日、連絡帳に『今日の宿題』と『明日の時間割』と『明日持ってくる物』を書かされるんだけど、かならず何かを忘れてしまう。連絡帳に書くことだけは忘れない…というか、書いたものを担任の先生に見せて、書き落としがないかを僕の場合は三度もチェックされる(ほかの友達は一回だけ)からあたりまえだけど。
それで、連絡帳を見ながらランドセルに持っていくものを入れていくんだけど、教科書を入れたらノートを。ノートを入れたら教科書を。両方そろって入れていたときは筆箱を入れ忘れてる。それがよくないことだっていうのは、ぼくだってちゃんとわかってる。あと、かさをよくわすれてしまう。朝、雨が降っていても帰る時間にやんでたら忘れちゃう。学校にも友達の家にも、おつかいで行ったスーパーにも忘れちゃう。学校や友達の家だったら取りに行ったり持ってきてくれたりするけれど、スーパーに忘れたときは気がついて取りに戻っても置いた場所になくて。それでもう5本以上なくしちゃってる。おかあさんもおとうさんもいつも「忘れ物ばっかりして情けない」とか「だらしない」ってぼくをしかるし、ぼくだってしかられるのは好きじゃない。それにもっとむかつくのは妹までが『忘れんぼ』ってばかにすることだ。そんなある日、おかあさんがひとつの提案をしてきた。 『持っていくもののリスト』をくわしく書いて、ランドセルに入れたら消していくという方法だ。ぼくがおかあさんにおつかいを頼まれてスーパーに行く時に持っていく『お買いものリスト』の学校バージョンだ。まずは明日の用意からということで、おかあさんにメモ用紙を一枚もらって持っていくものを書き出してみた。連絡帳に書いてある明日の時間割は一時間目の社会から六時間目の音楽までの六教科だ。時間割をメモの左のはしっこに縦に書いて、その横にいるものを書いていく。
社会…教科書・ノート
国語…教科書・ノート
理科…教科書・ノート
図工…図工セット(学校においてる)
算数…教科書・ノート
音楽…リコーダー(学校においてる)
筆箱…えんぴつ・サインペン・赤えんぴつ
したじき・ハンカチ・連絡帳
ひと通り書いて、おかあさんに連絡帳といっしょに見せて書き忘れがないか見てもらった。図工セットとリコーダーは学校においているからおかあさんが()で書き足してくれた。OKをもらったのでさっそくメモを見ながらランドセルにつめていった。めんどうだったけれど、ひとつ入れるたびに入れたものを横線で消していった。
社会…教科書・ノート
国語…教科書・ノート
理科…教科書・ノート
図工…図工セット(学校においてる)
算数…教科書・ノート
音楽…リコーダー(学校においてる)
筆箱…えんぴつ・サインペン・赤えんぴつ
じょうぎ・したじき・ハンカチ・連絡帳
次の日、ぼくは初めて『忘れ物を一つもしなかった』と先生にほめてもらったうえに連絡帳にも花マルを書いてもらった。ぼくはとてもうれしかったので、次の日から毎日メモ用紙をもらって、ちゃんと書きだしてからランドセルに入れていくようになった。
けれど毎日たくさんの字を書くのがめんどうになったぼくは、教科書は「き」ノートは「の」と短くして書くようになった。それでも忘れ物はしなくなった。ちょっぴり自信がついたぼくは、おかあさんにたのまれるおつかいのメモも、自分で書くようになった。おかあさんが砂糖とかたまごというのを聞いて「さ1kg」とか「た1パック」と書いていくのだ。だけど、たのまれるものはいつもほとんど同じなので、そのうちにkgとかパックも書かないようになってしまっていた。
ある日おかあさんがぼくにおつかいを頼んできた。ぼくがここんとこずっと忘れ物をしてないからごほうびにとビーフカレーを作ってくれるというのだ。いつもはポークカレーだからすごくうれしい。
ぼくはさっそくメモを書いた。
ぎ300
に2
た3
じ3
か1
そうして小雨が降っていたので、メモとお金ををポケットに入れてカサを持って玄関をでた。玄関のドアがとじる前におかあさんが「カサを忘れて帰っちゃだめよ。」といっているのが聞こえた。
スーパーについたぼくは入口にカサをたたんで立て、レジかごを持って店内をまわった。
「牛肉…300gと、に…にんじんは2本。
た…はたまねぎだから3個で、じ…じゃがいもだった…は3個。もっと入れてほしいんだけどな。あとはか。か・か・か…あ!カサ忘れないでって言われてたっけ。」そうしてぼくはレジで支払いをすませて買ったものを袋に入れてもらい、入口に立てていたカサをもって家に帰った。
「ただいま~。今日はカサ忘れなかったよ。」
おつりとレシートと買ってきたものを台所にいるおかあさんに報告した。
「おかえりなさい。カサ忘れなかったのね。えらかったわね。…って、あなたカレールーは?」
!!!忘れた!
その日の夕ご飯は肉じゃがになった。
終
それで、連絡帳を見ながらランドセルに持っていくものを入れていくんだけど、教科書を入れたらノートを。ノートを入れたら教科書を。両方そろって入れていたときは筆箱を入れ忘れてる。それがよくないことだっていうのは、ぼくだってちゃんとわかってる。あと、かさをよくわすれてしまう。朝、雨が降っていても帰る時間にやんでたら忘れちゃう。学校にも友達の家にも、おつかいで行ったスーパーにも忘れちゃう。学校や友達の家だったら取りに行ったり持ってきてくれたりするけれど、スーパーに忘れたときは気がついて取りに戻っても置いた場所になくて。それでもう5本以上なくしちゃってる。おかあさんもおとうさんもいつも「忘れ物ばっかりして情けない」とか「だらしない」ってぼくをしかるし、ぼくだってしかられるのは好きじゃない。それにもっとむかつくのは妹までが『忘れんぼ』ってばかにすることだ。そんなある日、おかあさんがひとつの提案をしてきた。 『持っていくもののリスト』をくわしく書いて、ランドセルに入れたら消していくという方法だ。ぼくがおかあさんにおつかいを頼まれてスーパーに行く時に持っていく『お買いものリスト』の学校バージョンだ。まずは明日の用意からということで、おかあさんにメモ用紙を一枚もらって持っていくものを書き出してみた。連絡帳に書いてある明日の時間割は一時間目の社会から六時間目の音楽までの六教科だ。時間割をメモの左のはしっこに縦に書いて、その横にいるものを書いていく。
社会…教科書・ノート
国語…教科書・ノート
理科…教科書・ノート
図工…図工セット(学校においてる)
算数…教科書・ノート
音楽…リコーダー(学校においてる)
筆箱…えんぴつ・サインペン・赤えんぴつ
したじき・ハンカチ・連絡帳
ひと通り書いて、おかあさんに連絡帳といっしょに見せて書き忘れがないか見てもらった。図工セットとリコーダーは学校においているからおかあさんが()で書き足してくれた。OKをもらったのでさっそくメモを見ながらランドセルにつめていった。めんどうだったけれど、ひとつ入れるたびに入れたものを横線で消していった。
社会…教科書・ノート
国語…教科書・ノート
理科…教科書・ノート
図工…図工セット(学校においてる)
算数…教科書・ノート
音楽…リコーダー(学校においてる)
筆箱…えんぴつ・サインペン・赤えんぴつ
じょうぎ・したじき・ハンカチ・連絡帳
次の日、ぼくは初めて『忘れ物を一つもしなかった』と先生にほめてもらったうえに連絡帳にも花マルを書いてもらった。ぼくはとてもうれしかったので、次の日から毎日メモ用紙をもらって、ちゃんと書きだしてからランドセルに入れていくようになった。
けれど毎日たくさんの字を書くのがめんどうになったぼくは、教科書は「き」ノートは「の」と短くして書くようになった。それでも忘れ物はしなくなった。ちょっぴり自信がついたぼくは、おかあさんにたのまれるおつかいのメモも、自分で書くようになった。おかあさんが砂糖とかたまごというのを聞いて「さ1kg」とか「た1パック」と書いていくのだ。だけど、たのまれるものはいつもほとんど同じなので、そのうちにkgとかパックも書かないようになってしまっていた。
ある日おかあさんがぼくにおつかいを頼んできた。ぼくがここんとこずっと忘れ物をしてないからごほうびにとビーフカレーを作ってくれるというのだ。いつもはポークカレーだからすごくうれしい。
ぼくはさっそくメモを書いた。
ぎ300
に2
た3
じ3
か1
そうして小雨が降っていたので、メモとお金ををポケットに入れてカサを持って玄関をでた。玄関のドアがとじる前におかあさんが「カサを忘れて帰っちゃだめよ。」といっているのが聞こえた。
スーパーについたぼくは入口にカサをたたんで立て、レジかごを持って店内をまわった。
「牛肉…300gと、に…にんじんは2本。
た…はたまねぎだから3個で、じ…じゃがいもだった…は3個。もっと入れてほしいんだけどな。あとはか。か・か・か…あ!カサ忘れないでって言われてたっけ。」そうしてぼくはレジで支払いをすませて買ったものを袋に入れてもらい、入口に立てていたカサをもって家に帰った。
「ただいま~。今日はカサ忘れなかったよ。」
おつりとレシートと買ってきたものを台所にいるおかあさんに報告した。
「おかえりなさい。カサ忘れなかったのね。えらかったわね。…って、あなたカレールーは?」
!!!忘れた!
その日の夕ご飯は肉じゃがになった。
終
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