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レインボーポット編
第36話「女豹の罠!狙われた一悟とみるくの恋心!!!」①
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瀬戌市にある廃デパート…現在、この廃墟は「ブラックビター」のアジトと化している。
「コウモリども、キリキリ働けーっ!!!」
「全速前進ー!!!」
2匹のキツネの無茶な命令に、コウモリ達の体力は限界に近付いている。おまけに現在のような猛暑…彼らにとっては悪夢と言ってよいだろう…
このアジトはビスコッティもいなくなってしまった事もあり、カオスは自身の力を植え付ける媒体に相応しい逸材である生命体を集めていた。人間だけでは物足りないのか、今度は人間以外の哺乳類にも手を出している。ピサンとゴレン、そして双子の狐を眺めるタヌキのような風貌をした者も、その中に含まれる。
「同胞…あの時の事も思い出してくれたのね…」
カオスを「同胞」と呼ぶ、黒い杖を持った黒いフードの人物…杖を持つ手からはまるで豹のような白に紫の模様がある。体格からして女性のようであるが、この者には性別がないようだ。風格からして、魔女のようである。
「げげ~っ…ヒタム、いたのぉ…」
カオスの黒いもやに微笑む魔女のような者に対し、ピサンが嫌な顔をする。この者の名は「ヒタム」と言うようだ。
「ピサン、おばさんにむかってそんな事言っちゃダメだよ!!!」
ピサンを窘めようとするゴレンだが、ある一言で「ヒタム」と呼ばれた者は、杖を持つ手を震わせる。
「おば…さん…?」
タヌキのような風貌をした者は、ニヤリと微笑みながらヒタムを宥める。
「ヒタム殿…この双子の媒体は1歳に満たない。彼らにはそう見えているだけで。一切悪気はございませんよ?」
…でも、ヒタムの年齢からして、納得してしまうタヌキである。
『フン…ピサン、ゴレン…そして、ニョニャ…どいつもこいつも生意気な奴らばっかり、集まるとはなぁ…本命だったあのボスザルは、不適合だったのが悔やまれる。』
ヒタムはため息をつく。まるでカオス側の戦況に感づいたかのように、ある時代の異世界から2023年の人間界に来てみたものの、ヒタムがカオスを植え付けるための媒体に厳選したが、人間以外の哺乳類では適合する者が極端に少なく、やっと適合したのはヒタムにとっては「失敗作」と言わんばかりの3人だったのである。
「同胞の方の戦況も不利であると言うのに…この世界には、もっと骨のある生命体はおらんのか?」
ただでさえ焦っている状況で時空のひずみに飛び込んだヒタムではあるが、来たのが2023年の人間界である事に気づかなかったため、仕方なくピサン達を幹部へと招き入れる事にしたのだった。
「ところで、あのベイクという鎧の男はどうしたんだい?」
「あぁ…潮風で鎧が錆びてしまったそうなんで、錆びが取れるまで山にこもるそうです。軽井沢辺りじゃないんスかねぇ…」
「まったく…どいつもこいつも使えぬ奴らだ!!!」
ニョニャの発言に怒りを露わにした魔女の風貌をした豹は、カオスの黒いもやの前で宙に浮く水晶に手をかざす。
「役立たずどもには任せておけん!私が自ら出向くしかない…勇者を絶望に陥れるために!!!」
………
「さっすが、いちごんね!!!これなら、今度の店舗大会でいい成績残せるんじゃない?」
アーケードゲーム「太鼓の玄人」の前で、一悟と玉菜がゲームを終えた。一悟達は現在、アミューズランド瀬戌に来ている。そこは、バッティングセンターを兼ね備えたアミューズメント施設で、一悟はよくこのゲームコーナー内にある「太鼓の玄人」をプレーしに来ている。
「そーゆータマちゃんだって、さっきのマジカルアカデミア…結構無双してたんじゃん?」
「私のミユちゃんを甘く見ては困るなぁ~」
そんな一悟と玉菜の様子に、ちょっとみるくの表情はよろしくない。みるくの表情に何を感じたのか、みるくと同じベンチに座るここながある事に気づく。
「ヤキモチ…か?」
突然確信を突かれたかのように、みるくは飲もうとしていた清涼飲料水をペットボトルごと落としてしまう。
「な、ななな…何てこと言うんですかっ!!!」
顔を赤く染めながらここなの発言を否定するが、どうやら事実のようである。
「安心しろ…単なるゲーム仲間だ。」
そう言いながら、ここなは涼しい表情でチョコレート味のソフトクリームを舐めるが、ここなの話を聞いていた玉菜はむっとする。
「そう言われると、正直ムカつくんですけどー?」
今日はシュトーレンとトルテが結婚式の打ち合わせに出かけており、カフェの方は明日香、ラテ、ネロ、ガレット、クラフティの5人に任せている。クラフティは明日から彩聖会で清掃スタッフの仕事に入るため、彼がカフェを手伝うのは今日が最後となる。「明日香を1人の女性として守りたい」という気持ちの表れなのか、クラフティも新しい職場への意気込みが十分だ。
他のプレイヤーが待っていたため、一悟と玉菜は「太鼓の玄人」から離れると、玉菜は「バクダンガール」の筐体へ、一悟はみるくとここなと共にトイレへと向かう。一悟達のカバンを預かった瑞希は、やれやれと言わんばかりにベンチに置いたカバンの類の荷物番を始める。
「おっ…みずきちぃ~…やっぱりここに居たのか。」
荷物番をする瑞希の所へ、ボネと雪斗がやってくる。共にサン・ジェルマン学園の制服姿であるため、学校からの帰りのようだ。
「おや…もう部活は終わったんですか。」
「いんや…俺はグループ課題の提出が今日だったからさ。途中で部活を終えた雪ぼんと合流して来たってワケ。」
ボネがそう言うと、雪斗のカバンからガトーが顔を出す。
「ところで、いちごん達は?」
「みるくとここなと共に、お手洗いへ行かれました。玉菜はカウンター近くで「バクダンガール」中です。トロールは…」
瑞希が雪斗達に説明している途中、ベンチのすぐ近くの入口が開き、そこから薄紫色の髪で、サングラスで瞳を隠しつつ、黒を基調としたパンクロッカーのような風貌の女性が入ってきた。20代くらいだろうか…彼女の全体から、背徳的なオーラが漂う。女性はそのまま自販機のコーナーまでまっすぐ歩くと、自販機で飲み物を購入する一悟の姿を見つける。そんな一悟の腕の中には、財布とモナカ風のアイスがある。
『ふふっ…美味しそうな子…』
そう呟いた刹那、女性は偶然を装って一悟に接近し…
「ドンッ!!!」
一悟にぶつかり、一悟は腕から未開封のアイスを落としてしまう。
「ごめんなさい…喫煙所を探すのに夢中になっちゃって…」
女性は一悟にそう謝りながらアイスを拾うと、それを一悟に手渡す。
「い、いえ…こっちも人を待っていたので。喫煙所なら…」
「あら、あそこだったのね!ありがとう。じゃあねぇ~」
何かの気配を感じたのか、女性は一悟のセリフを遮るかのように自ら喫煙所を見つけると、そのままそそくさと走り去ってしまった。
「…何なんだ?」
そう呆れる一悟は、みるくとここなと合流すると、そのまま瑞希のいる場所へと戻り、ベンチで購入したアイスの封を明け、食べ始める。「太鼓の玄人」は和太鼓をモチーフとしたリズムゲームのため、曲や難易度によっては腕とリズム感だけでなく、ノーツを捌くのに頭を使う必要がある。一悟は身長が低いため、難易度が高く、叩くアイコンの量が多い曲は体力だけでなく、集中力も求められる。
「音ゲーやっただけで、体力使うんだな…まぁ、もうすぐ昼飯だしな。今日は俺が冷たいうどん作ってやらァ!」
そう豪語するボネの横でアイスを食べ続ける一悟だが…
「ガチッ…」
バニラ風味のアイスのみが入っているはずのモナカの中に、石のような固いものが入っていたのである。
「いっくん、どうしたの?」
「アイスん中に、固てぇの…入ってた…」
その言葉を聞いたボネは、咄嗟にポケットからタオル状のハンカチを取り出す。
「いっちー、その固てぇの…今すぐ吐き出せっ!!!」
ボネが一悟の背中を叩きながら、タオルで一悟の口を押さえ、異物を吐かせる。一悟はしばらくむせこんだ末、とうとうボネのハンカチの上に異物を吐き出す。
「コウモリども、キリキリ働けーっ!!!」
「全速前進ー!!!」
2匹のキツネの無茶な命令に、コウモリ達の体力は限界に近付いている。おまけに現在のような猛暑…彼らにとっては悪夢と言ってよいだろう…
このアジトはビスコッティもいなくなってしまった事もあり、カオスは自身の力を植え付ける媒体に相応しい逸材である生命体を集めていた。人間だけでは物足りないのか、今度は人間以外の哺乳類にも手を出している。ピサンとゴレン、そして双子の狐を眺めるタヌキのような風貌をした者も、その中に含まれる。
「同胞…あの時の事も思い出してくれたのね…」
カオスを「同胞」と呼ぶ、黒い杖を持った黒いフードの人物…杖を持つ手からはまるで豹のような白に紫の模様がある。体格からして女性のようであるが、この者には性別がないようだ。風格からして、魔女のようである。
「げげ~っ…ヒタム、いたのぉ…」
カオスの黒いもやに微笑む魔女のような者に対し、ピサンが嫌な顔をする。この者の名は「ヒタム」と言うようだ。
「ピサン、おばさんにむかってそんな事言っちゃダメだよ!!!」
ピサンを窘めようとするゴレンだが、ある一言で「ヒタム」と呼ばれた者は、杖を持つ手を震わせる。
「おば…さん…?」
タヌキのような風貌をした者は、ニヤリと微笑みながらヒタムを宥める。
「ヒタム殿…この双子の媒体は1歳に満たない。彼らにはそう見えているだけで。一切悪気はございませんよ?」
…でも、ヒタムの年齢からして、納得してしまうタヌキである。
『フン…ピサン、ゴレン…そして、ニョニャ…どいつもこいつも生意気な奴らばっかり、集まるとはなぁ…本命だったあのボスザルは、不適合だったのが悔やまれる。』
ヒタムはため息をつく。まるでカオス側の戦況に感づいたかのように、ある時代の異世界から2023年の人間界に来てみたものの、ヒタムがカオスを植え付けるための媒体に厳選したが、人間以外の哺乳類では適合する者が極端に少なく、やっと適合したのはヒタムにとっては「失敗作」と言わんばかりの3人だったのである。
「同胞の方の戦況も不利であると言うのに…この世界には、もっと骨のある生命体はおらんのか?」
ただでさえ焦っている状況で時空のひずみに飛び込んだヒタムではあるが、来たのが2023年の人間界である事に気づかなかったため、仕方なくピサン達を幹部へと招き入れる事にしたのだった。
「ところで、あのベイクという鎧の男はどうしたんだい?」
「あぁ…潮風で鎧が錆びてしまったそうなんで、錆びが取れるまで山にこもるそうです。軽井沢辺りじゃないんスかねぇ…」
「まったく…どいつもこいつも使えぬ奴らだ!!!」
ニョニャの発言に怒りを露わにした魔女の風貌をした豹は、カオスの黒いもやの前で宙に浮く水晶に手をかざす。
「役立たずどもには任せておけん!私が自ら出向くしかない…勇者を絶望に陥れるために!!!」
………
「さっすが、いちごんね!!!これなら、今度の店舗大会でいい成績残せるんじゃない?」
アーケードゲーム「太鼓の玄人」の前で、一悟と玉菜がゲームを終えた。一悟達は現在、アミューズランド瀬戌に来ている。そこは、バッティングセンターを兼ね備えたアミューズメント施設で、一悟はよくこのゲームコーナー内にある「太鼓の玄人」をプレーしに来ている。
「そーゆータマちゃんだって、さっきのマジカルアカデミア…結構無双してたんじゃん?」
「私のミユちゃんを甘く見ては困るなぁ~」
そんな一悟と玉菜の様子に、ちょっとみるくの表情はよろしくない。みるくの表情に何を感じたのか、みるくと同じベンチに座るここながある事に気づく。
「ヤキモチ…か?」
突然確信を突かれたかのように、みるくは飲もうとしていた清涼飲料水をペットボトルごと落としてしまう。
「な、ななな…何てこと言うんですかっ!!!」
顔を赤く染めながらここなの発言を否定するが、どうやら事実のようである。
「安心しろ…単なるゲーム仲間だ。」
そう言いながら、ここなは涼しい表情でチョコレート味のソフトクリームを舐めるが、ここなの話を聞いていた玉菜はむっとする。
「そう言われると、正直ムカつくんですけどー?」
今日はシュトーレンとトルテが結婚式の打ち合わせに出かけており、カフェの方は明日香、ラテ、ネロ、ガレット、クラフティの5人に任せている。クラフティは明日から彩聖会で清掃スタッフの仕事に入るため、彼がカフェを手伝うのは今日が最後となる。「明日香を1人の女性として守りたい」という気持ちの表れなのか、クラフティも新しい職場への意気込みが十分だ。
他のプレイヤーが待っていたため、一悟と玉菜は「太鼓の玄人」から離れると、玉菜は「バクダンガール」の筐体へ、一悟はみるくとここなと共にトイレへと向かう。一悟達のカバンを預かった瑞希は、やれやれと言わんばかりにベンチに置いたカバンの類の荷物番を始める。
「おっ…みずきちぃ~…やっぱりここに居たのか。」
荷物番をする瑞希の所へ、ボネと雪斗がやってくる。共にサン・ジェルマン学園の制服姿であるため、学校からの帰りのようだ。
「おや…もう部活は終わったんですか。」
「いんや…俺はグループ課題の提出が今日だったからさ。途中で部活を終えた雪ぼんと合流して来たってワケ。」
ボネがそう言うと、雪斗のカバンからガトーが顔を出す。
「ところで、いちごん達は?」
「みるくとここなと共に、お手洗いへ行かれました。玉菜はカウンター近くで「バクダンガール」中です。トロールは…」
瑞希が雪斗達に説明している途中、ベンチのすぐ近くの入口が開き、そこから薄紫色の髪で、サングラスで瞳を隠しつつ、黒を基調としたパンクロッカーのような風貌の女性が入ってきた。20代くらいだろうか…彼女の全体から、背徳的なオーラが漂う。女性はそのまま自販機のコーナーまでまっすぐ歩くと、自販機で飲み物を購入する一悟の姿を見つける。そんな一悟の腕の中には、財布とモナカ風のアイスがある。
『ふふっ…美味しそうな子…』
そう呟いた刹那、女性は偶然を装って一悟に接近し…
「ドンッ!!!」
一悟にぶつかり、一悟は腕から未開封のアイスを落としてしまう。
「ごめんなさい…喫煙所を探すのに夢中になっちゃって…」
女性は一悟にそう謝りながらアイスを拾うと、それを一悟に手渡す。
「い、いえ…こっちも人を待っていたので。喫煙所なら…」
「あら、あそこだったのね!ありがとう。じゃあねぇ~」
何かの気配を感じたのか、女性は一悟のセリフを遮るかのように自ら喫煙所を見つけると、そのままそそくさと走り去ってしまった。
「…何なんだ?」
そう呆れる一悟は、みるくとここなと合流すると、そのまま瑞希のいる場所へと戻り、ベンチで購入したアイスの封を明け、食べ始める。「太鼓の玄人」は和太鼓をモチーフとしたリズムゲームのため、曲や難易度によっては腕とリズム感だけでなく、ノーツを捌くのに頭を使う必要がある。一悟は身長が低いため、難易度が高く、叩くアイコンの量が多い曲は体力だけでなく、集中力も求められる。
「音ゲーやっただけで、体力使うんだな…まぁ、もうすぐ昼飯だしな。今日は俺が冷たいうどん作ってやらァ!」
そう豪語するボネの横でアイスを食べ続ける一悟だが…
「ガチッ…」
バニラ風味のアイスのみが入っているはずのモナカの中に、石のような固いものが入っていたのである。
「いっくん、どうしたの?」
「アイスん中に、固てぇの…入ってた…」
その言葉を聞いたボネは、咄嗟にポケットからタオル状のハンカチを取り出す。
「いっちー、その固てぇの…今すぐ吐き出せっ!!!」
ボネが一悟の背中を叩きながら、タオルで一悟の口を押さえ、異物を吐かせる。一悟はしばらくむせこんだ末、とうとうボネのハンカチの上に異物を吐き出す。
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