似非王子と欠陥令嬢

ちゃろっこ

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箱の底に残る物

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「…今のあんたに何を言っても無駄ね。
ここはあたしに任せてあんたは塔に戻りなさい。
誰にも見つかるんじゃないわよ。」

「殿下は」

「殿下はあたしが見回り中に倒れていたのを見つけた事にするわ。
だから早く戻って。
あんたにはやるべき事があるはずよ。」

キャロルは巫女に腕を掴まれ無理矢理立ち上がらせられる。

だが足に力が入らない。

「…酷い汗ね。
体も熱い。
あんたもしかして魔力切れ起こしてんじゃない?」

「…かもしれません。」

先程の暴走と時渡りで全て使い切ってしまっていたらしい。

通りで体が動かないはずだ。

「とりあえず這ってでも塔に帰りなさい。
分かったわね。」

「はい…。」

足を引き摺りながら教会を抜ける。

熱を持った体が軋んで傷んだ。

外は寒いくらいに冷えているのに汗が滴り落ちた。

階段を這うようにして上がり切り扉を開けた所で力尽きた。

限界だ。

もう指一本動かせない。

熱に浮かされた頭のままルシウスの血の気のない顔が頭を過ぎる。

あいつは大丈夫だろうか。

目を覚ました時あいつも目覚めていてくれないだろうか。

そうしたらお礼を言おう。

幼い自分を、現在の自分を守ってくれたお礼を。

生きていてくれた礼を。

そう考えながら泥の様な眠りに引き摺り込まれていった。










だが現実はいつだって残酷だ。

1ヵ月経っても2ヵ月経ってもルシウスが目を覚ます事はなかったのだから。

そして3ヵ月後には教会の検査によりルシウスの魔力がなくなっていると判明した。

それを告げたレオンの唇は震えていた。

ルシウスは目覚めたとしても王太子ではなくなる事を意味していたのだから。

いつだって現実は冷たく鋭利な刃となって突き刺さる。 
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