311 / 339
繋がる世界
311
しおりを挟む
「……知ってたら…何?」
「我が国では王妃との離縁は認められないじゃないですか?
ですから側妃の制度を取り入れるのはどうかと…ヒェッ?」
その為の法案改正について考えてみたのだがと渡そうとした羊皮紙を持ったままキャロルは小さく悲鳴を上げた。
魔王だ。
この10年で最大の魔王が降臨している。
キャロルに会う度に不機嫌になる為お飾りの王妃にして貰いルシウスには好みの側妃でも貰って頂こうと思っただけなのに。
キャロルの考えた法案の内容なら魔物でも側妃に出来るというルシウスにとっては喜ばしいはずの物なのに。
キレてる。
こいつ絶対ブチ切れてる。
キャロルはヤバいとジリジリと扉の方へ足を向けた。
逃げるが勝ちという言葉はこの場において非常に正しいであろう。
ルシウスの顔が無表情になっている。
普段笑っている為無表情の威圧感がヤバい。
キャロルが冷や汗をかきながら扉に近付こうとするとルシウスが扉にもたれかかった。
読まれていたらしい。
退路を絶たれてしまった。
「…へぇ、どういうつもりか聞かせてくれる?」
「いや、あの、私と会う度に不機嫌になられるのでいっそ好みの魔物でも貰って頂こうかな、なんて…。」
「…ふぅん。
そこで何で不機嫌なのかとは考えないんだキャロルは。
どうせ『不機嫌だめんどくせえな逃げよ』としかならないもんねキャロルは。」
図星である。
不機嫌な理由を聞いたら余計に面倒臭い事になるだろうと考えていた事すら読まれている。
目を彷徨わせたキャロルを見てふぅとルシウスは息を吐いた。
「…少し甘やかし過ぎたかもしれないね。」
「い、いやそんな事は。」
「聞いただけで逃げるだろうと思って閨教育の講師も付けないであげたのが間違いだったかな。」
「ねっねや?」
ジリジリと後退するキャロルに合わせてルシウスもジリジリと近付いて来る。
「キャロルがそう言うつもりなら私も容赦しないよ?」
ルシウスがキャロルの二の腕を掴む。
「ちょっでっ殿下落ち着いて…。」
「落ち着くのはキャロルでしょ。
呼び方戻ってるよ。」
「あっそうでした。
陛下落ち着きましょう。
暴力は良くないです暴力は。」
「暴力は振るわないよ。
痛いかもしれないけどね。」
キャロルはゴクリと唾を飲み込んだ。
痛いのは嫌だ痛いのは。
ルシウスの顔が近付いて来る。
このパターンは知っている。
噛み付かれるやつだ。
「我が国では王妃との離縁は認められないじゃないですか?
ですから側妃の制度を取り入れるのはどうかと…ヒェッ?」
その為の法案改正について考えてみたのだがと渡そうとした羊皮紙を持ったままキャロルは小さく悲鳴を上げた。
魔王だ。
この10年で最大の魔王が降臨している。
キャロルに会う度に不機嫌になる為お飾りの王妃にして貰いルシウスには好みの側妃でも貰って頂こうと思っただけなのに。
キャロルの考えた法案の内容なら魔物でも側妃に出来るというルシウスにとっては喜ばしいはずの物なのに。
キレてる。
こいつ絶対ブチ切れてる。
キャロルはヤバいとジリジリと扉の方へ足を向けた。
逃げるが勝ちという言葉はこの場において非常に正しいであろう。
ルシウスの顔が無表情になっている。
普段笑っている為無表情の威圧感がヤバい。
キャロルが冷や汗をかきながら扉に近付こうとするとルシウスが扉にもたれかかった。
読まれていたらしい。
退路を絶たれてしまった。
「…へぇ、どういうつもりか聞かせてくれる?」
「いや、あの、私と会う度に不機嫌になられるのでいっそ好みの魔物でも貰って頂こうかな、なんて…。」
「…ふぅん。
そこで何で不機嫌なのかとは考えないんだキャロルは。
どうせ『不機嫌だめんどくせえな逃げよ』としかならないもんねキャロルは。」
図星である。
不機嫌な理由を聞いたら余計に面倒臭い事になるだろうと考えていた事すら読まれている。
目を彷徨わせたキャロルを見てふぅとルシウスは息を吐いた。
「…少し甘やかし過ぎたかもしれないね。」
「い、いやそんな事は。」
「聞いただけで逃げるだろうと思って閨教育の講師も付けないであげたのが間違いだったかな。」
「ねっねや?」
ジリジリと後退するキャロルに合わせてルシウスもジリジリと近付いて来る。
「キャロルがそう言うつもりなら私も容赦しないよ?」
ルシウスがキャロルの二の腕を掴む。
「ちょっでっ殿下落ち着いて…。」
「落ち着くのはキャロルでしょ。
呼び方戻ってるよ。」
「あっそうでした。
陛下落ち着きましょう。
暴力は良くないです暴力は。」
「暴力は振るわないよ。
痛いかもしれないけどね。」
キャロルはゴクリと唾を飲み込んだ。
痛いのは嫌だ痛いのは。
ルシウスの顔が近付いて来る。
このパターンは知っている。
噛み付かれるやつだ。
0
お気に入りに追加
976
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる