似非王子と欠陥令嬢

ちゃろっこ

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縁の紡ぐ道

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熱帯夜と言われるに相応しい蒸し暑い夜。

ルシウスは軍服の一番上の釦を1つ外し首元の汗を拭った。

横ではレオンがあちーと言いながら手で顔を扇いでいる。

リアムも涼しい顔をしているが頬を汗が一雫流れた。

「殿下この後5人と踊るんだろ?
頑張れよ。
暑さで倒れるなよ?」

「ありがとうレオン。
まあ踊りが終わっても令嬢達の相手があるからそっちの方が憂鬱だけどね。」

「いい加減婚約者決めちまえば良いんだって。
そうすれば婚約者候補全員と踊るなんて苦行なくなるんだし。
アグネス嬢かファンティーヌ嬢で手を打てばいいだろ?」

「ほんと簡単に言ってくれるよねレオンは。」

「簡単にとかじゃなくてさ。
次期王妃として考えたら2人のうちどちらかしか有り得ないだろ?
何が嫌なんだよ。」

「…正直2人に興味の欠片も湧かない。」

ボソリと呟くルシウスにレオンは呆れた様に溜め息をついた。

「殿下の興味を引くような魔獣みたいな令嬢なんていないんだから諦めろって。
つかそんな危ない令嬢に王妃なんて無理だから。」

「分かってる。
分かってるんだが。
全員カボチャにしか見えないんだよ。
…まあ大丈夫だよ。
15歳までにはちゃんと決めるからさ。」

諦めた様に微笑むルシウスにレオンは少しだけ同情的な視線を向けた。

ずっと変わった生き物にばかり興味を示して来た幼なじみにまともで普通の令嬢を勧めるのは酷だと分かってはいるのだ。

だがそれで王妃がいないのは困るし、魔獣を王妃に据えられても困る。

そもそも国中の適齢の令嬢と見合いをし1人も頷かなかった以上、この国にルシウスの求める令嬢はいないのだからどうしようもない。

ホールの真ん中で皆の視線を浴びながら踊る幼なじみを眺めながらふと頭を過ぎる。

1人だけいたのだ。

名前と年齢だけ書かれた釣り書を寄越し王命をすっぽかすという行動をした令嬢が。

あの変人としか言えない噂でもちきりな令嬢が。

レオンは一応後日呼び出すか?とルシウスに聞いたが見合いなんてもう嫌だとルシウスに断られている。

あの令嬢ならもしかしたら…と考えてからレオンは首を振った。

例えルシウスの興味を引いたとしてもあの噂が事実ならば王妃は無理だ。

国が滅びてしまう。

『あの魔女』に王妃は無理だと頭に過ぎった考えをレオンは振り払ったのだった。 
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