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異文化交流も大切です
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「ーっアンジェリカ!!!」
真横からクリスの怒号が聞こえるがアンジェリカは笑みを消さない。
「それに成人と共にワインスト家の籍から抜ける予定だとお父様から聞いておりますの。」
「……は?」
「あら?
お聞きになってませんでした?」
それはそれはとアンジェリカが何か言っているがキャロルの耳には届いていなかった。
無意識に自嘲気味な笑みが浮かぶ。
分かっていたではないか。
ずっと、ずっと分かっていたではないか。
家族に恨まれている事位。
「だとしてもキャロルは魔術師団で既に爵位を貰える程度の働きはしている。
辞退の理由にはならないだろ。」
レオンがキャロルを庇ってくれるがアンジェリカはさも困ったように頬に手を添える。
「母親を殺し呪われていても王妃にふさわしいと?」
「やめろアンジェリカ!!!!」
クリスがアンジェリカに掴みかかった。
キャロルは手を上げて給仕から新しいワインを受け取る。
クリスに抑えられていたアンジェリカの頭の上でそれを躊躇う事なくひっくり返す。
アンジェリカの髪に血のような赤ワインが流れた。
「ーっなにす」
「…あなたが私を嫌いな事は重々分かりました。
ですので今後お互いに関わるのは止める事にしましょう。
でないとあなたの仰る通り今度はあなたを殺してしまうかもしれませんので。」
「なっ?!」
「早く消えて頂けますか?
…殺したくなってしまいますので。」
キャロルの瞳には一切の光もなかった。
それに気が付いたアンジェリカが小さく悲鳴を上げ腰をぬかす。
レオンはゴクリと唾を飲み込んだ。
普段から表情豊かとは言い難い上に危険人物だとは知っていた。
けれどこれは明らかに違う。
怒りとも悲しみとも怨みとも違う。
何もないのだ。
読み取れる感情が何もないのだ。
空気が凍る中騒ぎを聞きつけたのか1人の男が輪に飛び込んできた。
「…兄上。」
クリスが呟いた通り、アンジェリカのエスコートで来たのであろう長兄がやって来た。
長兄はキャロルをちらりと見る。
その目は憎悪と嫌悪に溢れていた。
「…久しいなキャロル。」
「…お久しぶりです。」
「…相変わらず問題ばかり起こしているようだな。
我が家の恥になるとたまには考えてくれると嬉しいんだが。」
吐き捨てる様にそう言うとアンジェリカを支えて去って行ってしまった。
真横からクリスの怒号が聞こえるがアンジェリカは笑みを消さない。
「それに成人と共にワインスト家の籍から抜ける予定だとお父様から聞いておりますの。」
「……は?」
「あら?
お聞きになってませんでした?」
それはそれはとアンジェリカが何か言っているがキャロルの耳には届いていなかった。
無意識に自嘲気味な笑みが浮かぶ。
分かっていたではないか。
ずっと、ずっと分かっていたではないか。
家族に恨まれている事位。
「だとしてもキャロルは魔術師団で既に爵位を貰える程度の働きはしている。
辞退の理由にはならないだろ。」
レオンがキャロルを庇ってくれるがアンジェリカはさも困ったように頬に手を添える。
「母親を殺し呪われていても王妃にふさわしいと?」
「やめろアンジェリカ!!!!」
クリスがアンジェリカに掴みかかった。
キャロルは手を上げて給仕から新しいワインを受け取る。
クリスに抑えられていたアンジェリカの頭の上でそれを躊躇う事なくひっくり返す。
アンジェリカの髪に血のような赤ワインが流れた。
「ーっなにす」
「…あなたが私を嫌いな事は重々分かりました。
ですので今後お互いに関わるのは止める事にしましょう。
でないとあなたの仰る通り今度はあなたを殺してしまうかもしれませんので。」
「なっ?!」
「早く消えて頂けますか?
…殺したくなってしまいますので。」
キャロルの瞳には一切の光もなかった。
それに気が付いたアンジェリカが小さく悲鳴を上げ腰をぬかす。
レオンはゴクリと唾を飲み込んだ。
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何もないのだ。
読み取れる感情が何もないのだ。
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「…久しいなキャロル。」
「…お久しぶりです。」
「…相変わらず問題ばかり起こしているようだな。
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吐き捨てる様にそう言うとアンジェリカを支えて去って行ってしまった。
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